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研究情報

[医学部] 唾液の無い蚊はマラリアにほとんど感染しない

2016年9月7日

研究概要

自治医科大学医動物学部門・山本大介助教、農研機構 生物機能利用研究部門 新産業開拓研究領域 カイコ機能改変技術研究ユニット・笠嶋めぐみ研究員らのグループは、ハマダラカの唾液腺の機能を解析し、ハマダラカの唾液が吸血や人への媒介だけでなく、蚊へのマラリア感染に重要なことを明らかにしました。

マラリアは、マラリア原虫がハマダラカの吸血を介して人から人へ媒介されることで感染します。ハマダラカの唾液腺はマラリア原虫の集積器官として必須な器官です。また、そこに含まれる唾液を分泌することで効率の良い吸血が行われます。したがって唾液腺の機能解析はマラリア対策、さらには蚊が媒介する他の感染症対策につながる重要な課題です。

本研究では、カイコで開発された技術をもとに、唾液腺だけに細胞死を引き起こすような遺伝子組み込んだハマダラカを作製しました。この遺伝子組換えハマダラカでは唾液腺細胞が破壊され、唾液をほとんど持ちません。しかしながら、この蚊は吸血に要する時間が増加するものの吸血が可能でした。そこでネズミマラリア原虫を用いたマラリア感染実験を行ったところ、通常のハマダラカと同等量のマラリア原虫感染血液を吸わせても、中腸ではマラリア原虫が増殖しないことを見出しました。さらにこれらの蚊はマラリアをマウスへ媒介しませんでした。

マラリア原虫は吸血によって蚊の中腸に取り込まれると、受精し増殖を始めます。また、ハマダラカは自分が出した唾液を血液と一緒に飲むことが知られています。今回の結果から、ハマダラカの唾液成分には、中腸でのマラリア原虫の受精あるいは増殖に重要なものが含まれることが明らかになりました。本研究成果は、ハマダラカの唾液成分を標的とした新しいマラリアコントロール法開発に役立つ可能性があります。また、近年、技術開発が進むゲノム編集技術などの利用と合わせることで、マラリアを媒介しないハマダラカの作出が期待されます。

本研究成果は、2016年9月6日にアメリカの学術雑誌「PLoS Pathogens」で公開されました。また、本研究は科学研究費補助金、武田科学振興財団などの助成を受けて行われました。

※農研機構 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構

掲載論文

題名:
Inhibition of malaria infection in transgenic anopheline mosquitoes lacking salivary gland cells

著者:
Daisuke S. Yamamoto(山本大介・自治医科大学医動物学部門), Megumi Sumitani(笠嶋めぐみ・農研機構生物機能利用研究部門), Katsumi Kasashima(笠嶋克巳・自治医科大学機能生化学部門), Hideki Sezutsu(瀬筒秀樹・農研機構生物機能利用研究部門), Hiroyuki Matsuoka(松岡裕之・自治医科大学医動物学部門)

掲載雑誌:
PLoS Pathogens

研究に関するお問合せ先

自治医科大学医学部感染・免疫学講座医動物学部門
助教 山本大介
電話番号:0285-58-7339(内線3141)
E-mail: daisukey@jichi.ac.jp