自治医科大学附属さいたま医療センター 心臓血管外科

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虚血性心疾患

心臓は全身に血液を送るためのポンプとして働きます。心臓の筋肉はひと時も休まず働いており、1分間に60~90回、全身に血液を送り出しています。この心臓のポンプ機能により血液が全身に回っているので血圧が生じているのです。心臓の筋肉も動くためには栄養や酸素が必要です。心臓の表面には冠状動脈という血管が右1本、左2本走っており、心臓の筋肉に栄養や酸素を送っています。しかし高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙、慢性腎不全などがある状態で年齢を重ねると動脈硬化が進みます。動脈硬化とは上記理由などにより血管に炎症が引き起こされ、血管が硬くなり、肥厚し、さらに狭くなってしまう状態です。冠状動脈が狭くなったり、閉塞すると心臓の筋肉に十分な栄養や酸素が届かなくなります。狭くなった状態が狭心症、閉塞した場合を心筋梗塞と言います。

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心臓の筋肉に酸素や栄養が不足すると、心臓の筋肉が酸素不足となり、胸痛や呼吸苦などを認めるようになります。また心臓の筋肉に十分な酸素や栄養が行かないと、心臓の筋肉は動かなくなり、さらにまったく栄養や酸素は行かなくなると心臓の筋肉は壊死してしまいます。このような状態が続くと、体内の血液の循環が悪くなり、いわゆる心不全になります。心不全になると肝臓や腎臓に負担がかかり腎不全や肝不全を起こすこともあります。また、肺での循環も悪くなり肺に水が溜まってしまいます(肺水腫)。

心臓の動きをよくするためには心臓の筋肉への血流(栄養、酸素)を改善させる必要があります。狭心症や心筋梗塞の患者様は血液をサラサラにするお薬や、心臓の筋肉を保護するようなお薬を土台とし、カテーテル治療や冠動脈バイパス手術が必要になります。

カテーテル治療(Percutaneous Coronary Intervention:PCI)

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冠状動脈の狭窄病変が少ない場合には薬やカテーテルによる治療(PCI)を優先して行います。しかし、冠状動脈の主幹部および複数の冠動脈に狭窄・閉塞が認められた場合やカテーテル治療が困難な場合には冠動脈にバイパス(迂回路)を作る手術治療が勧められます。カテーテル治療とは手首や股の動脈よりSheathという太い点滴様の管をいれ、ここから折りたたまれた風船を挿入し、冠状動脈まで持っていきます。狭くなった所まで風船を進め、そこで風船を膨らませます。狭くなった部分を直接風船で膨らませるのです。必要な場合ステントといった筒状の金網を狭窄部位に留置することにより血管の内腔を確保します。

冠動脈バイパス手術(CABG:Coronary Artery Bypass Grafting)

冠動脈バイパス手術は狭くなっている所には直接手を付けず、病変部位より末梢の冠状動脈に血流の良い新たな血管をつなぐことによって、血流の迂回路を作成し、心臓の筋肉への血流を増やそうという手術です。もともとの冠状動脈からの血流は狭窄部位を勢いよく通り越せませんが、新たな迂回路からの血流により、狭くなった先に十分な血流が得られるようになるのです。迂回路として使用される新たな血管としては、胸骨(胸の中央にある扁平上の骨)の裏側に走っている内胸動脈、胃の淵に沿って走る胃大網動脈、足の表在にある大伏在静脈などがあります。これらの血管はなくなっても体に影響を及ぼすことはありません。
当科の冠動脈バイパス手術は、両側内胸動脈グラフトを使用した術式が標準術式であり、現在80%近い症例に使用しており、糖尿病の方やご高齢の方にもその適応を広げています。

冠動脈バイパス手術によって多くの患者さんは、運動時の呼吸困難や胸痛などの症状が軽減するばかりでなく、将来的に心筋梗塞を起こす危険も軽減することが期待されます。心臓の手術は心臓を一時的に止める事が必要な事が多く、その際には心臓と肺の代わりとなる人工心肺といった装置が必要になります。しかし当科では原則として、人工心肺を使用しないで冠状動脈の血管吻合操作を行う、心拍動下バイパス術(Off Pump CABG)を行っています。つまり心臓を止めずに血管をつなげ迂回路を作りますので、心臓を止めることや人工心肺を使うことによる体への負担が軽減されることが期待されます。

カテーテル治療は循環器内科、冠動脈バイパス手術は心臓血管外科が担当します。当院では日本循環器病学会が定めるガイドラインに基づいた治療を行っております。例え冠状動脈に狭窄があったとしても有意な狭窄ではない場合は内服治療にて経過を見ることもあります。ガイドライン上治療選択が難しい場合は、毎週行われる循環器科と心臓血管外科でのカンファレンスで議論し、患者様1人1人にあった適切な治療を提供させて頂いております。

冠動脈バイパス手術の治療実績

当科における冠動脈バイパス手術の治療実績を下記に示します。近年の高齢化社会の影響によって、冠動脈バイパス手術を受ける患者様の年齢も上昇しています。また、併存疾患が多くなっている傾向も見られます。今後も当院循環器内科、および近隣の循環器科病院の先生方と連携して、安全で予後改善につながる質の高い外科的な冠動脈血行再建手術の実践を目指し、地域の皆様方の健康水準の向上に寄与していきたいと考えております。
自治医科大学附属さいたま医療センターは、近隣地域のみならず遠方からの受け入れも積極的に対応しております。かかりつけの先生より紹介状をいただき、心臓血管外科を受診いただければと思います。

冠動脈バイパス手術件数

連絡先

心臓血管外科外来は毎日行っていますので、お時間に余裕があれば下記予約コールセンターまでご連絡ください。

お急ぎの場合は、心臓血管外科担当医師と直接相談いただければと思います。