小児画像診断部

診療内容

自治医科大学とちぎ子ども医療センター(以下、子ども医療センター)開院に伴い、小児の画像診断に特化した部門として診療を開始いたしました。
小児科という診療科が、小児「内科」でありながら臓器別に分科せず、単科で小児の幅広い領域の総合医療を担当しているのと同様、小児画像診断部も、画像診断の対象となる全身の疾患を診療の対象としています。医師はすべて放射線科専門医です。次項特色に書いているように、患者の皆さんと直接接する医師(主治医)が、放射線科医にとっての依頼主です。ですから、検査依頼を出す医師を「依頼医」と呼び、放射線科医はその依頼に基づいて仕事をします。それゆえX線透視検査や超音波検査など直接担当する検査を除けば、放射線科医が患者の皆さんの前に現れることはありません。放射線科医は、いわば”Doctor’s Doctor “(医者のための医者)です。
患者さんにとってできるだけ負担の少ない検査を選択(この”選択”の中には、「そのような検査は必要ない」と助言することも含みます)し、依頼医にとって有益で正確な「画像診断」を提供すべく、診療に従事しています。
次々項に書いてあるように、小児画像診断部には単純X線撮影装置、X線透視装置、超音波画像診断装置、MRIが設備されていますが、CT、核医学検査、IVRを含む血管造影については、「大学病院併設型小児病院」という特色を生かし、自治医科大学附属病院放射線科・中央放射線部との密接な連携の下、診療が行われています。
放射線科医による診療の結果を最も端的に表すのが「画像診断レポート」です。担当医にお声をおかけください。もしお受けになった検査に「読影依頼」が付されていたなら、放射線科医の手によって画像診断レポートが作られているはずです。

特色

「主治医が画像診断検査依頼を出す、その更に前に遡るところから始まる画像診断」です。臨床情報をもとに、迅速で正確な画像診断を可能な限り侵襲の少ない方法で計画し、放射線科医のパートナーである診療放射線技師とともに施行します。電子カルテ(JUMP)が導入されたこと、子ども医療センターが開院して依頼医との物理的な距離が狭まったことにより、必要十分な臨床情報を得ることが容易になりました。また、小児画像診断部主催で臨床医とのカンファレンスを定期的に持つことにより、その成果を依頼医だけでなく他の医師にも提供するように努めています。

設備

単純X線撮影

高性能のCTやMRIが広く普及した現在、成人を対象とした画像診断の領域では単純X線撮影は過去の遺物となりつつありますが、小児医療の現場では、いまでも第1線の画像診断検査です。

これは2つの理由によります:

1.鎮静
CTやMRIは患者が動くと診断に耐える画像が出来ません。そのため小さなお子さんにはお薬を服用していただき、眠らせて検査を行う必要があります。

2.単純X線写真必要十分な診断情報が得られる
小児に多い肺炎や骨折、骨格の先天異常はほとんどの場合、単純X線写真で診断に必要十分な情報を得ることが出来ます。
癌を代表とする悪性腫瘍の早期発見。これはCTの独擅場(どくせんじょう)です。この目的ではCTは単純X線写真よりもはるかに優れています。しかし、幸いにして小児では疾患全体に占める悪性腫瘍の割合は成人に比べてごくわずかです。しかも小児には”早期癌”という概念がありません*)。
単純X線写真の撮影はほとんどの場合、担当医からの依頼に基づいて診療放射線技師が施行し終了します。その一方で被虐待児の全身骨撮影のように写真に現れる所見に応じてその場で撮影部位、範囲、方向を決めねばならない場合があります。そのような時にはMRIやCTなどの画像診断検査と同様に放射線科医が立ち会い、計画を立て、撮影を指揮します。

*1980年代の初め、我が国では神経芽細胞腫を早期に発見しそれを死亡率の低下につなげる目的で、乳児に対しマススクリーニング検査が始まりました。私たち放射線科医も画像診断において重要な役割を果たしました。3次検査で陽性と判定された多数の乳児に対し超音波検査を行い、腫瘤が見つかった患児に対しては更に精密画像診断検査を施行し、外科手術による腫瘍の摘出に結びつけたのです。
約20年の間に膨大な費用と人的資源を投入した結果は「神経芽腫死亡率の低下は確かとはいえない」。2004年、このプロジェクトは中止となり、以来小児に対して「悪性腫瘍の早期発見」という試みは一切行われていません。
ちなみに、カナダとドイツでも同様の試みがなされました。5年間という期限を限った形(カナダでは1989年-1994年。ドイツでは1994年-1999年)で行われています。死亡率の低下が確認できないことを以て、以後再び実施されることはありませんでした。

X線透視装置

C-アーム付きのX線透視装置を有し、消化管造影、排尿時膀胱尿道造影、透視下でのIVR手技に活用しています。

超音波診断装置

小児においては、超音波検査は成人以上に有益な画像診断検査です。それは以下の理由によります:

  1. 小児は体格が小さく内臓脂肪が少ないため、成人より高精細な画像が得られる。
  2. 新生児では頭蓋骨や脊椎骨が部分的にしか骨化していないため、成人では不可能な頭部(脳)や脊髄の観察が可能

超音波検査を単独の画像診断検査として考えるのではなく、単純X線写真、CT、MRIなどその他の画像診断検査の中の一つとして位置づけています。それゆえ、「超音波検査の次にどんな画像診断を行ったらよいのか?」。私たち放射線科医は超音波検査以外の画像診断検査にも精通していますから、そのような疑問には自然に正解を用意することが出来ます。

MRI

高磁場(3.0T)MRIを有しています。検査には必ず放射線科医が同席し、モニターに現れる画像に応じて、診療放射線技師の技術的サポートの下、最適な撮像シークエンスを選択し施行しています。
MRI対応の麻酔器・生体モニターを設備し、小児専門の麻酔科医による全身麻酔下でのMRI検査が可能です。

CT

附属病院中央放射線部(予約検査として)、新棟救急部(緊急検査として)のCTを利用し、検査を行っています。
小児患者の検査に当たっては、放射線科医が検査計画を立案し、その多くで検査に同席しています。

核医学検査

附属病院画像診断部において検査を施行しています。

実績

カンファレンス(小児画像診断部主催)

カンファレンス風景

以下のようなカンファレンスを定期的に開催しています。コメディカル・スタッフの参加も歓迎しています。

小児科画像診断カンファレンス

日時:2回/週(月曜日、木曜日)午後1時から
会場:小児画像診断部カンファレンス室(読影室の隣)
撮影された画像の解説だけでなく、向後の画像診断計画についても話し合われます。

小児外科画像診断カンファレンス

日時:1回/週(月曜日)午後4時から
会場:小児画像診断部カンファレンス室
同じ週の木曜日に小児外科からの依頼で行われるX線透視検査の症例紹介が目的で始まりましたが、最近では外科疾患の診療方針の検討を小児科医を交えて行ったり、研修医や学生にとって教育的意義のある症例の供覧の場としても活用されています。

小児尿路画像診断カンファレンス

日時:1回/週(火曜日)午後6時から
会場:小児画像診断部カンファレンス室
小児泌尿器科医、小児科医、放射線科医が尿路(腎臓、尿管、膀胱とそれらに関連する臓器)の画像診断について意見を交わします。

各種お問い合わせ・ご相談

電話 0285-58-7710
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