自治医科大学附属さいたま医療センター 心臓血管外科

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外科専門研修プログラム

1.自治医科大学附属さいたま医療センター外科専門研修プログラムについて

外科専門研修プログラムの目的と使命は以下の5点です。
1)専攻医が医師として必要な基本的診療能力を習得すること
2)専攻医が外科領域の専門的診療能力を習得すること
3)上記に関する知識・技能・態度と高い倫理性を備えることにより、患者に信頼され、 標準的かつ全人的な医療を提供でき、プロフェッショナルとしての誇りを持ち、患者への責任を果たせる外科専門医となること
4)外科専門医の育成を通して国民の健康・福祉および地域医療に貢献すること
5)外科領域全般からサブスペシャルティ領域(消化器外科、心臓血管外科、呼吸器外科、小児外科)またはそれに準じた外科関連領域(乳腺や内分泌領域)の専門研修を行い、それぞれの領域の専門医取得へと連動すること

2.研修プログラムの施設群

自治医科大学附属さいたま医療センターと連携施設により専門研修施設群を構成します。本専門研修施設群では50名の専門研修指導医が専攻医を指導します。

3.専攻医の受け入れ数について

本専門研修施設群の3年間NCD登録数は16308例で、専門研修指導医は50名のため、本年度の募集専攻医数は10人(3年間の合計募集専攻医数は 30人)です。

4. 外科専門研修について

1)外科専門医は初期臨床研修修了後、3年(以上)の専門研修で育成されます。
3年間の専門研修期間中、基幹施設で1年~2年、連携施設で1年~2年の研修を行います。専門研修の3年間で、医師に求められる基本的診療能力・態度(コアコンピテンシー)と外科専門研修プログラム整備基準にもとづいた外科専門医に求められる知識・技術の習得目標を年次設定し、その年度の終わりに達成度を評価して、基本から応用へ、さらに専門医としての実力をつけていくように配慮します。具体的な評価方法は後の項目で示します。
研修プログラムの修了判定には規定の経験症例数(経験症例350例以上、術者120例以上)を必要とします。初期臨床研修期間中に外科専門研修基幹施設ないし連携施設で経験した症例(NCDに登録されていることが必須)は、本研修プログラム統括責任者が承認した症例に限定して、手術症例数に加算します。
専攻医の研修は、毎年の達成目標と達成度を評価しながら進められます。以下に年次毎の研修内容・習得目標の目安を示します。
専門研修1年目では、疾患の診断と病態の評価ができ、外科治療の適応についての判断を養い,基本的手術手技に習熟することを目標とします。患者や受け持ちチームのメンバー、コメディカルメンバーとの良好なコミュニケーションを保つことの重要性を理解し実践します。専攻医は、受け持ち患者の術前術後管理を行い手術へ参加することによりさまざまな症例への経験や知識、技能の習得を図ります。術前術後カンファレンス、チームあるいは病棟カンファレンスに参加すること、また、それらカンファレンスで受け持ち患者の発表を行うことで症例の経験を重ねます。また、定期的に行われる症例検討会(合併症カンファレンスなど)、抄読会、院内主催の各種セミナーに参加し、自ら進んで専門知識・技能の習得を図ります。 専門研修2年目では、基本的診療能力の向上に加えて、外科基本的知識・技能を実際の診断・治療へ応用する力量を養うことを目標とします。専攻医は、チーム医療において責任を持って診療にあたります。さらに、専攻医は、学会・研究会への参加や発表などを通して専門知識・技能の習得を図ります。1年目同様症例検討会、抄読会、院内主催の各種セミナーに参加し、専門知識・技能の習得・向上を図ります。
専門研修3年目では、チーム医療において診療の中核をなす立場として、後進の指導にも参画し、リーダーシップを発揮して、外科の実践的知識・技能の習得により様々な外科疾患へ対応する力量を養うことを目標とします。症例検討会、抄読会、院内主催の各種セミナーには専攻医のリーダー的立場として参加し、専門知識・技能の更なる習得・向上を図ります。カリキュラムを習得したと認められる専攻医には、積極的にサブスペシャルティ領域専門医取得に向けた技能研修へ進みます。
(具体例)
下図に、自治医科大学附属さいたま医療センター外科研修プログラムの例を示します。サブスペシャルティ領域(消化器外科、心臓血管外科、呼吸器外科、小児外科)専門医取得への移行を考慮したサブスペシャルティ領域専門医連動コースプログラムを選択することも可能です(後の項で示します)。外科研修プログラムでは専門研修1年目は基幹施設、専門研修2年目は連携施設A、専門研修3年目は連携施設Bでの研修です。専攻医の人数に応じて基幹施設や連携施設A、Bの研修順序や施設を調節し経験症例数に偏りのないように配慮します。サブスペシャルティ領域専門医取得を目指す場合、各サブスペシャルティ領域の研修を集中して行うサブスペシャルティ領域専門医連動コースを選択することも可能です。

