自治医科大学医学部

先端医療技術開発センター脳機能研究部門

研究内容(随時更新いたします)

研究概要(2016年4月13日更新)

本部門は,「身体」「コミュニケーション」「発達」「脳」「社会性」をキーワードとして,私達の日常のコミュニケーション,身体の動きを支える脳の仕組み,他者に関する情報処理の仕組み(他者のどのような情報に敏感で,他者からどのように学ぶのか?),「知覚と運動の相互作用のメカニズム」を解明し,それに基づく疾患の新たな理解と支援方略を提案する研究を目指しています.

具体的には以下のような興味・関心に基づいて研究を進めています.特定の方法論に縛られることなく,知りたい現象を最も効率よく正確に捉えることのできる実験方法の開発,信号解析法の開発など,必要に応じて柔軟に方略を変化させながら研究を推進しています.

どのようにしてそのような認知機能が発現し,どのように変化するかという「発達の視点」,定型と非定型の認知スタイルを比較検討することにより,認知システム(スタイル)の違いを解明する「比較の視点」など複数の視点・方法論を組み合わせて導入することにより,私たちの社会的認知,コミュニケーションを可能にする脳のメカニズムを明らかにしていきます.

また,自治医科大学の大変恵まれた研究環境の下,自治医科大学附属病院臨床各科との緊密な連携により,様々な疾患を対象とした研究を推進しています.以下は,研究テーマの一部です(科研費などの外部獲得資金に基づくテーマです)


  1. 「他人の動き」から私たちはどのような情報を読み取り,相手の心の状態を理解するのか?
  2. 「あなたが見ている世界」と「わたしが見ている世界」が違うことを脳はどのように理解するのか?
  3. 私たちが「身体」を持つことで,世界の見方がどのように制約を受けているのか?
  4. 社会的環境(例:文化)によってこれらの機能がどのように変化するのか?
  5. これらの機能が発達に伴ってどのように変化するのか?さらには定型・非定型発達によってこれらの発達の軌跡が異なるのか?
  6. 身体への注意の向け方によって運動学習がどのように変化するか?その個人差は?



個別テーマ(現在進行中のプロジェクトのごく一部です)

  1. 他者の動きに埋め込まれた社会的情報の処理機構とその発達(平井)
  2. 私たちは,わずかな手がかりでも他者の動きを理解することができます. 「バイオロジカルモーション」と呼ばれる,ヒトの関節に装着したわずか十数個の光の動きからでも他人が何をしているのか,怒っているのか,嬉しいのかなど意図や感情などに関する様々な情報を「読み取る」ことができます. このような現象は1900年代の初頭に報告されておりましたが,1973年にJohanssonによって論文として正式に報告されました.発見されてから40年あまり経ちますが,今なお,研究者たちの心を掴んで離しません.それは恐らく,現象としては非常にシンプルであるにもかかわらず,これだけ豊かな情報を理解できる私たちの脳の中には,「動きの解釈装置」のような仕組みががあると考えられているからです.実際,このようなバイオロジカルモーションに敏感に反応する部位(他者に関する情報を特別に処理する脳部位:社会脳の一部の神経回路)がいくつか報告されており,非定型発達の方々では,この部位の活動が異なることが報告されています.また,生まれて十数時間の赤ちゃんでも「ヒトの動き」と「そうでない動き」を区別することができると報告されています.なぜでしょうか?

    現在,私たちの研究室ではモーションキャプチャ装置を駆使し,身体運動に埋め込まれたコミュニケーションに関連した動き情報の特徴量を探るとともに,各種脳計測装置を用いて,その神経基盤と発達メカニズムを追っています.成人だけでなく,生まれてすぐの赤ちゃん,定型発達のみならず,非定型発達の発達過程にも着目し,「私たちはどのように他者に敏感になり,そしてどのように他者を理解するのか」「私たちは他者からどのように何を学ぶのか?」「そのような仕組みが私たちの社会の形成とどのように接続するのか?」といった問いに答えを出すべく研究を進めています.



  3. 身体に根ざした他者視点取得能力の神経機構とその障害(平井)
  4. 「あなたの見ている景色は,わたしの見ている景色と異なる」

    あまりにも当たり前すぎるかも知れませんが,自分の視点と他者の視点の違いを理解することは社会生活でとても重要です.本プロジェクトでは,自分の視点の理解と他人の視点の理解の違いが脳のどの場所で行われているか,そしてそれが定型発達・非定型発達のお子さま(幼稚園から高校生まで)でどのように異なるのか,どのような方略を使っているのかを各種脳機能計測や行動調査により解明しています.



  5. 知覚と運動の関係の神経機構とその障害(平井)
  6. 「他人の動きを見る」ことと「自分の動き」は異なるプロセスが関与すると思われるかもしれません.しかしながら,実験心理学,認知神経科学の膨大な知見から,両者の処理はオーバーラップすることが報告されています.本プロジェクトでは,各種神経変性疾患 をターゲットとして,両者の関係について解明し,疾患を特徴づけるための指標の確立を目指します.



  7. 光トポグラフィを用いた脳卒中患者の神経特性解析とリハビリへの応用(櫻田)
  8. 光トポグラフィとは、微弱な近赤外線を頭皮に当てることで脳活動に伴って変化する血流(血中ヘモグロビン濃度)を計測する脳機能イメージング装置です。このような脳活動計測方法を近赤外線分光法(near-infrared spectroscopy: NIRS)と呼びます。光トポグラフィは他の脳機能イメージング装置と比較して小型であり、ベッドサイドでの脳活動計測も可能です。さらには運動中の脳活動計測にも適していることなどから、近年リハビリテーション分野などへの臨床応用が盛んに試みられています。

    私たちは、急性期の脳卒中に伴う麻痺患者を対象として、光トポグラフィによる脳活動計測を行っています。この研究では、これまでのリハビリテーションに関する研究で着目されてこなかった患者間の個人差(患者個人の「クセ」)を、神経活動から簡易的に定量化することを目指しています。具体的には、それぞれの患者さんが得意とする「注意の向け方」(例えば、運動中に自分の身体情報に注意を向けることが得意か、あるいは環境情報に注意を向けることが得意か)に伴う脳活動の個人差を調べ、その際の運動パフォーマンスとの関係を評価しています。本研究の一連の成果は既に特許出願もしており(特願 2015-256090号)、それぞれの患者さんに合ったリハビリテーション(テイラーメードリハビリテーション)の提案に向けて研究を進めています。



    実際の調査の様子

     



     

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