専門医試験受験の報告

内山 拓 / Taku UCHIYAMA

専門医試験受験の報告

この度、脳神経外科専門医試験に合格することができましたが、合格率が7割前後の試験であり、医師国家試験ぶりに精神的な緊張を感じました。

私は卒後11年目に脳神経外科専門医を受験しました。最短で卒後7年目に受験可能な試験ですが、自治医科大学を卒業し地域医療に従事する期間があったため、受験が遅くなりました。

大学を卒業後すぐに出身県(佐賀県)の県立病院で初期研修を行いました。その期間に計4ヶ月の脳神経外科診療を経験することができました。この頃はまだ専門とする診療科を決めかねていましたが、術者として手術を経験させていただくこともでき、脳神経外科診療の興味深さを知ることができました。初期研修終了後、離島の診療所に所長として3年間赴任しました。この期間は離島診療所の医療圏にある二次救急医療機関の脳神経外科で、卒後3,4年目は週に1日、卒後5年目は週に4日ほど脳神経外科研修することができました。離島診療所勤務後の卒後6,7年目はその病院で、2年間勤務でき、脳出血・外傷の開頭術者、開頭脳動脈瘤頚部クリッピングの術者、転移性脳腫瘍・髄膜腫などの腫瘍の術者を経験することができました。卒後8,9年目は、周辺人口10万人弱の公立病院に赴任し、脳神経外科医師として勤務することができました。ここでは新たに脊椎外科を学ぶことができました。頚部脊柱管狭窄症、頚椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎すべり症、腰椎椎間板ヘルニアなどの変性疾患を中心に、外傷、脊椎脊髄腫瘍についても経験することができました。また、脳梗塞も脳外科が中心となり診療を行なっていたため、アルテプラーゼ静注療法や血行再建術なども経験できました。卒後10年目に自治医科大学脳神経外科に入局し、卒後10年目は大学で勤務することができ、脳腫瘍、小児、てんかん、機能外科について多くの症例を経験することができ、受験勉強に非常に役立ちました。

私のこれまでの経験を振り返ると、脳神経外科専門医試験に出題される多くの疾患を実際の臨床で経験することができたと思います。大学病院なので、なかなか術者の経験には恵まれないのではないかと思っていましたが、自治医科大学脳神経外科では多くの術者を経験させていただき、勉強になりました。

専門医受験の年度である4月以降、病棟主治医から外れて、当直以外の診療時間外の時間を自由に過ごすことができました。計画的に勉強を進めることができ、各種教育セミナーなどに参加しやすく、助かりました。また、他大学の勉強会に参加することができ、今年は自治医科大学からは私一人の受験であったため、心の支えとなりました。

幅広い脳神経外科疾患に対する知識、経験が必要な脳神経外科専門医試験ですが、自治医科大学脳神経外科では脳腫瘍、血管障害、小児、てんかん・機能外科など、受験前に必要な多くの疾患を実臨床で経験することができます。卒後3年目より入局される方はもちろんのこと、専門医試験前の1、2年をこちらで過ごすことで、脳神経外科診療の多くの領域を学ぶことができます。これまで大学病院などで勤務されたことのない方や、自治医科大学卒業生で専門医受験を控えている方などに適した研修施設だと思います。カンファランスは堅苦しくなく、若手でも意見を述べやすい雰囲気であり、自分の知識や疾患への理解を確認するのに役立ちました。

佐賀の病院でも、自治医大でも熱心に指導していただける先生方に恵まれて、無事に合格できたものと感じています。最後にこれまでお世話になった方への感謝を記し、この寄稿を終えたいと思います。ありがとうございました。

新井 文博 / Fumihiro ARAI

専門医試験受験の報告

現在、脳神経外科の対象疾患は脳血管障害・外傷・脳腫瘍に加え、てんかん・パーキンソン病・三叉神経痛・顔面けいれん等の機能的疾患、 小児神経疾患、脊髄・脊椎・末梢神経疾患など多岐に渡ります。脳神経外科専門医試験では、これら膨大な分野の診断、治療、手術に関して専門的知識と診療技術が要求されます。試験は「筆記試験」と「口頭試問」がおこなわれ、合格率は近年6~7割前後で推移しています。