連携施設 A.B:
自治医科大学附属病院、東北大学病院、秩父市立病院、横須賀市立うわまち病院、練馬光が丘病院、東京北医療センター、医療法人博仁会共済病院、彩の国東大宮メディカルセンター、仙台オープン病院、社会医療法人壮幸会 行田総合病院、かみいち総合病院、菅間病院、白河厚生総合病院、さいたま赤十字病院、春日部中央総合病院、横浜市立みなと赤十字病院、さいたま市立病院、さいたま北部医療センター、東京新宿メディカルセンター、埼玉県央病院

自治医科大学附属さいたま医療センター外科研修プログラムでの、3年間の施設群ローテートにおける研修内容の例と、予想される経験症例数を下記に示します。専攻医それぞれに対して、内容と経験症例数に偏りや不公平がないように十分配慮します。自治医科大学附属さいたま医療センター外科研修プログラムの研修期間は3年間としていますが、習得が不十分な場合は習得できるまで期間を延長することになります。一方で、カリキュラムの技能を習得したと認められた専攻医には、積極的にサブスペシャルティ領域専門医取得に向けた技能教育を開始し、また大学院進学希望者には、臨床研修と平行して研究を開始することができます(大学院連動コース)。

専門研修1年目
基幹病院に所属し研修を行います。 一般外科/麻酔/救急/消化器外科/心臓・血管外科/呼吸器外科/小児外科/乳腺・内分泌 経験症例150例以上 (術者30例以上)
専門研修2年目
連携施設群Aのうちいずれかに所属し研修を行います。 一般外科/麻酔/救急/消化器外科/心臓・血管外科/呼吸器外科/小児外科/乳腺・内分泌 外科 経験症例150例以上/1年 (術者60例以上/1年) ・専門研修3年目 連携施設群Bのうちいずれかに所属し研修を行います。 一般外科/麻酔/救急/消化器外科/心臓・血管外科/呼吸器外科/小児外科/乳腺・内分泌 外科経験症例150例以上/1年 (術者60例以上/1年)

サブスペシャルティ領域などの専門医連動コース
自治医科大学附属さいたま医療センターでサブスペシャルティ領域(消化器外科,心臓・血管外科,呼吸器外科,小児外科)または外科関連領域(乳腺など)と連動した専門研修を開始する専門医連動コースを選択することも可能です。

連携施設 A:自治医科大学附属病院、東北大学病院、秩父市立病院、横須賀市立うわまち病院、練馬光が丘病院、東京北医療センター、医療法人博仁会共済病院、彩の国東大宮メディカルセンター、仙台オープン病院、社会医療法人壮幸会 行田総合病院、かみいち総合病院、菅間病院、白河厚生総合病院、さいたま赤十字病院、春日部中央総合病院、横浜市立みなと赤十字病院、さいたま市立病院、さいたま北部医療センター、東京新宿メディカルセンター、埼玉県央病院

自治医科大学附属病院、東北大学病院、秩父市立病院、横須賀市立うわまち病院、練馬光が丘病院、東京北医療センター、医療法人博仁会共済病院、彩の国東大宮メディカルセンター、仙台オープン病院、社会医療法人壮幸会 行田総合病院、かみいち総合病院、菅間病院、白河厚生総合病院、さいたま赤十字病院、春日部中央総合病院、横浜市立みなと赤十字病院、さいたま市立病院、さいたま北部医療センター、東京新宿メディカルセンター、埼玉県央病院

