最近の論文より - 自治医科大学 分子病態治療研究センター 細胞生物研究部

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最近の論文より

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Regulation of continuous but complex expression pattern of Six1 during early sensory development.

Shigeru Sato, Yasuhide Furuta, Kiyoshi Kawakami.

Dev Dyn. 2017 Nov 6.


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Atp1a3 deficient heterozygous mice show lower rank in the hierarchy and altered social behavior.

Hiroki Sugimoto, Keiko Ikeda, Kiyoshi Kawakami.

Genes Brain Behav. 2017 Oct 23.


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Knockout of sodium pumpα3 subunit gene (Atp1a3-/-) results in perinatal secure and defective respiratory rhythm generation. 

Keiko Ikeda, Hiroshi Onimaru, Kiyoshi Kawakami.

Brain Research 1666, 27-37 (2017)



Six1 is required for mouse dental follicle cell and human periodontal ligament-derived cell proliferation. 

Kawasaki T., Takahashi M., Yajima H., Mori Y, and Kawakami K.

Development, Growth and Differentiation, 58: 530-545 2016

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SIX1は、感覚器や感覚ニューロンなどの形成に必須の遺伝子であることは知られていましたが、神経堤細胞に由来する歯周組織、とくに歯根膜(歯と歯槽骨の間をつなぐ靭帯様の組織)での役割は不明でした。私達は、生後マウス歯根膜細胞では、増殖期にSIX1の発現量が高いことを見いだしました。SIX1ノックアウトマウスを用いた解析から、SIX1は歯根膜前駆細胞(歯小嚢細胞)の増殖亢進に必須であることを明らかにしました。さらに、抜歯した親知らず(ヒト第三臼歯)から歯根膜細胞を単離しSIX1の機能阻害を行ったところ、SIX1はヒト歯根膜細胞においても増殖を担うことが分かりました。


Low Six4 and Six5 gene dosage improves dystrophic phenotype and prolongs life span of mdx mice 

Yajima H and Kawakami K

Development, Growth and Differentiation, 58: 546-561, 2016

私たちは以前、単離した筋衛星細胞の増殖と分化にホメオボックス転写因子SIX1, SIX4 及びSIX5が重要な制御因子である事を報告した。今回生体での骨格筋再生にどのような役割を果たすかを解明した。デュシェンヌ型筋ジストロフィーのモデルマウスmdxにSix4/Six5の二重変異を導入したマウスは、mdxマウスと比べて太い筋繊維が増加し、筋肉変性のマーカーである血中クレアチンキナーゼや乳酸脱水素酵素のレベルが低下した。再生筋の核マーカーであるMyoDやMyogenin、及び再生筋芽細胞や新生筋芽細胞マーカーであるSix1も増加しており、筋再生が亢進していることが示された。トレッドミル運動による筋力低下も減少したことから、筋再性能が向上したことが示唆された。さらに、寿命も33.8%伸びた。これらの観察は、Six4及びSix5の遺伝子量が低下すれば、筋ジストロフィーの症状が改善することを示しており、Six4及びSix5が有効な治療標的であると言える。

Activation of Six1 Expression in Vertebrate Sensory Neurons. 

Sato S, Yajima H, Furuta Y, Ikeda K, Kawakami K

PLoS ONE 10(8): e0136666. (2015)

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SIX1は、聴覚に関わる感覚器と感覚神経の形成に必須な遺伝子として知られ、突然変異は難聴と鰓弓奇形、さらに腎形成不全を引き起こします[鰓弓耳腎(BOR)症候群]。SIX1は、顔面、手足や体幹部の様々な感覚を脳に伝える感覚神経でもはたらきますが、その発現調節の仕組みは不明でした。研究グループは、感覚神経でSIX1の発現を活性化するDNA配列(エンハンサー)を突き止め、その特徴をはじめて明らかにしました。この研究成果は、感覚神経の発生やその異常を理解し、幹細胞から感覚神経を作り出すためにも有用です。また、開発した新規マウスは、感覚神経の蛍光標識や傷害、特異的な遺伝子欠損を可能にするリソースとして研究コミュニティへ公開されます。

A Phox2b BAC Transgenic Rat Line Useful for Understanding Respiratory Rhythm Generator Neural Circuitry 

Keiko Ikeda , Masanori Takahashi, Shigeru Sato, Hiroyuki Igarashi, Toru Ishizuka, Hiromu Yawo, Satoru Arata, E. Michelle Southard-Smith, Kiyoshi Kawakami, Hiroshi Onimaru

PLOS ONE | DOI:10.1371/journal.pone.0132475 July 6, 2015

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生存に必須である呼吸活動の神経リズムを司るニューロン群を蛍光ラベルした新規ラットの開発し、呼吸リズム活動の電気生理学的な解析に成功しました。呼吸リズム形成ニューロンは、外界の炭酸ガス濃度の感知を行う生存に必須のニューロンであり、さらに外界の酸素ガスをモニターしている頸動脈小体や、第二の脳と呼ばれる腸管神経叢も蛍光ラベルされています。本ニューロン群を生体内で蛍光を指標にしオプトジェネティックス解析や、ガスセンサーの分子実体同定の研究にも有効に活用できるラットです。

Heterozygous mice deficient in Atp1a3 exhibit motor deficits by chronic restraint stress

