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[医学部] 薬物依存の神経機序の発見:幻覚剤のドーパミン神経への作用は、慢性投与の結果、抑制から興奮に転換する

2014年2月21日

薬物乱用、依存とそれらによる心身の健康障害は、世界で困難な問題となりつつあります。麻酔作用を持つ幻覚剤の一種のフェンサイクリジン(PCP)は、幻覚、妄想、精神錯乱などを誘発し、統合失調症と類似した症状を呈します。さらに、繰り返し使用すると薬物依存を起します。これらの作用には、神経物質ドーパミンが関与することが示唆されていますが、その機序の詳細は不明でした。

本学医学部統合生理学部門の矢田俊彦教授らの研究グループは、代表的なドーパミン産生部位であり快感・報酬の中枢である中脳の腹側被蓋野(VTA)から神経細胞を単離し、細胞内カルシウム濃度を測定して細胞活動を計測し、PCPの作用を観察した後、免疫染色によりドーパミン細胞を同定しました。正常ラットのドーパミン神経細胞は、興奮性神経伝達物質グルタミン酸に対して興奮性応答を示し、PCP(急性)添加はこれを抑制しました。一方7日間 PCP連日(慢性)投与したラットのドーパミン神経細胞においては、PCP(急性)添加は逆にグルタミン酸応答を著明に増強しました。この増強効果は、PCP連日投与を中止して7日後のラットの神経細胞でも同様に見られました。本研究は、PCPのドーパミン神経細胞に対する急性作用は本来抑制性であるが、PCP慢性投与の結果興奮性に転換し、その効果は薬物中止後も長期間持続することを初めて示したものです。

この発見は、本薬物が、繰り返し使用の結果、ドーパミン神経細胞に対して興奮性に転換し、ドーパミン亢進を介して薬物依存や統合失調症様症状を誘導する機序を示しています。また、ドーパミン神経細胞の興奮性へのシフトが一旦起こると容易に元に戻らない性質は、薬物依存からの回復を困難にしている神経メカニズムとして注目されます。併せて、統合失調症の発症、病態に関わる神経機序の解明にも繋がる可能性が考えられます。

本研究は、文部科学省脳科学研究戦略推進プログラムの一環として、また科学研究費補助金などの助成によって行われました。



研究成果は2月20日、米国学術雑誌Neuroscience Lettersに掲載されました。