上記の各種コースでも、専攻医それぞれに対して、内容と経験症例数に偏りや不公平がないように十分配慮します。

3)研修の週間計画および年間計画

5.専攻医の到達目標(習得すべき知識・技能・態度など)(別紙「専攻医研修マニュアル」参照)

1)習得すべき知識:外科診療に必要な下記の基礎的知識・病態を習熟し,臨床応用できるようにする。
(1) 手術や外科診療に必要な局所解剖
(2) 外科病理学
(3) 腫瘍学:発癌・転移メカニズムを理解し病期について述べることができる。手術、化学療法および放射線療法を含む集学的治療の適応を述べることができる。各種治療(手術、化学療法、放射線療法)の有害事象について理解している。
(4) 病態生理:周術期管理や集中治療などに必要な病態生理を理解し、手術侵襲の大きさと手術のリスクを評価し、判断することができる。
(5) 輸液・輸血:周術期・外傷患者に対する輸液管理や輸血の適応について述べることができる。
(6) 血液凝固と線溶現象:出血傾向の評価、血栓塞栓症の予防、それらの診断および治療の方法について述べることができる。
(7) 栄養・代謝学:病態や疾患に応じた適切な経腸・経静脈栄養剤の投与や、栄養管理について述べることができる。外傷や手術などの侵襲に対する生体反応と代謝の変化を理解できる。
(8) 感染症:抗菌薬を適切に選択することができる。術後発熱の鑑別診断ができる。
(9) 免疫学:アナフィラキシーショックや移植片対宿主病(Graft versus host disease) の病態を理解し、予防・診断および治療方法について述べることができる。
(10)創傷治癒:創傷治癒の基本を理解し、適切な創傷処置を実践することができる。
(11)周術期の管理:病態別の検査計画や治療計画を立てることができる。
(12)麻酔科学:各種麻酔の原理を述べることができる。気管挿管による全身麻酔の原理を述べることができる。
(13)集中治療:集中治療について、基本的な人工呼吸管理について述べることができる。播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation) と多臓器不全(multiple organ failure)の病態を理解し、適切な診断と治療を行うことができる。
(14)救命・救急医療:蘇生術について理解し、実践することができる。ショックを理解し、初療を実践することができる。重度外傷、重度熱傷の病態を理解し、初療を実践することができる。

