研究Now! 研究者自らが語る成果へと続く努力の道

Episode.2 ダブルバルーン内視鏡による新たな世界の開拓 (2/2) 

—次に、山本先生ご自身についてインタビューしてみました—

ダブルバルーン内視鏡インタビュー

佐川:先生はこちら(自治医科大学)に戻ってくる前は高知の診療所にいらっしゃったのですか?

山本:そう。大学を卒業して出身県の高知に戻ってから1〜2年目は県立中央病院で初期研修をして、3〜6年目は診療所。7年目で後期研修を利用してアメリカ留学して、そこから戻ってまた高知で2年間。その時、診療所は小さな病院になっていました。ほとんど大きな病院では働いたことはなく、高知で地域医療をやっていたときは診療所もしくは小さな病院という感じだったね。

学生の頃は、卒業したら高知の田舎でずっと地域医療をやっていくと思っていて、大学に戻るつもりも一切なく、研究をするということも一切考えてなく・・・。だけど、どこに行って何をやってても、共通しているものがある。地域医療であれ、大学病院での教育や研究であれ、やっぱり医療を通じて患者さんに役立つということが本来の目的だからね。

佐川:地域医療の経験はダブルバルーン内視鏡の開発にどのように活かされましたか?

山本: 自治医大の卒業性は比較的早く地域に出て自分で物事を考えないといけない環境に置かれるでしょ。問題点を自分で見つけ出して考えて解決していくというトレーニングを自然にさせられる環境にあるわけ。そういう発想の仕方がやっぱりダブルバルーン内視鏡の開発において、問題点を解決するためにはどういう工夫をしたらいいか、という考え方に繋がってる。大学病院等でずっと上の先生に教えてもらう環境にいると自分で考えるということを忘れがちになってしまうんで、そこが本当は重要。幸い自治医大の卒業生はそういう環境に置かれるので。

医学は今すごく進歩して、知識としては膨大な知識が要求されるから、それをすべて吸収して持っていると言うことは不可能に近い。とすれば困ったところでちゃんとそこを自分で問題点を認識して、調べたりしながら解決していくということが重要かなと。

佐川:なるほど、自分で考えるということが大切なのですね。

山本: 義務年限の途中でアメリカに留学した時にアメリカのレジデント教育で強調して言われたことは、「医者はディシジョンメイキングができる能力が一番重要なんだ」ということ。判断力をつけなさいと。患者さんの持っている問題をちゃんと抽出して、それに対して考察をして、最善の検査・最善の治療法はなんだというのを自分で決めていくって言う力をね。そういうトレーニングがレジデントの間にやるべきトレーニングだということを言われました。自分が医学生のころはそういう意識があんまりなかったので、そういう考え方を医師を目指す医学生の頃から持っていればより良いですね。

佐川:高知では一般内科にいらっしゃったのですか?

山本:一般内科というよりは何でもですね。

佐川:消化器内科に進まれたきっかけは何だったのですか?

山本:消化器に興味を持った一番のきっかけは、卒後研修した病院が消化器が得意だったから。実際現場に出ると、消化器ってすごく需要が大きくて、いっぱい患者さんもいて、必要性が高いっていうのがわかる。そして診療所とか比較的小さい所でも使える技術がある。診療所に行っても内視鏡はできるしね。

消化器外科にも興味があった。診断の結果が正しかったかどうかを手術して自分で見られるし、自分で治せるから、消化器外科を最初に目指したんだよね。でもずっと診療所にいるとなかなか手術できないので、消化器内科にしようと思った。今は内視鏡治療という形で外科的な治療もしてたり、外科と内科の接点がだいぶ近くなってきてて、実は今、シンガポール大学の外科から客員教授で呼ばれてて、シンガポールでは外科でやっています。

診断をきちっとつけたいというのと、それに対して何かアクティブに治療をしたいっていう両方の気持ちがあった。そして、自分が役立ってるっていうのを実感したいっていうのがあったんですね。それで消化器が一番向いていたと。

佐川:先生はどんな学生だったんですか?

山本:学生の頃は、いっぱい遊んだり、部活とかもやったり、すごく楽しい学生生活を送らせてもらったんだけど、一応ちゃんと勉強しないといけないっていう気持ちはあった。朝が苦手で寝坊することもあったので、よくないなぁとは思うんだけど、一応1つ決めていたことがあって。医学部で学ぶ勉強っていうのは将来使うものだし、絶対必要なものだから、ちゃんと決められた所だけはきっちりその時に把握していこうってね。

佐川:ちなみに学生の時の成績とかお尋ねしても大丈夫ですか?

