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研究情報

[医学部] 精子ができないハマダラカの作出に成功

2019年6月13日

研究概要

自治医科大学医動物学部門・山本大介講師、農研機構※ 生物機能利用研究部門 新産業開拓研究領域 カイコ機能改変技術研究ユニット・笠嶋めぐみ上級研究員らの研究グループは、ハマダラカの雄の精子を作る細胞のみを細胞死させることで、精子ができない蚊を作ることに成功しました。この成果は、マラリアを媒介するハマダラカの生殖の仕組みを研究することや、ハマダラカの数を減少させる方法の開発に役立てることができます。

背景

ハマダラカはマラリアを媒介する衛生害虫です。マラリア流行地においてマラリアに感染するリスクを減らすためには、ハマダラカの駆除が大変有効です。近年では、残効性を持つ殺虫剤の家屋内壁への散布や、さらにはピレスロイド系殺虫剤を染み込ませた蚊帳の普及といった取り組みによってマラリア感染リスクが減少してきました。しかしながら、新たな問題として殺虫剤に抵抗性を持つ蚊が増加しているという報告があり、さらなる対策法が求められています。

研究成果

本研究では、まずハマダラカの精子の細胞だけに目的遺伝子を発現できるプロモーター配列(遺伝子の転写を調節する配列)を単離しました。この新たに単離したプロモーターと人工的に細胞死を引き起こすエフェクター遺伝子を組み合わせて、ハマダラカの遺伝子(ゲノム)に組み込みました。この遺伝子組換えハマダラカの雌は正常でしたが、雄では精細胞が破壊されて精子が全くできなくなりました。この雄と野生型(非遺伝子組換え)の雌をかけあわせたところ、雌が産卵した卵からは幼虫が1匹もふ化せず、完全な不妊の雄であることがわかりました。この精子を持たない雄の蚊は、精子だけができず、精液を作る付属腺や交尾行動などには全く異常がありませんでした。雌は交尾すると精液とともに精子を受精のうと呼ばれる器官に貯めて、受精卵を一生産み続けることができます。精液には、交尾した雌が別の雄と交尾するのを妨げる物質や産卵を促進する物質が含まれていることが知られています。精子ができない雄と交尾した野生型の雌は別の雄との交尾を避け、未受精卵を産み続け、一生子孫を残さないことがわかりました。この結果は、雌が別の雄との交尾を避ける仕組みには、精子(卵を受精させること)が必要ないことを示しています。

展望

この不妊雄は、ハマダラカの雄が担っている生殖戦略を解明する研究に役立てることができます。また、本研究の結果は、精巣や付属腺が蚊の生殖戦略に非常に重要であると同時に、不妊化や交尾抑制などの新たな制御剤開発の優れた標的であることを示しています。また、本研究で利用した細胞死を誘導する仕組みは、ハマダラカだけではなくカイコなど他の昆虫でも利用できます。この仕組みは、特定の細胞や組織が持つ役割を調べるために役立つことを示す成果でもあります。

本研究成果は、2019年6月3日にイギリスの学術雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。また、本研究は科学研究費助成事業の助成を受けて行われました。

※農研機構 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構

掲載論文

題名: A synthetic male-specific sterilization system using the mammalian pro-apoptotic factor in a malaria vector mosquito
著者: Daisuke S. Yamamoto(山本大介, 自治医科大学医動物学部門講師), Megumi Sumitani(笠嶋めぐみ, 農研機構生物機能利用研究部門上級研究員), Katsumi Kasashima(笠嶋克巳, 自治医科大学機能生化学部門講師), Hideki Sezutsu(瀬筒秀樹, 農研機構生物機能利用研究部門ユニット長), Hiroyuki Matsuoka(松岡裕之, 自治医科大学医動物学部門客員教授)Hirotomo Kato(加藤大智, 自治医科大学医動物学部門教授)
掲載雑誌: Scientific Reports
DOI: https://doi.org/10.1038/s41598-019-44480-0

供給を受けた研究助成: 科学研究費助成事業(16K18824, 17K08161)

研究に関するお問合せ先

自治医科大学 医学部 感染・免疫学講座 医動物学部門
講師 山本大介
電話番号: 0285-58-7339
E-mail: daisukey@jichi.ac.jp