2)技能:外科診療に必要な検査・処置・麻酔手技に習熟し,それらの臨床応用ができるようにする。
(1)下記の検査手技や検査の適応決定、読影、診断ができる。
超音波検査、エックス線単純撮影、CT、MRI、RI、上・下部消化管造影、血管造影、内視鏡検査(上・下部消化管内視鏡検査)、気管支内視鏡検査、術中胆道鏡検査、ERCP、心臓カテーテル、呼吸機能検査、心電図、心エコー検査、乳腺検査(FNAC・CNB)
(2) 周術期管理ができる。
術後疼痛管理、周術期の輸液、輸血管理、出血傾向への対応、血栓塞栓症の予防と治療、栄養管理、抗菌薬使用、デブリードマン、切開およびドレナージ。
(3)麻酔手技を安全に行うことができる。
局所・浸潤麻酔、脊椎麻酔、硬膜外麻酔、気管挿管による全身麻酔
(4)外傷の診断と治療を行うことができる。
(5)以下の手技を含む外科的クリティカルケアができる。
心肺蘇生法:一次救命処置(Basic Life Support)、二次救命処置(Advanced Life Support) 、動脈穿刺、中心静脈カテーテルの挿入とそれによる循環管理、人工呼吸器による呼吸管理、気道管理、熱傷初期輸液療法、気管切開、輪状甲状軟骨切開、心嚢穿刺、胸腔ドレナージ、腹腔ドレナージ、ショックの診断と原因別治療(輸液、輸血、成分輸血、薬物療法を含む)、播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation) 、多臓器不全(multiple organ failure)、全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome) 、代償性抗炎症性反応症候群(compensatory anti-inflammatory response syndrome) の診断と治療、化学療法(抗腫瘍薬、分子標的薬など)と放射線療法の有害事象に対処することができる。 (6) 外科系サブスペシャルティまたはそれに準ずる外科関連領域の分野の初期治療ができ、かつ、専門医への転送の必要性を判断することができる。
(7)各領域の主たる手術内容を経験習得する。
一般外科、消化器外科領域
CVポート造設術、鼠径ヘルニア根治術、痔疾患手術、開腹リンパ節生検、虫垂切除術、人工肛門造設術・閉鎖術、イレウス解除術、消化管穿孔・腹膜炎に対する手術、胆嚢摘出術、総胆管切開切石術、胸筋温存乳房切除術、乳房部分切除術、甲状腺葉切除、副腎摘出術、腹壁瘢痕ヘルニア根治術、小腸部分切除術、胃空腸吻合術、幽門側胃切除術、胃全摘術、食道手術、結腸切除術、直腸前方切除術、腹会陰式直腸切断術、大腸全摘術、脾摘出術、胆管空腸吻合術、膵体尾部切除術、肝切除術、膵頭十二指腸切除術など
心臓血管外科領域
下肢静脈瘤手術、透析用シャント造設手術、急性動脈閉塞症に対する血栓・塞栓除去術、大伏在静脈採取、大腿動脈の露出、開胸・閉胸操作、動脈カニューレ・静脈カニューレの挿入、抜去。下肢動脈再建術、腹部大動脈瘤手術、心房中隔欠損症、単純な弁置換術、
複雑な弁膜症や胸部大動脈瘤、冠動脈バイパス術、急性大動脈解離手術
呼吸器外科領域
開胸・閉胸操作、気管切開術、胸腔鏡下肺生検、胸腔鏡下縦隔リンパ節生検、胸腔鏡下胸膜生検、肺部分切除術(楔状切除術)、肺縫縮術、肺区域切除術、肺葉切除術、肺全摘術、縦隔腫瘍摘出術、拡大胸腺摘出術、胸壁腫瘍摘出術、胸郭成形術、胸腔鏡下醸膿胸膜・胸膜胼胝切除術、肺剥皮術、胸膜肺全摘術、横隔膜縫合術、気管形成術、気管支形成術など
小児外科領域
CVC挿入(ポートなど含む)術、鼠径ヘルニア根治術、陰嚢水瘤根治手術、臍ヘルニア修復術、白線ヘルニア修復術、精巣固定術、精巣摘除術、卵巣嚢胞切除術、正中頚嚢胞手術、副耳手術、耳前瘻摘出術、腸間膜嚢胞摘出術、リンパ節生検、虫垂切除術、腸重積観血的整復術、人工肛門造設術・閉鎖術、腸間膜嚢胞摘出術、イレウス解除術、消化管穿孔・腹膜炎に対する手術、小腸切除術、漏斗胸手術、胃食道逆流防止術、直腸肛門形成術、ヒルシュスプルング病手術、大腸全摘術、脾摘出術、胆管空腸吻合術、膀胱尿管新吻合、腎盂形成、など

3)学問的姿勢、倫理性、社会性など:外科学の進歩に合わせた生涯学習の基本を習得し実行できる。 外科診療を行う上で、医の倫理や医療安全に基づいたプロフェッショナルとして適切な態度と習慣を身に付ける。
(1)カンファレンス、症例検討会、抄読会、院内主催の各種セミナー、学術集会に出席し積極的に討論に参加することができる。日本外科学会定期学術集会に1回以上参加する。
(2) 専門の学術出版物や研究発表に接し、批判的吟味をすることができる。
(3) 指定の学術集会や学術出版物に、筆頭者として症例報告や臨床研究の成果を発表することができる。
(4) 学術研究の目的で、または症例の直面している問題を解決するため、資料の収集や文献検索を独力で行うことができる。
(5)医療行為に関する法律を理解し遵守できる。
(6)患者およびその家族と良好な信頼関係を築くことができるよう、コミュニケーション能力と協調による連携能力を身につける。
(7)外科診療における適切なインフォームド・コンセントを得ることができる。
(8)関連する医療従事者と協調・協力してチーム医療を実践することができる。
(9)ターミナルケアを適切に行うことができる。
(10)インシデント・アクシデントが生じた際、それを報告し、的確に処置ができ、患者に説明することができる。
(11)初期臨床研修医や学生などに、外科診療の指導をすることができる。
(12)すべての医療行為、患者に行った説明など治療の経過を書面化し、管理することができる。
(13)診断書・証明書などの書類を作成、管理することができる。

