形成外科学部門

唇顎口蓋裂

唇顎口蓋裂(口唇口蓋裂)は、口唇(くちびる)・上顎(上の歯が生える部分)・口蓋(前歯の裏から口蓋垂まで)の癒合不全によって発症する疾患です。口唇や鼻の変形、咬み合わせ、構音障害、滲出性中耳炎など様々な問題を生じるため、長期間にわたる集学的治療(複数の専門家による治療)が必要となります。そのため当院では、形成外科・歯科口腔外科・矯正歯科・耳鼻咽喉科・言語聴覚士・臨床心理士による合同チームによって治療を行っております。

形成外科初診時にお渡ししている治療の詳細を記したパンフレットを下に掲載致しますので、全体の流れや細かい点については、まずこちらをご参照下さい。

口唇形成術

・生後3ヶ月以降に口唇を閉じる手術をします。

・入院は2泊3日です。

・全身麻酔下で約2時間かかる手術です。

・手術して数時間後から術前と同様の哺乳を再開します。

・溶ける糸で筋肉・皮下・粘膜をしっかり縫合し、表の皮膚は医療用のボンドで固定しますので、抜糸は必要ありません。

・退院直後より手術前と同様の生活を送れます。

・他院で使用されることのある肘の抑制筒は一切使用しておりません。

口蓋形成術

・生後1歳半前後に口蓋を閉じる手術をします。

・入院は4泊5日です。

・全身麻酔下で片側の場合約2時間、両側の場合約5時間(口唇形成を同時にするため)かかる手術です。

・術前に滲出性中耳炎を認めた場合は、耳鼻咽喉科医による鼓膜チューブ挿入術も同時に行います。

・手術当日の夕食より軟らかい食事を再開します。

・全て溶ける糸で縫合しますので、抜糸は必要ありません。

・退院後は2週間ほど軟らかいお食事にして頂きますが、それ以外に気をつけることはありません。

・他院で使用されることのある肘の抑制筒は一切使用しておりません。

・術後の瘻孔発生(閉じたところに穴が開いてしまう)が最も心配な合併症です。世界的な瘻孔発生率は約10%ですが、当院では顕微鏡を導入して手術を行うようになった2012年以降口蓋裂初回手術症例における瘻孔発生はございません。(2017年10月現在)

口唇二次修正術

・口唇の傷についてご本人が気にされている場合は、傷を修正する手術をすることがあります。

・小さいお子さんの場合は全身麻酔で2泊3日、大きい(局所麻酔に耐えられる)お子さんの場合は局所麻酔で日帰りの手術です。

・他院で手術を受けられた方の二次修正も承っております。

鼻形成術

・成長がある程度終了した後、鼻の歪みが気になる場合に行います。

・変形の程度に応じて、鼻骨骨切りや軟骨移植などにより鼻の歪みを修正します。

・全身麻酔で2泊3日から3泊4日の入院です。

・手術時間は変形の程度と術式によります。

上下顎骨切り術

・上顎の低形成による咬み合わせの問題が矯正治療のみで修正できなかった場合に行います。

・上顎と下顎の骨を切って両者の位置関係を修正し、横から見た顔の形や笑ったときの歯の見え方が自然となるような位置でプレート固定する手術です。

・詳細は、顎変形症のページをご参照下さい。

診療実績

自治医科大学とちぎ子ども医療センター形成外科における唇顎口蓋裂の手術件数は以下のグラフの通りです。(青:口唇裂初回手術、緑:口蓋裂初回手術、黄:その他) 栃木県内で出生した患児の60~90%が当科で手術を受けていると考えられます。

Q&A

唇顎口蓋裂はどのくらいの確率で発症するのでしょうか?

4~500人に1人くらい発症すると言われています。先天性疾患としては比較的頻度の高い部類に入ります。

原因は何ですか?

裂というと裂けて開いてしまったように感じますが、実際はお母さんのお腹の中で元々割れていたものが癒合しなかったことによって生じます。特定の遺伝子多型や妊娠初期の薬物摂取などがリスクを上げるといわれていますが、癒合不全の根本的な原因はまだわかっていません。

遺伝しますか?

唇顎口蓋裂の方が親となった場合、唇顎口蓋裂のお子さんが産まれてくる確率は約4%であるという海外の報告があります。ただし、この4%というのは全員が均一に4%というわけではなく、一部の方のみがリスクの高い群であると考えられています。(たとえば、遺伝しないタイプの人が90%、30%の確率で遺伝する人が8%、80%遺伝する人が2%いたとしたら、全体では4%遺伝するということになる。)

1人目の子が唇顎口蓋裂で生まれてきたのですが、2人目は大丈夫でしょうか?

唇顎口蓋裂ではないご両親の1人目のお子さんが唇顎口蓋裂だった場合、2人目のお子さんも唇顎口蓋裂となる確率は約2%という報告があります。  また、ご両親の片方が唇顎口蓋裂で、1人目のお子さんが唇顎口蓋裂だった場合は、2人目のお子さんが唇顎口蓋裂となる確率は約10%という報告があります。

小さい頃に他院で治療を受けた後の見た目が気になるのですが、治療可能でしょうか?

可能です。唇顎口蓋裂の治療は長期にわたりますので、転居や様々な事情で病院が変更となったり、治療が中断したりしてしまうことは珍しくありません。現状に応じて様々な治療の選択肢を提案させて頂きます。紹介状(可能であれば以前の治療を行った病院のもの)をご用意頂いたうえで、受診して下さい。

出産前に説明を聞くことはできますか?

妊娠中の検診で赤ちゃんの唇顎口蓋裂がわかった場合、あらかじめ治療方法などについて診察を受けることが可能です。通院されている産科からの紹介状をご用意頂いたうえで、子ども医療センター形成外科の外来予約(毎週月曜午前)をお取り下さい。

セカンドオピニオンを受けたいのですが、どうすればよいですか。

すでに現在通っている病院で治療が計画されているけれども他の病院の意見も聞きたいという方に対して、セカンドオピニオンを受け付けております。通常の外来とは別枠で1時間程度のお時間をお取り致しますので、担当医(須永)との調整が必要となります。現在の医療機関からの診療情報提供書をご用意頂いたうえで、0285-58-7110(平日9時から17時、自治医科大学附属病院医事課セカンド・オピニオン担当)にお電話して下さい。

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