山本:成績は実はよかったんで自慢になってしまうんだけど(笑)

佐川:そうですか(笑)

山本:試験前だけはきっちりやろうと思って。けどね、試験に通るために勉強するんじゃないんだっていう、自分の中ではプライドがあった。 試験に何が出るとか、過去の問題をやって点数とろうという意識はなくて、とにかくその試験のところの範囲は、自分の納得のいく勉強をしようと思ってた。 試験の前はとにかく教科書を読んだ。いきなり問題を解くと根本的に理解できていないところは断片的な知識になるけど、教科書をちゃんと読めば理解するから、知識として応用が利く。だから一見効率の悪いことをしているかのように思うかもしれないけど、たとえ試験落ちたっていいんだって。その試験はもう勉強させてくれるチャンスだと思って、教科書を一生懸命読んでた。そうすると、組織学、解剖学や生理学などの基礎医学も、一見関連してないと思える分野でも、臨床になったらネットワークのように結びついて応用が利くようになるんです。

佐川:学生の時にしておけばよかったなーって思うことってありますか?

山本:いやー、かなり充分やったからなぁ。

佐川:じゃあ逆にこれはやっておいて正解だったと思うことは?

山本:友達関係は重要かな。部活だったり県人会だったり同じ学年の友達だったり先輩後輩だったり。そういった付き合いの中から色々学んでいくことは大きい。集団生活の中から社会生活を学べるのは学生の時ならではだなと思う。

勉強に関してはやっぱり自分で自分なりの方法を決めること。毎日こつこつ勉強することが得意な人もいれば、集中的にやる方が得意な人もいるだろうし。自治医大は試験のカリキュラムをきちっと組んでくれるから、それに合わせてちゃんとやっていれば、卒業試験とか総合判定試験とか国試とか普通にできるようになる。 そのほかはやっぱり学生生活をエンジョイすること。

佐川:先生の今後の野望・展望はありますか?

山本:実は野望とか展望とかをあんまり持たずに来た人間なので、あんまり具体的な目標を持ってはいないんだよね。だけど常に考えているのは、なんらかの形で自分が役立っていると思えるような、そういう仕事をしたいなということ。自分がやってることは何のためになってるかわかんない、自分の存在価値がわからない、っていう状況だと仕事があんまり面白くなくなるし、やりがいがないじゃないですか。だから何らかの形で役に立ててるなと思える仕事をしていきたいですね。

佐川:何かの常識をやぶるにはどうすればいいでしょうか?それを破りにいこうっていうその強さはどこからきてるんですか?

山本:人の意見は聞くんだけど、惑わされずに自分の考え方と人の意見と両方考えあわせて、それでも自分の考えの方が正しいと思ったら諦めないっていうことかな。 他の人の方が正しいって思ったら固執する必要はないけど、とにかく自分が納得していないという状況なら諦めない。それを実現する方法を考える。実現するためには何が問題になってるか、何が障壁になってるか、どこを解決すればそれが一歩進むかっていうことを、地道に考えてそれを実行していく。とにかく諦めた時点で不可能になる。可能性がある限りやる。諦めなかったらすべて上手くいくというわけじゃないけど、諦めたら何も上手くいかないからね。

佐川:本日はどうもありがとうございました。



プロフィール


山本 博徳(やまもと ひろのり) 消化器内科学教授


経歴

1984年3月  自治医科大学卒業
1984年〜1995年  高知県で地域医療に従事
1990年4月〜1993年7月  アメリカ臨床留学(メイヨークリニック、テキサス大学)
1999年6月  医学博士
2001年10月  自治医科大学内科学講座(消化器内科学部門) 講師
2005年10月  自治医科大学内科学講座(消化器内科部門) 助教授
                   フジノン国際光学医療講座(現・富士フイルム国際光学医療講座) 助教授
2007年6月  自治医科大学内科学講座(消化器内科部門) 教授
                 フジノン国際光学医療講座(現・富士フイルム国際光学医療講座) 教授
2008年4月  自治医科大学光学医療センター センター長
2009年4月  シンガポール国立大学外科 客員教授
2012年4月  自治医科大学附属病院消化器センター センター長


主な研究内容・賞等

専門:治療内視鏡、小腸・大腸疾患


資格・学会

日本消化器病学会 指導医・評議員・国際委員会委員
日本消化器内視鏡学会 指導医・評議員・国際委員会委員
日本内科学会 指導医
アメリカ消化器病学会 フェロー会員(American Gastroenterological Association Fellow)
アメリカ消化器内視鏡学会 国際委員


紹介

下部消化管グループでは、主に大腸・小腸領域の疾患治療を担当。 特徴としては、ヒアルロン酸を用いた内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)による大腸・直腸早期癌の内視鏡治療や、当科と富士フイルム社によって開発されたダブルバルーン内視鏡(DBE)を用いて、小腸疾患の診断治療を積極的に行っている。 また、潰瘍性大腸炎やクローン病など炎症性腸疾患の専門治療を行っている。特にESDとDBEにおいては世界トップレベルの診療実績を有し、それら手技の普及のため、日本各地・世界各国で講演や実技指導を行っている。 そして国内はもとより、多くの外国人留学生が日常的に研修に来科。研究分野では、より安全なESDの治療具開発(富士フイルム社と共同)や、小腸疾患解明を目的とした基礎的研究、ダブルバルーン内視鏡を用いた新しい治療手技の研究を行っている。




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