世に存在する数ある専門医試験の中でも脳神経外科専門医は勉強量が多く合格率も高くないため合格への道のりは一筋縄ではいきません。しかし、当教室は驚くことに受験生全員合格という実績が約20年間続いており、毎年受験生の多大なプレッシャーとなります。私が受験した2016年度 第51回専門医認定試験の経験や当教室での試験前の取り組み・対策などを紹介させていただきたいと思います。

試験は毎年8月初旬に実施されます。当教室の受験対策の一番の特徴は、受験生は4月よりベッドフリーになることです。4~8月の約4か月の間、週2-3回の外来診療や救急当番・大学当直のみが義務となりそれ以外の時間は勉強時間に割り当てられます。よって、直前に付け焼刃の知識を詰め込むのではなく、論文を読みながらじっくりと勉強する時間が確保できました。学会で開催される受験生向けのセミナーにも多く参加することが可能でした。

次に大切なのは良質な過去問や最新の情報を入手することです。医師国家試験と違い問題集などは存在しないので、過去の受験生が再現した過去問を元に勉強します。当教室では筑波大学および東京大学の勉強グループに所属しており、良質な過去問で学習することが可能です。また、勉強会の中で開催される各分野のエキスパートの先生方による講義で最新の話題や重要な事項を効果的に習得することが出来ました。

試験前の1週間は完全に臨床業務から離れるため、集中的に最終確認を行ってから試験に挑むことが可能です。十分な対策が取れたため、落ち着いて試験本番を迎えることができました。今年度の受験者2人とも無事合格いたしましたが、これもひとえに教室の先生方の熱心なご指導の賜物であり感謝しております。今後は、脳神経外科専門医として更なる⾶躍を目指したいと考えています。

手塚 正幸 / Masayuki TETSUKA

専門医試験受験の報告

私は、初期研修から後期研修を自治医科大で行いました。後期研修後に脳神経外科医を目指し、卒後4年目で入局しています。自治医科大研修カリキュラムは、自分の希望により各診療科を自在に回れるという特徴がありました。一生を左右する専門診療科選びでありますので、自分で納得できるようにしっかり悩み、考えて選びました。

脳神経外科学は、脳だけでなく脊髄、末梢神経にも精通しなければなりません。頭痛・めまい・高次脳機能障害(認知症など)・頭部打撲などのcommon diseaseから腫瘍(悪性・良性)・機能障害・小児神経疾患・放射線治療など専門的な知識と技術に加え、近年も高齢社会で増加傾向の脳卒中(急性期から慢性期リハビリに至るまで)など多岐にわたっており、高度な知識と技術が身につきます。脳外科を目指すことは求められる需要が多く、やりがいを日々感じながら医師を続けられると考えたからです。

そのように脳神経外科医に求められる知識と技術は高く、専門医試験は難関です。脳神経外科医を標榜する上で、避けては通れない道ですが合格率は例年60~70%です。難関と言われている医師国家試験が毎年90%前後の合格率ですから、いかに合格することが厳しいかがわかります。この試験を通過してこそ、脳神経外科医として一定の知識と技術があることが証明されるわけですが、試験を受ける者にとっては、医師になるより厳しい試験であり、かなり緊張します。全国の医師と競争し勝ち抜かなければなりません。

しかし、私にはそれほど心配はしておりませんでした。なぜなら、自治医科大脳神経外科教室では毎年受験し、皆合格しているからです。当教室では入局当初から積極的に手術を経験させてもらえます。大学病院でありますが、地域の特性上、一次診療から三次診療(全ての患者)までを担っており、その上で高度な診療体制および設備(てんかんセンター、脳卒中センター、とちぎ子ども医療センター、脳血管内治療)を備えています。

包括的な医療を学べるこの環境こそが、経験や技術を押し上げる要点と思います。また、医局の先輩方がこれまで培ってきた勉強会にも各種参加でき、東京大や筑波大などを筆頭に全国の同期と情報交換して、一緒に勉強できる環境が整っていることも高い合格率の成因です。私も自治医科大で専攻医として研修を受け、試験に臨み、合格を勝ち得ました(ちなみに私の受験年の合格率は60数%でした)。全国の同期生と話していても自治医科大でしか経験できない手術や疾患も少なからずあり、羨ましがられます。

脳神経外科医を目指す皆さんも是非、一度研修に来てみてはどうでしょうか。また、専門診療科に迷っている研修医の皆さんも、是非一度脳神経外科を体感できる自治医科大に足を運んでみてはいかがですか。いつでもお待ちしております。

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