教育・研修のご案内

平成27年度第1回公開講座講演内容

乳癌と検診 ~ともに考え、より早期に発見~

蓬原 一茂
一般・消化器外科
助教
蓬原 一茂
古今東西、乳癌は女性の最大の病の一つとして治療されてきました。我が国においても最初(世界で最初とも)の全身麻酔を施行された疾患も乳癌と言われています。近年、多くの医師そして患者さんと御家族、メディカルスタッフ、研究者の協力のもとに様々な検査・治療方法が確立されていますが、この多くの努力があっても乳癌を克服することは簡単なことではありません。特に乳癌の予防はまだ時間のかかる状態です。そのため、現時点でも検診は重要な方法であり、より早期の乳癌を発見することで多くの恩恵を被ることは明白であります。しかし、検診はなかなかできるものではありません。最近では米国の女優が遺伝子検査から予防的乳房切除を行ったことが話題になりました。極端な話のように感じられるかも知れませんが、乳癌予防そして検診に関心を抱かせていただいたと思っております。乳癌に関する話題は治療、診断など多岐に亘っているため、全てを短時間に説明することは難しいことです。今回は乳癌に関する治療の歴史から最近の検診についてお話しさせていただきたいと思います。乳癌治療に関わっている方々そしてその御家族、乳癌に関心のある方々に少しでも伝えられるものがあると幸いです。

早期から始める緩和ケア

清崎 浩一
一般・消化器外科
准教授
清崎 浩一
緩和ケアとは、生命を脅かす疾患の患者さんやそのご家族に対して、現在の治療の目的を認識し、予後の見通しをたて、患者さんが現在何に困っているかの見極めをおこない、その苦痛を緩和することにより、患者さんやご家族の生活の質を最大限まで高めることを目標とする医療です。したがって、生命を脅かす疾患と診断された時点から患者さんらしさを大切にして、身体的・精神的・社会的・霊的な苦痛を和らげる医療を積極的に行って行くことが大切です。公開講座では早期からの緩和ケアについてお話しさせていただきたいと思います。

がんの痛みを和(やわ)らげることの大切さ ~医療用麻薬はこわくない~

大西 由紀子
看護部
師長 (がん性疼痛看護認定看護師)
大西 由紀子
がんによる"さまざまなつらさ"の中でも、痛みは多くの患者さんやご家族が最も恐れる症状のひとつです。がんと診断された時点で30%、再発・進行がんと診断された時点で60~70%の患者さんに痛みがあると言われています。
がんの痛みは私たちの生活にどのような影響を及ぼすでしょうか?
痛みがあると、夜眠れない・食事を楽しめない・動くのが辛い・仕事や家事が出来ない・外出や人と会うのが億劫(おっくう)など"これまで普通に過ごしていた日常生活"に影響を及ぼします。このような痛みを放置すると、身体だけでなく心にもストレスがかかり、治療に必要な体力を消耗するだけでなく免疫力の低下を招くこともあります。また、痛みを長時間放置すると、痛みを伝える神経が増えてしまい更に痛みが悪化することも分かっています。
でも、心配はいりません。WHO(世界保健機構)の調査によると、がんの痛みの80~90%は適切な治療によって緩和できると言われています。痛みを緩和する方法には様々な方法がありますが、薬物療法として医療用麻薬を使用する場合があります。医療用麻薬というと、「中毒になる」、「寿命が縮まる」、「最期に使う薬」などのイメージを持たれる方が少なくありませんが、決してそのようなことはありません。医師が処方する医療用麻薬を指示通りに服用する分には安全で効果的なお薬です。
今回の講座では、がんの痛みを緩和することの大切さと、痛み治療のひとつである医療用麻薬についてお話します。がんの痛みが緩和し安心して日常生活を過ごすためのエッセンスになればと思っています。

がん患者と家族に生じるこころの問題

岡島 美朗
精神科
教授
岡島 美朗
「がん」という言葉を聴くと、どういうイメージを思い浮かべられるでしょうか?医療が進歩し、治療成績が格段に向上したといっても、やはりがんには「死」のイメージがつきまとうのではないでしょうか。この講演では、がん患者さんとご家族のこころの問題についてみなさんと一緒に考えたいと思います。
がんに罹ることはこころに大きな衝撃を与えます。精神的な治療が必要になったり、著しい場合には自殺の危険が高まったりすることさえあります。患者さん本人だけではありません。ご家族もしばしば大きなショックを受けます。しかし、そうした衝撃は時間とともに弱まっていき、多くの方はその後の治療や生活について冷静に考えることができるようになります。そうしたこころへの衝撃に耐えられるよう、寄り添う援助が重要です。
また、がんの治療はしばしば大きな心身の負担を伴います。治療の副作用のつらさや、脱毛など美容上の問題、さらに経済的な負担も生じます。そのなかで、患者さんは"治療しなければ病気が進行する"と考え、必死に耐え続けます。治療が終わったのちも、再発の不安はなかなか拭い去ることができないものです。また、がん治療を受けてから長期間が経過したサバイバーの方たちは、体調がすぐれず、不安も強い中で仕事や家庭生活を続けていかなければなりません。不幸にして再発した場合には、再び治療を受けるかどうかに悩み、周囲の人や医療スタッフに怒りをぶつけられることも稀ではありません。
がんを治すことができず、病気が進行した時期は、患者さんとご家族にとってとても大切な時間です。患者さんは体が辛いだけでなく、自分がこれからどうなっていってしまうのかわからない不安に苦しむこともあります。しかし、同時に限られた命を自覚する中で、自分の生を見つめ、新たな発見をされることも多くあります。そうした経験のなかで、患者さんに寄り添う私たちも、人生において何が大切かに気づかされるのです。
患者さんを支えるご家族もまた、大きな負担を強いられます。大切な家族を失う悲しみを背負いながら、患者さんの希望を支え、生活を維持しなければなりません。患者さんが亡くなられたのちにもさまざまな手続きや生活の再建のために心労が絶えず、心身のバランスを崩してしまうこともあります。患者さんとともにご家族にもケアが必要であることを忘れてはなりません。

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