教育・研修のご案内

平成29年度第3回公開講座
「がん治療の最前線~ロボットとくすり~」講演内容

講演①「手術支援ロボット“ダヴィンチ”によるがん手術治療最前線」

宮川 友明
泌尿器科
講師
宮川 友明
 限局性前立腺がんに対する治療方法の1つとして、前立腺を摘出する手術療法があります。前立腺は骨盤の奥に位置するため、従来の開腹手術では、出血量の増加や術後の尿失禁などの心配な点がありました。腹腔鏡手術も導入されていますが、高い技術が必要とされ、施行できる施設は限定されています。
 2012年に保険適応となった手術支援ロボットdaVinciを用いた、ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術は、腹腔鏡手術による出血量の減少や、開腹手術では確認できなかった直腸との間の操作が可能となりました。傷も小さくできることから、患者さんの手術負担を軽減し、治療効果をより高めることができると期待されています。当センターでは2015年5月より同手術を開始しています。
 今回は同手術についての概略を解説したいと思います。

講演②「病気になってもお仕事あきらめないで!」

清﨑 浩一
緩和ケア室長
一般・消化器外科
准教授
清﨑 浩一
 がんに罹患する患者さんの3人に1人は、就労可能年齢(20歳~64歳)で罹患します。がん患者さん、がん経験者の方を対象に調査を行ったところ、勤務者の34%が依願退職または解雇、自営業の17%が廃業しているという報告があります。一方、日本の現状では32万5千人の方が仕事を持ちながらがんで通院をしています。働き方を考えることで、がんを患ってもお仕事に係ること(お仕事を継続したり、新たにお仕事に就くこと)は可能だと思います。
 そのためには企業、行政、医療機関が患者さんの状態を理解し、患者さんに適したお仕事を検討していくことが必要となります。国はがん対策基本推進計画の中で、がん患者の就労を含めた社会的な問題の解決を目標の一つに掲げています。がんを患ったことで自らお仕事をあきらめていらっしゃる方も多くおられると思います。しかし、企業、行政、医療機関それぞれで相談していただくことで解決できることも多くあります。
 当センターではハローワークと連携し「お仕事継続、就労支援相談」を定期的に開催しております。がんを患った患者さんは多くの不安を抱えることになります。お仕事の問題を含めて総合的に支援をさせて頂くことでより良い生活を送ることが可能であると思っております。お仕事のことを含めがんでお悩みの方はがん相談支援センターにご相談ください。

講演③「肺がん治療(特に薬物療法)の進歩と期待される最新治療」

大柳 文義
呼吸器内科
准教授
大柳 文義
 肺がんは世界的にもわが国においても癌の死因の第1位を占める難治性の悪性腫瘍であり、日本人の健康にとって非常に大きな脅威となっています。年間死亡者数も75000人を超え、その推移は今後も増加傾向にあり、近い将来には年間8万人を超えることが予想されています。
 近年、肺がんに対する研究の進歩は目覚ましく、分子生物学的な研究やゲノム解析などの研究により、非小細胞肺がん(特に肺腺癌)においては様々な特定の遺伝子異常(ドライバーがん遺伝子)の存在が明らかとなってきています。これらを標的とした分子標的薬剤の開発は急速に進歩し、ドライバーがん遺伝子を有する肺がん症例においては劇的な治療効果の改善が得られるようになってきています。こうしたドライバーがん遺伝子を有する肺がんの治療には、ドライバー遺伝子変異の種類に応じて治療薬剤を選択する個別化治療あるいはプレシジョン・メディシンが行われるようになってきています。
 さらにこれまで肺がんにおいては無効と考えられていた免疫治療が、免疫チェックポイント阻害剤の登場により肺がんにおいても有効であることが明らかとなり、従来の手術、放射線、抗腫瘍薬に加えて第四の治療として注目を浴びています。
 免疫チェックポイントとは、免疫反応が過剰に働くことを抑制するチェック機構のことです。人の体には細菌やウイルスなどの外敵や体内にできたがん細胞などの非自己に対する免疫応答機能が備わっていますが、過度に応答機能が亢進するのを防ぐため、このチェック機構が働き免疫反応にブレーキをかけています。がん細胞はこのブレーキを巧みに利用して生き延びようとしています。免疫チェックポイント阻害剤は、がん細胞が免疫から逃れて生き延びようとするのを阻止する薬剤(抗PD-1抗体や抗PD-L1抗体など)です。
 抗PD-1抗体や抗PD-L1抗体の効果が認められて以降、肺がん領域においても免疫療法の研究が盛んに行われてきており、肺がんの治療は大きく変わってきています。今後も様々な研究および薬剤の開発が進み、治療の選択肢を広げ、個々の特性に応じた治療に変化してゆくものと思われます。そこで、今回の市民講座では化学療法を中心にお話をさせて頂く予定で考えております。

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