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卒業生インタビュー 吉嶺文俊(新潟県)

卒業生インタビュー 吉嶺文俊(新潟県)

(平成25年度 取材)

吉嶺文俊

新潟県東蒲原郡阿賀町
新潟県立津川病院
吉嶺文俊

行政を含めた住民との対話を繰り返しながら
これからの地域医療を模索する


一人の医師に頼るのではなくチームとして連携が必要な時代

新潟県東蒲原郡阿賀町は、新潟県東部の山間地にあり、佐渡島に匹敵する広大な面積を有しています。最大の特徴は、人口は約13,000人でありながら高齢者が42%と、過疎・少子高齢化が進行しているという点です。そのような環境にある唯一の病院が、県立津川病院です。

いまでこそ磐越道が走り、へき地に続く道路も大方舗装されていますが、約30年前、自治医科大学の夏季実習として初めてこの土地を訪れた時は、冬の間は雪に閉ざされた陸の孤島であり、ファクシミリを用いた遠隔診療が行われていました。無医村地区への安定した医療提供方法として、海外から見学者が来るほど画期的なシステムだったのです。

現在はインターネットが発達し、疾患の診断から最新の治療方法まで、誰もが簡単に調べられるようになりました。住んでいる地域に関わらず、患者さんが安全で安心な医療を求めるようになったいま、改めてへき地医療の意義を考えてみると、その答えのキーワードは「チーム医療」にあるのではないかと思います。昔のようなボランティア精神にあふれた一人の赤ひげ先生に期待するのではなく、複数の医師やコ・メディカル、福祉スタッフと連携をとりながら、できる限りの最高の医療を提供する“赤ひげチーム”が、これからの超高齢社会における在宅を中心とした地域医療には必要なのです。


医療従事者と住民が一緒になってこれからの医療を模索する

私は赴任以来、医師や町の保健担当課職員、保健師さんらと連携を取りながら、津川病院の新しいあり方を定期的に探ってきました。5年前からは有志による「ナイトスクール」を開始し、阿賀町の各集落を医師や医療関係者、研修医らとともに回りながら、地域住民の生の声を聞き、これからの医療のあるべき姿を医療従事者と住民が一緒になって模索する車座勉強会を現在も続けています。

また、阿賀町の保健師さんと相談して「健康ファイル」を作成し、普及啓発活動も行っています。介護保険利用者がもともと持っていた連携ノートを、若い患者さんや一般住民にも応用できるようにしたもので、自分の病気や健康に関する資料から、入院した際の同意書や診療費の明細書なども自主的にはさんでもらい、外来受診時やほかの医療機関を利用する際に見せるよう指導しています。自分のカルテのコピーを持ち歩くような感覚で、それにより重複診療などを防ぎ、迅速で的確な診療を促すとともに、患者さん自身が自分の病気や健康への意識を高めてくれることも期待しています。


「医療の谷間に灯をともす」 気概を持って学んでほしい

これからの社会では健康や病気の情報がさらに明らかとなり、医療者だけでなく一般住民にも広まっていくことは明白です。疾病治療が医師の力量よりも患者さん本人の回復力に負うところが大きいように、医療システムの改革においては、医療者のみならず行政を含めた住民との対話を限りなく繰り返すことが大切です。地域医療の現場こそ、療養指導や患者さんの家族への指導、そして健康増進活動などを実践する場として最適な場所はありません。自治医科大学の校歌には「医療の谷間に灯をともす」というフレーズがありますが、これこそが今でも私の目標であり、医師をめざす自治医科大学生のみなさんもそうした気概を持って大学で学んでほしいと思います。