特定臨床研究に関する用語の定義
実施計画
臨床研究の詳細な内容や手順等が記載されている研究計画書の要点及び管理に必要な情報が記載されたもの。研究責任医師が作成し、認定臨床研究審査委員会に審査を依頼し、厚生労働大臣に提出する、臨床研究の実施に関する計画
研究責任医師
臨床研究法に規定する臨床研究を実施する者をいい、実施医療機関において臨床研究に係る業務を統括する医師または歯科医師
研究代表医師
多施設共同研究を実施する場合に、複数の実施医療機関の研究責任医師を代表する研究責任医師
研究分担医師
実施医療機関において、研究責任医師の指導の下に臨床研究に係る業務を分担する医師または歯科医師
実施医療機関
臨床研究が実施される医療機関
実施医療機関の管理者
本学の場合は、自治医科大学附属病院病院長(ただし、さいたま医療センターで実施する場合には、さいたま医療センター長を指す。)
認定臨床研究審査委員会
厚生労働大臣の認定を受けた、臨床研究に関する専門的な知識経験を有する者により構成される委員会で、研究責任医師が以下について意見を求めた場合、必要な審査意見業務を行う。
ア | 実施計画による臨床研究の実施の適否及び、実施に当たって留意すべき事項 |
イ | 研究責任医師が発生を知った疾病等の発生時、不具合の発生時、不適合であって特に重大なものが判明した場合、 臨床研究に用いる医薬品等の品質が不良である等の情報を得たとき、品質が不良である等の理由により、 医薬品等の回収が必要と判断しとき |
ウ | 実施状況についての定期報告 |
エ | 主要評価報告書又は総括報告書を作成した場合 |
その他、委員会が必要あると認める場合も審査意見業務を行う。 |
技術専門員
認定臨床研究審査委員会が、実施計画の審査を行うに当たって(新規審査以外は必要に応じ)意見を聴く、審査意見業務の対象となる疾患領域の専門家及び毒性学、薬力学、薬物動態学等の専門的な知識を有する臨床薬理学の専門家、生物統計家その他の臨床研究の特色に応じた専門家。技術専門員は、認定臨床研究審査委員会委員が兼任してもよいが、評価書を発行した臨床研究に関する審査意見業務に参加しない。
評価書
認定臨床研究審査委員会が実施計画の審査を行うに当たって確認する、技術専門員が作成する文書
多施設共同研究
研究計画書に基づき複数の実施医療機関において実施される臨床研究
研究対象者
次に挙げるいずれかに該当する者(死者を含む)をいう。
① 研究を実施される者(研究を実施されることを求められた者を含む)
② 研究に用いられることとなる既存資料・情報を取得された者
立会人
臨床研究の実施から独立し、臨床研究に関与する者から不当に影響を受けない者で、被験者又は代諾者が同意文書等を読むことができない場合にインフォームド・コンセントの過程に立ち会う者。
代諾者
対象者の配偶者、父母、兄弟姉妹、子・孫、祖父母、同居の親族、近親者に準ずる者、親権者、後見人、代理人(代理権を付与された任意後見人を含む)
:対象者の状況により、意思、利益を代弁できると考えられる者
疾病等
特定臨床研究の実施に起因するものと疑われる疾病、障害若しくは死亡または感染症。臨床研究との因果関係が否定できない有害事象。臨床検査値の異常や諸症状を含む。
モニタリング
臨床研究に対する信頼性の確保、対象者の保護の観点から臨床研究が適正に行われていることを確保するため、臨床研究の進捗状況並びに臨床研究が規則及び研究計画書に従って行われているか、研究責任医師が特定の者を指定して行わせる調査(多施設共同研究における中央モニタリングを含む)
監査
臨床研究に対する信頼性の確保及び対象者の保護の観点から臨床研究により収集された資料の信頼性を確保するため、臨床研究が規則及び研究計画書に従って行われたかどうかについて、研究責任医師が特定の者を指定して行わせる調査
原資料等
対象者に対する医薬品等の投与及び診療により得られた臨床所見、観察その他の活動に関する元の記録やデータ(例:診療記録、検査記録、臨床研究の対象者の服薬日誌、投与記録、エックス線写真)
利益相反管理基準
研究責任医師が、医薬品等製造販売業者等の関与についての適切な取扱いを定める基準
利益相反管理計画
研究責任医師が、医薬品等製造販売業者等の関与についての適切な取扱いの方法を具体的に定める計画
主要評価項目報告書
研究責任医師が、研究計画書につき収集の結果等を取りまとめた概要
総括報告書
研究責任医師が、臨床研究の結果等を取りまとめた文書
jRCT
