研究プロジェクト

ミトコンドリアのエネルギー代謝や形態形成から選択的スプライシングなど、バラエティに富んだ研究を行っています。

Mitochondria

・新規ミトコンドリア膜タンパク質の網羅的機能解析

【担当】遠藤、笠嶋、黒岩、太田

【キーワード】 ミトコンドリア、膜、プロテオーム

我々は、ミトコンドリアの形態形成機構およびその生理的意義を明らかにするために、ミトコンドリア膜に局在するタンパク質のプロテオーム解析を進めている。これまでに、HeLa細胞から単離したミトコンドリアの膜画分から、二次元電気泳動およびLC-MS/MSシステムを用いて総247スポット、171種のタンパク質を同定した。

その結果、ミトコンドリア局在が明らかになっていたが機能がほとんどわかっていないタンパク質が6種、局在性や機能がこれまで未知であった新規タンパク質が13種得られた。後者に関しては、そのうちの8種についてサブクローニングに成功し、7種がミトコンドリアに局在していることを確認した。

これら機能未知なミトコンドリア膜タンパク質について、過剰発現や発現抑制によりミトコンドリアの形態や機能にどのような影響を与えるかを網羅的に調べている。

現在のところ、我々がM19と名付けた新規タンパク質(c6orf125遺伝子)が、ミトコンドリアの核様体(ヌクレオイド)と相互作用していることを明らかにし(Sumitani et al. (2009) J. Biochem.)、その詳細な分子機能を解析中である。



・PHBタンパク質の機能解析

【担当】笠嶋、黒岩、太田、遠藤

【キーワード】ミトコンドリア、ヌクレオイド、ミトコンドリア-核の連携

プロヒビチン(prohibitin, PHB)は、生物種を越えて高度に保存されたミトコンドリアタンパク質であり、アポトーシス、細胞周期制御、シグナル伝達、老化などへの関与が示唆されている多機能性タンパク質である。

近年の我々の研究から、ヒトPHB2タンパク質が培養細胞のミトコンドリアにおいて抗アポトーシス作用やミトコンドリアの形態を制御することがはじめて明らかになった(Kasashima et al. (2006) J. Biol. Chem.)。PHBは、核において転写の抑制因子として働くこともわかっていることから、核-ミトコンドリア連携に働く因子であることが強く示唆された。

一方でPHBは、ミトコンドリアヌクレオイドを構成するタンパク質としても報告されている。我々の研究から、PHBがヌクレオイドの構成や安定性を維持する機能を持つことがはじめて明らかにされた(Kasashima et al. (2008) Exp. Cell Res.)。

現在、PHBのミトコンドリア機能の網羅的解析、およびその核機能との関係について研究を行っている。


kinou

Summary of the localization and functions of PHB2.



ミトコンドリアPermeability Transition Poreの再構成

【担当】浜本

【キーワード】 ミトコンドリア、膜電位、ポリン、アポトーシス

ミトコンドリアは細胞のエネルギー代謝に中心的な役割を果たしているオルガネラである。しかし近年アポトーシスの信号伝達、細胞内カルシウム調節、熱発生など細胞内の恒常性維持を一歩踏み出した領域でのミトコンドリア機能について関心が集まってきている。

古くから基質の外膜透過はポリンにより調節されていると予想されていたが、確実な証拠がなかった。Thompson CB ら(Proc Natl Acad Sci U S A. 2000 97:4666-71) は培養細胞が成長因子欠乏でアポトーシスを起こす際、ミトコンドリアのcreatine phospate/creatine比が細胞質ATP/ADP比に比べ異常に高いことを発見し、ポリンを通した基質の輸送が阻害されていることを突き止めた。

このポリンの閉鎖はアポトーシス抑制に働くBclxLやBcl2で解除される。ミトコンドリアの透過性亢進現象では内膜にショ糖分子を自由に通過させるほど大きく、また選択性に乏しいチャネル(Permeability Transition Pore)が開くため、ミトコンドリアの膜電位は消失し、当然電位によって蓄えられていたカルシウムなどは流出する。Permeability Transition Poreの中心は内膜のATP/ADP交換輸送体であり、マトリックスのcyclophilin D、膜間腔のクレアチニンキナーゼ、外膜のポリン(VDAC:Voltage Dependent Anion Channel)、およびポリンに結合しているヘキソキナーゼ(細胞質側)を含む複合体を形成していると言われている。

問題点の一つはこれらの標品が部分精製に止まっている点にある。さらにPermeability Transitionは個々のミトコンドリアについて1秒以下の速い反応であるのに対し、アポトーシスは数時間の拡大過程を経て初めて検出できる極めて複雑な現象である点にも注意する必要がある。

現在、VDACタンパク質を軸にチャネルのin vitro再構成を試み、その調節メカニズムの解明を目指している。


RNA Processing & Gene Regulation

      

・核内再分配されるスプライシング因子の研究

【担当】坂下、遠藤

【キーワード】スプライシング因子、d-NAP、核スペックル、核小体、核ストレスボディ

スプライシング因子は細胞外ストレスなどに応答して本来の局在場所とは異なる領域に移行する。我々は、DNA損傷応答によりスプライシング基本因子であるSRタンパク質が核スペックルから核小体繊維状部へ移行する現象を見つけ、この移行領域を『DNA damage-induced nucleolar organizing region-associated patches (d-NAPs)』と名付けた(Sakashita E. and Endo H. (2010) Nucleus 1)。d-NAPへの移行には、RNAポリメラーゼIIの抑制と核小体構造変化(特に核小体外層構造の核小体顆粒部(GC)の崩壊)が必要であることがわかった。現在、DNA損傷下にある細胞のmRNA代謝と、d-NAP形成との関わりについて解析を進めている。


紫外線照射5時間後のHT1080細胞


・筋特異的な選択的スプライシングの研究

【担当】坂下、遠藤

【キーワード】RNA結合タンパク質、筋分化、組織特異性、選択的スプライシング、スプライシング因子

転写後調節の中でも選択的スプライシングは遺伝子産物の多様性獲得に深く関与している。筋分化過程においては、スプライシングの違いによりATP合成酵素γサブユニット(F1γ)、α-, β-トロポミオシン、N-CAM、MEF2A、MEF2Bなど数多くの遺伝子でみられる分子変換が分化決定の重要な鍵を握っているとされる。そこでATP合成酵素γサブユニット(F1γ)を筋組織特異的な選択的スプライシングのモデル遺伝子として解析し、筋分化の分子メカニズムの一端を解明したいと考えている (Hayakawa, M. et al. (2002) J. Biol. Chem. 277)。


Tissue-specific alternative splicing in F1γ pre-mRNA.

Selection of F1γ exon 9 is regulated by two cis-acting regulatory elements in the same exon.


・発達段階特異的RNA結合タンパク質の研究

【担当】坂下、冨永、笠嶋、黒岩、加藤、遠藤

【キーワード】RNA結合タンパク質、神経分化

神経の分化や維持において、Msi, Hu, FMRなどのRNA結合タンパク質が重要な役割を担っていることが指摘されている。我々の研究室では、ラット脳発現ライブラリーより、新たに発生段階的な発現調節のみられる神経特異的RNA結合タンパク質drb1を同定した(Tamada, H. et al. (2002) Biochem. Biophys. Res. Commun. 297)。このdrb1が個体の発生や細胞の分化過程に果たす役割に注目して解析していく。

Amino acid identity between rat, mouse, human and fruit fly Drb1