6.各種カンファレンスなどによる知識・技能の習得

・基幹施設および連携施設それぞれにおいて、医師および看護スタッフによる治療および管理方針の症例検討会を定期的に行い、専攻医は積極的に意見を述べ、同僚の意見を聴くことにより、具体的な治療と管理の論理を学びます。
・放射線診断・病理合同カンファレンス:手術症例を中心に放射線診断部とともに術前画像診断を検討し、病理部とともに切除検体の病理診断と対比いたします。
・Cancer Board:複数の臓器に広がる進行・再発例や、重症の内科合併症を有する症例、非常に稀で標準治療がない症例などの治療方針決定について、関連診療科、病理部、放射線科、薬剤師、緩和、看護スタッフなどによる合同カンファレンスを行います。
・基幹施設と連携施設による症例検討会:各施設の専攻医や若手専門医による研修発表会を毎年1月に大学内の施設を用いて行い、発表内容、スライド資料の良否、発表態度などについて指導的立場の医師や同僚・後輩から質問を受けて討論を行います。
・抄読会や勉強会を実施します。専攻医は最新のガイドラインを参照するとともに併設された図書館やインターネットなどによる情報検索を行います。
・ドライラボを用いたトレーニング設備や教育DVDなどを用いて積極的に手術手技、鏡視下手術手技を学びます。
・日本外科学会の学術集会(特に教育プログラム)、e-learning、その他各種研修セミナーや各病院内で実施されるこれらの講習会などで以下の事柄を学びます。標準的医療および今後期待される先進的医療、医療倫理、医療安全、災害対策、救命措置、栄養管理、院内感染対策。

7.学問的姿勢について

専攻医は、医学・医療の進歩に遅れることなく、常に研鑽、自己学習することが求められます。患者の日常的診療から浮かび上がるクリニカルクエスチョンを日々の学習により解決し、今日のエビデンスでは解決し得ない問題は臨床研究に自ら参加、もしくは企画する事で解決しようとする姿勢を身につけます。学会には積極的に参加し、基礎的あるいは臨床的研究成果を発表します。さらにえられた成果は論文として発表し、公に広めるとともに批評を受ける姿勢を身につけます。 研修期間中に以下の要件を満たす必要があります。
日本外科学会定期学術集会に1回以上の参加と発表
指定の学術集会や学術出版物に,筆頭者として症例報告や臨床研究の結果を発表

8.医師に必要なコアコンピテンシー、倫理性、社会性などについて

医師として求められるコアコンピテンシーには態度、倫理性、社会性などが含まれています。内容を具体的に示します。
1) 医師としての責務を自律的に果たし信頼されること(プロフェッショナリズム)。医療専門家である医師と患者を含む社会との契約を十分に理解し、患者、家族から信頼される知識・技能および態度を身につけます。
2) 患者中心の医療を実践し、医の倫理・医療安全に配慮すること
患者の社会的・遺伝学的背景もふまえ患者ごとに的確な医療を目指します。医療安全の重要性を理解し事故防止、事故後の対応をマニュアルに沿って実践します。
3) 臨床の現場から学ぶ態度を習得すること
臨床の現場から学び続けることの重要性を認識し、その方法を身につけます。
4) チーム医療の一員として行動すること
チーム医療の必要性を理解しチームのリーダーとして活動します。的確なコンサルテーションを実践します。他のメディカルスタッフと協調して診療にあたります。
5) 後輩医師に教育・指導を行うこと
自らの診療技術、態度が後輩の模範となり、また形成的指導が実践できるように学生や初期研修医および後輩専攻医を指導医とともに受け持ち患者を担当し、チーム医療の一員として後輩医師の教育・指導を担います。
6) 保健医療や主たる医療法規を理解し、遵守すること
健康保険制度を理解し保健医療をメディカルスタッフと協調し実践します。医師法・医療法、健康保険法、国民健康保険法、老人保健法を理解します。診断書、証明書が記載できます。