Hiroki Sugimoto, Keiko Ikeda, and Kiyoshi Kawakami

Behavioural Brain Research 272, 100-110 (2014)

ナトリウムポンプα3サブユニット遺伝子(ATP1A3)は、急性発症型ジストニアパーキンソニズム(RDP)の原因遺伝子です。今回、われわれは、Atp1a3欠損マウスに慢性的拘束ストレスを負荷し、RDP病態モデル動物の開発を行いました。ストレスはヒトにおいてRDP発症の引き金を引くとされています。ストレスを負荷した結果、Atp1a3欠損マウスは、メスでは歩幅の減少、オスでは歩幅の減少とHanging Box Testにおけるぶら下がり時間の短縮といった運動機能低下を示しました。これらの運動機能低下はRDPの特徴を再現しており、ストレス負荷Atp1a3欠損マウスはRDP病態モデルとして有益であると考えられました。今後、このマウスの運動機能低下の原因を明らかにすることで、RDP病態解明につながることが期待されます。

Six1 is a key regulator of the developmental and evolutionary architecture of sensory neurons in craniates

Hiroshi Yajima, Makoto Suzuki, Haruki Ochi, Keiko Ikeda, Shigeru Sato, Ken-ichi Yamamura, Hajime Ogino, Naoto Ueno and Kiyoshi Kawakami

BMC Biology 2014, 12:40

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我々、ヒトを含めたほ乳類の体の皮膚感覚を司る神経細胞は、背骨の脇にある脊髄神経節に収められています。ところが、魚類や両生類の幼生期(カエルではオタマジャクシ)の皮膚感覚を司る神経細胞は脊髄の中に存在し、成体になる過程で脊髄神経節に切り替わります。今回、私たちは、Six1がこの切り替えを司っていることを明らかにしました。さらに、ほ乳類・マウスでは、脊髄の中に感覚神経細胞を生じさせない役割を担っていることが分かりました。これらの結果から、Six1は発生の過程のみならず、進化の過程で感覚神経細胞の所在を脊髄内から脊髄外へと変化させる鍵になっていると推測されました。

Enhanced inhibitory neurotransmission in the cerebellar cortex of the Atp1a3-deficient heterozygous mice.

Ikeda K, Satake S, Onaka T, Sugimoto H, Takeda N, Imoto K, Kawakami K.
J Physiol. 2013 May 7. [Epub ahead of print]

ナトリウムポンプα3サブユニット遺伝子(ATP1A3)は、急性発症ジストニアパーキンソニズム(RDP)および小児交互性片麻痺(AHC)の原因遺伝子です。本遺伝子の生体機能の解明は、これらの病気の本態を明らかにし、治療戦略を開発するためには、極めて重要です。本論文ではAtp1a3欠損ヘテロマウスが、RDPやAHCの症状を示すかどうかを探るとともに、野生型マウスとの属性の違いを解析しました。現在のところ、これらの病気の自然発症やストレス負荷による発症は見られませんが、下記の3つの表現型が観察されました。
 ①カイニン酸の脳内投与でジストニアを引き起こすと、その反応がより強く長く続く。
 ②ローターロッドやバランスビームなどで測定した運動制御機能が変化している。
 ③小脳プルキンエ細胞への抑制性シナプス伝達効率が亢進している。
これらの表現型が見られることから、α3サブユニットは小脳においてシナプス伝達効率を制御する機能がある事が初めて明らかとなりました。今後の解析によって、病気の症状を引き起こす機構の解明につながる、重要な成果といえます。

Regulation of Six1 expression by evolutionarily conserved enhancers in tetrapods.
Sato S, Ikeda K, Shioi G, Nakao K, Yajima H, Kawakami K.

Dev. Biol. 2012 Aug 1; 368; 95-108, 20

四肢動物では、Six1の複雑な発現パターンは進化的に保存された8種類の主要なエンハンサーによって制御されていることを示しました。最も良く保存された内耳の原基(プラコード)のエンハンサーは、多数の転写因子とシグナルの入力があってはじめてSix1の発現を活性化することがわかりました。

Six family genes control the proliferation and differentiation of muscle satellite cells.
Yajima H, Motohashi N, Ono Y, Sato S, Ikeda K, Masuda S, Yada E, Kanesaki H, Miyagoe-Suzuki Y, Takeda S, Kawakami K.

Exp Cell Res. 2010 Oct 15; 316:2932-44.

筋衛星細胞(サテライト細胞)は生後骨格筋において幹細胞として機能しています。転写制御因子であるSix1, Six4, Six5が、筋衛星細胞の増殖と分化の制御に関わることを、遺伝子操作マウス、培養系実験により明らかにしました。

Conserved expression of mouse Six1 in the pre-placodal region (PPR) and identification of an enhancer for the rostral PPR.
Sato S, Ikeda K, Shioi G, Ochi H, Ogino H, Yajima H, Kawakami K.

Dev Biol. 2010 Aug 1; 344(1):158-71

Six1がマウス胚の神経板を取り囲む外胚葉で発現することを示しました。また、その発現を担うDNAエレメント(エンハンサー)の進化的保存性を証明し、哺乳類における感覚器前駆領域(PPR)の存在を示しました。さらに、またエンハンサーの解析によりPPR誘導に関わる遺伝子ネットワークの一端を明らかにしました。