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新しい診断薬、医療機器開発のためのピッグセンターの活動:東大医学部が開発した「膵液漏検出光プローベ」がテストされました

2013年11月1日

膵臓手術において、膵臓実質切離後の「膵液漏」は一般的には10-50%の頻度で発生しているといわれているが、ドレーン留置等の処置がどの程度必要かは実際上わかっていません。しかし、臨床症状を有する「膵液漏」は、いったん発生すればきわめて予後不良です。

先に東京大学医学部のグループ(浦野泰照教授、國土典宏教授ら)は、膵液漏の有無や漏出個所を手術中に正確に同定するシステムとして、膵臓断端から流出する膵液中のタンパク分解酵素「キモトリプシン」と速やかに反応して緑色蛍光を発するプローブの開発に成功しました1)。本システムは、蛍光を発しないgPhe-HMRGがキモトリプシンと反応し、強い蛍光を発するHMRGに変化すします(Figure 1A)。東大・山下先生らは、これを臨床で切除された膵臓断端に反応させ、膵管周囲のみが主にキモトリプシンが分泌する型、膵臓断端全体が反応するDiffuse型、そして断端からほとんどキモトリプシンが出ない型が存在することを報告しました1)。一方、膵臓断端の処理法は、従来の手術では膵管を確認し、結紮切除する方法からEndo GIA等のステープラーで切断する方法がとられるようになりました。しかし、これらのステープラーによる圧挫やステープラー自体の間隔など膵臓実質に適しているかどうかの判定する方法がありませんでした。事実、臨床例においてもGIAで切離された膵臓断端からもトリプシンが検出されています(Figure 1 C)2)。本光プローベシステムは、臨床使用可能な試薬としての展望がある一方で、膵臓断端の自動処理を行うステープラー等の医療用機器の改良にも使用される可能性があります。

自治医科大学では医薬品や医療用機器開発の前臨床基盤として実験専用ブタを用いたシステムを運営しています3)。今回、東京大学医学部のグループが開発したキモトリプシンプローブを用いて、膵臓切除専用ステープラーの開発のための共同実験を行いました(Figure 2)。実験専用ブタの準備は、本学先端医療技術開発センターの菱川修司准教授、寺谷工講師、牧村幸敏助教らピッグセンタースタッフが行いました(Figure 2A)。In vivoイメージングシステムのセットアップは、東大・浦野泰照教授(2B)、神谷眞子助教(2C)が行いました。膵切除は、東大・石沢武影先生の指導で、先端治療開発部門の小林英司客員教授が行いました。膵臓全体を露出後、すでに脾臓摘出が行われた膵尾部をCOVIDIEN Endo GIAのTri-Staple Technologyで切離しました(Figure 3)。切離後、キモトリプシンプローベを反応させるとその膵臓断端から2か所の反応ポイントが確認され、これをメガネ式フィルターレンズを通して確認しながら、Z縫合を加えました。追加縫合により、キモトリプシンによる光反応が止りました。

本共同実験により、1.生体側からの微小な膵液漏の処置に本システムがきわめて有用である 2.ブタモデルと本光システムを用いることでより膵臓切離に適するステープラー開発に有用であると考えられました。

参考

膵液には、キモトリプシンの前駆体のキモトリプシノーゲンが含まれており、キモトリプシノーゲン自体には酵素活性はない。今回の手法は、このキモトリプシノーゲンをキモトリプシンに変換するために、トリプシンを使っている。つまり実験では、gPhe-HMRGにトリプシンを混ぜた水溶液を、膵断端にかけて膵液を可視化した。

文献

  1. Visualization of the leakage of pancreatic juice using a chymotrypsin-activated fluorescent probe.
    Yamashita S, Sakabe M, Ishizawa T, Hasegawa K, Urano Y, Kokudo N.
    Br J Surg. 2013 Aug;100(9):1220-8. doi: 10.1002/bjs.9185. Epub 2013 Jun 13.
  2. Novel Fluorescent Probes for Identication of Liver Cancer and Pancreatic Leak.
    Yamashita S, Ishizawa T, Miyata Y, Sakabe M, Saiura A, Urano Y, Kokudo N.
    Front Gastrointest Res. Basel, Karger, 2013, vil 31, pp100-105
  3. The pig as a model for translational research: overview of porcine animal models at Jichi Medical University.
    Kobayashi E, Hishikawa S, Teratani T, Lefor AT.
    Transplant Res. 2012 Aug 16;1(1):8. doi: 10.1186/2047-1440-1-8

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