9.施設群による研修プログラムおよび地域医療についての考え方

1)施設群による研修
本研修プログラムでは自治医科大学附属さいたま医療センターを基幹施設とし、地域の連携施設とともに病院施設群を構成しています。地域の連携施設には、自治医科大学の卒業生の出身県の勤務施設を含みますので複数県での病院施設群の構成となっています。外科専攻医はこれらの施設群をローテートすることにより、多彩で偏りのない充実した研修を行うことが可能となります。これは専攻医が専門医取得に必要な経験を積むことに大変有効です。大学だけの研修では稀な疾患や治療困難例が中心となりcommon diseasesの経験が不十分となります。この点、地域の連携病院で多彩な症例を多数経験することで医師としての基本的な力を獲得します。このような理由から施設群内の複数の施設で研修を行うことが非常に大切です。特に本研修プログラムは、地域医療を担う施設での研修を可能にし、地域医療に十分対応した研修内容を含んでいます。自治医科大学附属さいたま医療センター外科研修プログラムのどのコースに進んでも指導内容や経験症例数に不公平が無いように十分配慮します。施設群における研修の順序、期間等については、専攻医数や個々の専攻医の希望と研修進捗状況、各病院の状況、地域の医療体制を勘案して、自治医科大学附属さいたま医療センター外科専門研修プログラム管理委員会が決定します。
2)地域医療の経験
地域の連携病院では責任を持って多くの症例を経験することができます。また、地域医療における病診連携、地域包括ケア、在宅医療などの意義について学ぶことができます。以下に本研修プログラムにおける地域医療についてまとめます。 本研修プログラムの連携施設には、その地域における地域医療の拠点となっている施設(地域中核病院、地域中小病院)が入っています。特に関東、東北、中部地方の地域医療を担う施設での研修を可能にし、地域医療に十分対応した研修内容を含んでいます。そのため、連携施設での研修中に地域医療(過疎地域も含む)の研修が可能です。地域の医療資源や救急体制について把握し、地域の特性に応じた病診連携、病診連携のあり方について理解して実践します。消化器がん患者の緩和ケアなど、ADLの低下した患者に対して、在宅医療や緩和ケア専門施設などを活用した医療を立案します。

10.専門研修の評価について

専門研修中の専攻医と指導医の相互評価は施設群による研修とともに専門研修プログラムの根幹となるもので研修の1年目、2年目、3年目のそれぞれに、コアコンピテンシーと外科専門医に求められる知識・技能の習得目標を設定し、その年度の終わりに達成度を評価します。このことにより、基本から応用へ、さらに専門医として独立して実践できるまで着実に実力をつけていくように配慮しています。

11.専門研修プログラム管理委員会について

基幹施設である自治医科大学附属さいたま医療センターには、専門研修プログラム管理委員会と、専門研修プログラム統括責任者、副統括責任者を置きます。連携施設群には、専門研修プログラム連携施設担当者と専門研修プログラム委員会が置かれます。自治医科大学附属さいたま医療センター外科専門研修プログラム管理委員会は、専門研修プログラム統括責任者(委員長)、副統括責任者(副委員長)、事務局代表者、外科の4つの専門分野(消化器外科、心臓血管外科、呼吸器外科、小児外科)の研修指導責任者、および連携施設担当委員などで構成されます。研修プログラムの改善へ向けての会議には専門医取得直後の若手医師代表が加わります。専門研修プログラム管理委員会は、専攻医および専門研修プログラム全般の管理と、専門研修プログラムの継続的改良を行います。

12.専攻医の就業環境について

1)専門研修基幹施設および連携施設の外科責任者は専攻医の労働環境改善に努めます。
2)専門研修プログラム統括責任者または専門研修指導医は専攻医のメンタルヘルスに配慮します。
3)専攻医の勤務時間,当直,給与,休日は労働基準法に準じて各専門研修基幹施設,各専門研修連携施設の施設規定に従います。

13.修了判定について

年間の研修期間における年次毎の評価表および3年間の実地経験目録にもとづいて、知識・技能・態度が専門医試験を受けるのにふさわしいものであるかどうか、症例経験数が日本専門医機構の外科領域研修委員会が要求する内容を満たしているものであるかどうかを、専門医認定申請年(3年目あるいはそれ以後)の3月末に研修プログラム統括責任者または研修連携施設担当者が研修プログラム管理委員会において評価し、研修プログラム統括責任者が修了の判定をします。