厚生労働省が整備するデータベース、Japan Registry of Clinical Trials(規則第24条第1項)
研究開始日
jRCTに、臨床研究を実施するに当たり世界保健機関が公表を求める事項等その他必要な事項等を公表した日
研究終了日
jRCTに、総括報告書の概要を公表した日
個人情報等
個人に関する情報で、情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別できるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別できることとなるものを含む)。死者に関するものを含む
本人等
本人(個人情報によって識別される特定の個人)またはその配偶者、親権者、後見人その他これらに準ずる者
試料等
人体から取得された試料及び臨床研究に用いる情報
既存試料等
研究計画書が作成されるまでの間に存在する試料等または研究計画書が作成された後に臨床研究の目的以外の目的で取得された試料等で、臨床研究に利用するもの
既存試料等が臨床研究に利用される者等
既存試料等が臨床研究に利用される者またはその配偶者、親権者、後見人その他これらに準ずる者
保有個人情報
研究責任医師及び実施医療機関が保有する個人情報
個人情報等の削除
個人情報等の全部/一部の削除、個人情報等の全部/一部を特定の個人と関わりのない情報に置き換えることを含む
不適合
臨床研究が規則または研究計画書に適合していない状態(規則、研究計画書、手順書等の不遵守及び研究データの改ざん、ねつ造等)
重大な不適合
対象者の人権、安全性、研究の進捗、結果の信頼性に影響を及ぼすもの(例:選択・除外基準、中止基準、併用禁止療法等の不遵守)
※対象者の緊急の危険を回避するためその他医療上やむを得ない理由により研究計画書に従わなかったものは含まない
医薬品医療機器等法
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)
人を対象とする医学系研究
人を対象として、傷病の原因及び傷病の予防方法、医療における診断方法及び治療方法の改善又は有効性の検証を通じて、国民の健康の保持増進又は患者の生活の質の向上を目的として実施される活動をいう。この指針において単に「研究」という場合、人を対象とする医学系研究のことをいう。
侵襲
研究目的で行われる、穿刺、切開、薬物投与、放射線照射、心的外傷に触れる質問等によって、研究対象者の身体又は精神に傷害又は負担が生じることをいう。
侵襲のうち、研究対象者の身体及び精神に生じる傷害及び負担が小さいものを「軽微な侵襲」という。
介入
研究目的で、人の健康に関する様々な事象に影響を与える要因( 健康の保持増進につながる行動、医療における傷病の予防、診断又は治療のための投薬、検査等を含む。) の有無又は程度を制御する行為( 通常の診療を超える医療行為であって、研究目的で実施するものを含む。) をいう。
人体から取得された試料
血液、体液、組織、細胞、排泄物及びこれらから抽出したD N A 等の人の体の一部であって研究に用いられるもの( 死者に係るものを含む。) をいう。
研究に用いられる情報
研究対象者の診断及び治療を通じて得られた傷病名、投薬内容、検査又は測定の結果等、人の健康に関する情報その他の情報であって研究に用いられるもの( 死者に係るものを含む。)をいう。
試料・情報
人体から取得された試料及び研究に用いられる情報をいう。
既存試料・情報
試料・情報のうち、次に掲げるいずれかに該当するものをいう。
① | 研究計画が作成されるまでに既に存在する試料・情報 |
② | 研究計画の作成以降に取得された試料・情報であって、取得の時点においては当該研究計画の研究に用いられることを目的としていなかったもの |
研究対象者
次に掲げるいずれかに該当する者( 死者を含む。) をいう。
① 研究を実施される者( 研究を実施されることを求められた者を含む。)
② 研究に用いられることとなる既存試料・情報を取得された者
研究機関
研究を実施する法人、行政機関及び個人事業主をいう( 試料・情報の保管、統計処理その他の研究に関する業務の一部についてのみ委託を受けて行う場合を除く。) 。
共同研究機関
研究計画に基づいて研究を共同して実施する研究機関をいい、当該研究のために研究対象者から新たに試料・情報を取得し、他の研究機関に提供を行う機関を含む。
試料・情報の収集・分譲を行う機関
研究機関のうち、試料・情報について研究対象者から取得し、又は他の機関から提供を受けて保管し、反復継続して他の研究機関に提供を行う業務を実施する機関をいう。
