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[医学部] 分子病態研究部を中心とする研究チームが中和抗体の阻害作用を回避できるAAVベクター投与法を世界で初めて開発しました

2013年2月25日

近年8型アデノ随伴ウィルス(AAV8)ベクターを用いた遺伝子治療臨床試験が実施されており、その際にベクターに対する中和抗体による遺伝子導入阻害作用の克服が課題となっています。今回、本学分子病態研究部、遺伝子治療研究部、医療技術トレーニング部門、循環器内科学部門は共同で、中和抗体の阻害作用を回避できるベクター投与方法を、世界で初めて開発しました。

遺伝子治療では治療遺伝子を運ぶベクターが必要となります。遺伝子組換えアデノ随伴ウィルス(AAV)ベクターは非病原性パルボウィルス由来の治療ベクターで、様々な細胞に効率良く遺伝子導入が行え、染色体への組込みがほとんど起こらず、しかも治療効果が長期間持続するため、体内法による遺伝子治療のベクターとして最も期待されています。

AAVベクターには細胞特異性が異なるサブタイプ(血清型)があり、AAV2ベクター局所投与法を用いたパーキンソン病の遺伝子治療は本学で既に行われています。AAV8ベクターは末梢静脈からの投与でも肝臓への遺伝子導入を行うことができ、多くの遺伝性疾患の肝臓を標的とした遺伝子治療の治療ベクターとして有望視されています。しかし、30-50%のヒトは自然感染により中和抗体を既に持っているため、これらのヒトでは抗体によりAAVベクターの遺伝子導入が阻害されてAAVベクターの血管内投与では有効な遺伝子治療を行い得ません。イギリスで行われ有効性が示されているAAV8ベクターを用いた血友病B遺伝子治療でも、抗AAV8中和抗体がある血友病B患者ではAAV8ベクターによる遺伝子治療の成果が得られませんでした。このように、既感染に基づく中和抗体はAAV8ベクターを用いた遺伝子治療の重要なリミティングファクターであり、その阻害作用の克服が課題でした。

分子病態研究部を中心とする研究チームは、AAV8ベクターの遺伝子導入を阻害する中和抗体が存在していても肝臓への治療遺伝子を導入可能とするベクター投与法を、非ヒト霊長類(カニクイザル)を用いて確立しました。このベクター投与法はヒトへも応用が可能であり、AAV8ベクターを用いた肝臓を標的とした遺伝子治療が、自然感染に基づく抗AAV中和抗体を持つ多くの患者へも適用できる可能性が示されました。AAVベクターによる治療法は長期にわたる効果が期待されていますが、将来的には効果が減弱する可能性があります。そのような場合にも、同じベクターによって繰り返し治療が可能であることを示唆した点でも画期的な技術であると考えられます。

この成果は、アメリカ遺伝子細胞治療学会のオフィシャルジャーナルであるMolecular Therapy誌に解説記事つきで掲載され(Mimuro, J., Mizukami, H., Hishikawa, S., Ikemoto, T., Ishiwata, A., Sakata, A., Ohmori, T., Madoiwa, S., Ono, F., Ozawa, K., Sakata, Y.  Mol Ther 21 (2), 318-323, 2013)、また、同誌の同月号解説記事に「Flushing Out Antibodies to Make AAV Gene Therapy Available to More Patients」として、取り上げられました(Mol Ther 21 (2), 269-271, 2013)。

*本研究は厚生労働省科学研究費補助金(エイズ対策研究事業)“血友病とその治療に伴う合併症の克服に関する研究”・文部科学省科研費を用いて行われました。

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