14.外科研修の休止・中断、プログラム移動、プログラム外研修の条件

(1) 専門研修における休止期間は最長120日とする。1年40日の換算とし,プログラムの研修期間が4年のものは160日とする。
(2) 妊娠・出産・育児,傷病その他の正当な理由による休止期間が120日を超える場合,臨床研修終了時に未修了扱いとする。原則として,引き続き同一の専門研修プログラムで研修を行い,120日を超えた休止日数分以上の日数の研修を行う。
(3) 大学院(研究専任)または留学などによる研究専念期間が6か月を超える場合,臨床研修終了時に未修了扱いとする。ただし,大学院(研究専任)または留学を取り入れたプログラムの場合例外規定とする。
(4) 専門研修プログラムの移動は原則認めない。(ただし,結婚、出産、傷病、親族の介護、その他正当な理由、などで同一プログラムでの専門研修継続が困難となった場合で、専攻医からの申し出があり、外科研修委員会の承認があれば他の外科専門研修プログラムに移動できる。)
(5) 症例経験基準、手術経験基準を満たしていない場合にも未修了として取扱い、原則として引き続き同一の専門研修プログラムで当該専攻医の研修を行い、不足する経験基準以上の研修を行うことが必要である。

15.専門研修実績記録システム、マニュアル等について

研修実績および評価の記録 外科学会のホームページにある書式(専攻医研修マニュアル、専攻医研修手帳,専攻医研修実績記録,専攻医指導評価記録)を用いて、専攻医は研修実績(NCD登録)を記載し、指導医による形成的評価、フィードバックを受けます。総括的評価は外科専門研修プログラム整備基準に沿って、少なくとも年1回行います。
自治医科大学附属さいたま医療センター外科にて、専攻医の研修履歴(研修施設、期間、担当した専門研修指導医)、研修実績、研修評価を保管します。さらに専攻医による専門研修施設および専門研修プログラムに対する評価も保管します。 プログラム運用マニュアルは以下の専攻医研修マニュアルと指導者マニュアルを用います。
◉専攻医研修マニュアル
別紙「専攻医研修マニュアル」参照。
◉専攻医研修手帳
別紙「専攻医研修手帳
に研修実績を記録し、手術症例はNCDに登録します。
◉指導者マニュアル
別紙「指導医マニュアル」参照。
◉専攻医研修実績記録フォーマット
「専攻医研修実績記録」に研修実績を記録し、手術症例はNCDに登録します。
◉指導医による指導とフィードバックの記録
「専攻医研修実績記録」に指導医による形成的評価を記録します。

16.専攻医の採用と修了

採用方法
自治医科大学附属さいたま医療センター外科専門研修プログラム管理委員会は、毎年7月から説明会等を行い、外科専攻医を募集します。プログラムへの応募者は、9月30日までに研修プログラム責任者宛に所定の形式の『自治医科大学附属さいたま医療センター外科専門研修プログラム応募申請書』を提出してください。
申請書は(1) 自治医科大学附属さいたま医療センターのwebsite (http:// www.jichi.ac.jp/center/index.html)よりダウンロード、
(2)電話で問い合わせ(048-647-2111)、
(3) e-mailで問い合わせ(担当 稲原:s-gakumu@jichi.ac.jp)、のいずれの方法でも入手可能です。原則として10月中に書類選考および面接を行い、採否を決定して本人に文書で通知します。応募者および選考結果については12月の自治医科大学附属さいたま医療センター外科専門研修プログラム管理委員会において報告します。

研修開始届け
研修を開始した専攻医は、各年度の5月31日までに以下の専攻医氏名報告書を、日本外科学会事務局および、外科研修委員会に提出します。
・専攻医の氏名と医籍登録番号、日本外科学会会員番号、専攻医の卒業年度
・専攻医の履歴書(様式15-3号)
・専攻医の初期研修修了証
修了要件
日本専門医機構が認定した外科専門研修施設群において通算3年(以上)の臨床研修をおこない外科専門研修プログラムの一般目標,到達(経験)目標を修得または経験した者