研究者等
研究責任者その他の研究の実施( 試料・情報の収集・分譲を行う機関における業務の実施を含む。) に携わる関係者をいい、研究機関以外において既存試料・情報の提供のみを行う者及び委託を受けて研究に関する業務の一部に従事する者を除く。
研究責任者
研究の実施に携わるとともに、所属する研究機関において当該研究に係る業務を統括する者をいう。
研究機関の長
研究を実施する法人の代表者、行政機関の長又は個人事業主をいう。
倫理審査委員会
研究の実施又は継続の適否その他研究に関し必要な事項について、倫理的及び科学的な観点から調査審議するために設置された合議制の機関をいう。
インフォームド・コンセント
研究対象者又はその代諾者等が、実施又は継続されようとする研究に関して、当該研究の目的及び意義並びに方法、研究対象者に生じる負担、予測される結果( リスク及び利益を含む。) 等について十分な説明を受け、それらを理解した上で自由意思に基づいて与える、当該研究( 試料・情報の取扱いを含む。) を実施又は継続されることに関する同意をいう。
代諾者
生存する研究対象者の意思及び利益を代弁できると考えられる者であって、当該研究対象者が傷病等よりインフォームド・コンセントを与えることができないと客観的に判断される場合に、当該研究対象者の代わりに、研究者等に対してインフォームド・コンセントを与えることができる者をいう。
代諾者等
代諾者に加えて、研究対象者が死者である場合にインフォームド・コンセントを与えることができる者を含めたものをいう。
インフォームド・アセント
傷病等によりインフォームド・コンセントを与えることができないと客観的に判断される研究対象者が、実施又は継続されようとする研究に関して、その理解力に応じた分かりやすい言葉で説明を受け、当該研究を実施又は継続されることを理解し、賛意を表することをいう。
個人情報
生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるものをいい、他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。
個人情報等
個人情報に加えて、死者について特定の個人を識別することができる情報を含めたものをいう。
匿名化
特定の個人( 死者を含む。以下同じ。) を識別することができる情報の全部又は一部を取り除き、代わりに当該個人と関わりのない符号又は番号を付すことをいう。
なお、個人に関する情報のうち、それ自体では特定の個人を識別することができないものであっても、他で入手できる情報と照合することにより特定の個人を識別することができる場合には、照合に必要な情報の全部又は一部を取り除いて、特定の個人を識別することができないようにすることを含むものとする。
有害事象
実施された研究との因果関係の有無を問わず、研究対象者に生じた全ての好ましくない又は意図しない傷病若しくはその徴候( 臨床検査値の異常を含む。) をいう。
重篤な有害事象
有害事象のうち、次に掲げるいずれかに該当するものをいう。
① 死に至るもの
② 生命を脅かすもの
③ 治療のための入院又は入院期間の延長が必要となるもの
④ 永続的又は顕著な障害・機能不全に陥るもの
⑤ 子孫に先天異常を来すもの
予測できない重篤な有害事象
重篤な有害事象のうち、研究計画書、インフォームド・コンセントの説明文書等において記載されていないもの又は記載されていてもその性質若しくは重症度が記載内容と一致しないものをいう。
モニタリング
研究が適正に行われることを確保するため、研究がどの程度進捗しているか並びにこの指針及び研究計画に従って行われているかについて、研究責任者が指定した者に行わせる調査をいう。
監査
研究結果の信頼性を確保するため、研究がこの指針及び研究計画に従って行われたかについて、研究責任者が指定した者に行わせる調査をいう。
橋渡し研究(トランスリレーショナルリサーチ:TR)
とは
様々な研究で得られた知見を、実用化して国民に還元することは大学などの研究機関の重要な役割の一つです。
その考え方に基づき、実験室などで基礎研究の成果を、病院などで使える新たなクスリや医療機器の開発につなげることを目的として行われる研究です。
荒川義弘:東大病院におけるアカデミア主導の臨床開発の取組みと課題、薬学雑誌133(2)、201-208、2013.
彦惣俊吾:トランスレーショナル研究開発に向けた文部科学省の取組み、医学の歩み244(13)、医歯薬出版、2013