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研究情報

[医学部] 近視児童の眼軸伸長抑制におけるオルソケラトロジーと0.01%アトロピン点眼液併用の有効性を実証

2020年7月30日

併用治療による近視進行抑制効果を実証 〜近視児童の眼軸伸長抑制におけるオルソケラトロジーと0.01%アトロピン点眼液併用の有効性:2年間のランダム化比較試験〜

自治医科大学附属さいたま医療センター眼科(教授 梯彰弘)の講師 木下望の研究チームは、このたび近視児童の眼軸伸長抑制におけるオルソケラトロジーと0.01%アトロピン点眼液併用の2年間の有効性について世界で初めて明らかにし、2020年7月29日(水)英国時間10:00(日本時間18:00)にScientific Reports誌で掲載が開始されることになりました。この論文は合計80症例を2年間フォローした最終結果であり、本研究はこれをもって完了になります。

Scientific Reports誌に、” Efficacy of combined orthokeratology and 0.01% atropine solution for slowing axial elongation in children with myopia: a 2-year randomised trial.” 「近視児童の眼軸伸長抑制におけるオルソケラトロジーと0.01%アトロピン点眼液併用の有効性:2年間のランダム化比較試験」著者:木下望・今野泰宏・濱田直紀・神田善伸・榛村真智子・蕪城俊克・梯彰弘として掲載されたことをご報告致します。

近年、近視の有病率は世界的に特に東アジア諸国で増加傾向にあり、近視の発症が低年齢化し、社会問題になっています。近視は発症年齢が低い程進行が速く、強度近視になりやすい傾向があります。子供の近視進行の主な原因は眼軸長の伸展であり、強度近視になると眼軸伸長により網膜が引き伸ばされ萎縮することにより、黄斑変性、網脈絡膜萎縮、緑内障、網膜剥離の発症リスクが高まり失明に繋がります。しかしながら、強度近視への進行を予防する治療方法は確立されていません。それでも近年、近視の進行を遅くする方法が報告されるようになりました。近視進行抑制率は1%アトロピン点眼液が80%、0.01%アトロピン点眼液が60%、オルソケラトロジーが43%と報告されています。1%アトロピン点眼液は、現在最も強力な近視進行抑制効果を有すると認められていますが、散瞳、調節障害などの副作用が強く、日常使用は困難で普及しませんでした。その後、0.01%アトロピン点眼液は、上記の副作用がなく日常使用が可能であることが報告されました。しかしながら、0.01%アトロピン点眼液は近視を矯正することができないため、眼鏡、コンタクトレンズ、オルソケラトロジーなどの何らかの近視を矯正する手段が必要である弱点があります。一方、オルソケラトロジーは、就寝中に特殊なハードコンタクトレンズを装用することで角膜形状を矯正し日中裸眼で過ごすことができますが、近視進行抑制効果はアトロピン点眼液よりも劣ると考えられています。そのため我々は、このオルソケラトロジーと0.01%アトロピン点眼液を組み合わせて併用することによりオルソケラトロジー単独治療を上回る近視進行抑制の相加効果があるかを確かめる前向き臨床研究を行いました。

屈折度数が−1.0 〜−6.0ジオプター(D)の近視を有する8 〜12才の男女80症例を対象として、オルソケラトロジーと0.01%アトロピン点眼液の併用治療群(併用群)、オルソケラトロジー単独治療群(単独群)の2群に対象を無作為に振り分け、3ヶ月ごとに眼軸長の測定を行いました。73症例(併用群38例、単独群35例)が、2年間の検査を完了しました。2年間で眼軸長は、併用群が0.29 ± 0.20 mm、単独群が0.40 ± 0.23 mm増加し、統計学的有意差を認めました(P = 0.03, 対応のないt検定)。併用群は単独群に比べ、眼軸長増加量が0.11mm小さく、併用治療はオルソケラトロジー単独治療に比べ眼軸伸長を28%抑制しました。研究登録時の屈折度数と眼軸長増加量の関係を調べたところ、オルソケラトロジー単独治療においては、近視度数が軽い(=近視矯正量が小さい)ほど、眼軸長増加量がより大きい、強い正の相関を認めました(ピアソンの相関係数; r = 0.563, P < 0.001)。併用治療においては、相関を認めませんでした。研究登録時の屈折度数で層別化して、2群間の眼軸長増加量を比較したところ、−1.0 〜−3.0Dの軽度の近視においては、オルソケラトロジー単独治療の眼軸伸長の抑制効果は比較的弱く、0.01%アトロピン点眼液の併用による相加効果が大きいことが確認されました。一方、−3.0 〜−6.0Dの中等度の近視においては、オルソケラトロジー単独治療の眼軸伸長の抑制効果は比較的強く、併用治療と同等であることが確認されました。オルソケラトロジーと0.01%アトロピン点眼液の併用治療は、お互いの弱点を補完しつつ、現時点において近視進行抑制の最も効果的な選択肢になり得ると考えられました。

掲載先

Scientific Reports誌
http://www.nature.com/articles/s41598-020-69710-8このリンクは別ウィンドウで開きます

本件に関するお問合せ先

自治医科大学附属さいたま医療センター 眼科
講師: 木下望
電話: 048-647-2111
E-mail: nozomik@omiya.jichi.ac.jp