研究Now! AADC欠損症に対する遺伝子治療とは

Episode.5 AADC欠損症に対する遺伝子治療とは 

今回は自治医科大学においてAADC欠損症に対する遺伝子治療を行ったこども医療センター長の山形 崇倫先生に、医学部1年の加藤 直人さんがインタビューを行いました。

(2018年9月)

インタビューの様子

遺伝子治療とは何か?

医学部1年・加藤 直人さん(以下、加藤):まずは山縣先生が行った「AADC欠損症」に対する遺伝子治療についてお聞きします。「AADC欠損症」とはどのような病気なのでしょうか?

山形 崇倫教授(以下、山形):「AADC欠損症」というのは、AADCというのは芳香族Lアミノ酸脱炭酸酵素で、それが遺伝的にないために起きる常染色体劣性遺伝性というお父さんお母さんが素質を持っていてそれを引き継いでしまった子が発症する病気。希少神経難病になっています。
世界で140人程度しかいないですけど、台湾で多いですね。

加藤:台湾ですか。

山形:台湾に世界で三分の一ぐらいの患者さんがいますね。創始者効果という狭い領域の中でその遺伝子を持った人が残って子孫を増やす、そのグループの中で増えたと考えられています。
日本では福山型先天性筋ジストロフィーとかいくつかそういう病気はあるので、閉鎖的な地域では増える病気かなと思います。
日本では6名の患者さんがいます。

加藤:ちなみにAADCとはどのようなものなのでしょうか?

山形:AADCって何をしているかというと、 L-ドーパをドパミンに、5-ヒドロキシトリプトファンをセロトニンに脱炭酸化する酵素です。
ドパミンとかセロトニンってのは何かというと、神経伝達物質と言って脳の中で証拠を伝える物質。電気的な刺激が来てそのシナプスってところで出されて次の細胞に情報を伝えるという物質なのですが、AADCが無いとセロトニン、ドパミンができません。
ドーパミンからノルアドレナリン、アドレナリンという物質もできるので、これらが全体的に欠けてしまう、そのためにこの欠乏症状としての病気が起きます。

加藤:AADC欠損症には主にどのような症状があるのでしょうか?

山形:どういう症状かというと、生まれて一か月以内、大体半年以内には全員発症するんですけど、運動障害、体が動かせない、手足が動かせない、寝たきりになってしまう。あと眼球偏位発作という、目が上に寄ってしまう。 そのあとでジストニアという体が突っ張ってねじれるような動きがあります。あとは知的な発達の遅れとか、自律神経の異常として血圧が変動したり汗が多かったり唾液分泌が多かったりという事があります。
他に人によるけどてんかんとか低血糖とか睡眠がスムーズじゃないというものが色々出てきます。
典型的な人は一生涯寝たきりで、だんだんと飲み込みとか食べるのも難しくなる子もいますね。
大体の患者さん重症型・典型型は一生涯寝たきりで、子供のころに肺炎を起こしたりとか 呼吸困難で亡くなることがありますね。
中には座れたり、少し歩ける軽症の方もいます。

加藤:今回の遺伝子治療とは何をされたのでしょうか?

山形:今回の病気(AADC欠損症)には治療法がなく、薬もいくつかあるが重症型の人には効きませんでした。
そこで遺伝子治療という選択に考え付きました。

アデノ随伴ウイルスベクターの中に遺伝子を組み込んで脳に注入する方法を用いりました。
このウイルスとは、殻と遺伝子だけで出来ているもので、他の細胞に入り込むことで、 DNAで自分の体をもう一度作り、出ていくものです。
その際、DNAの増殖に関係する両端だけを残し、ウイルスが成長するのに必要な部分を取り除いてAADCの遺伝子だけを残すような治療を行いました。
元々は神経内科の村松慎一教授がパーキンソン病用に作成したベクターで、パーキンソン病の患者さんというのは、Lドーパからドパミンが作られなくなるので、その動きをよくしようと作成されました。
実際自治医大では6名の方が治験されて実際に良い効果が得られたのを、台湾の研究者の方がAADC欠損症に使いたいと言って始まった治療なのです。

加藤:では台湾ですでに治療が行われていたと?

山形:そうです。その研究者が村松教授の作成したベクターをAADC欠損症に使いたいと。ただパーキンソン病のベクターはNドーパの働きを促す疑似的な治療でしたが、今回は元々持っていないものを入れるという根本的な治療として台湾で始まりました。そして台湾でうまく作用しているとの話もあり、日本でもAADC欠損症の患者さんの希望もあり、治療を始めたという流れです。

インタビュー後編は以下の動画から


 

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