Vol.27  No.5 2008 


いつかチョモランマを見てみたい

総合医学第2  前 田 孝 文

 ひょんなことから図書館ニュースの原稿執筆を引き受けることになりました。さて困った。私は決して読書家ではありません。しかし、これも機会と思い本棚を見直してみました。「バイオ実験超基本Q&A」、「(原理からよくわかる)リアルタイムPCR実験ガイド」、「(必ずデータが出る)DNAマイクロアレイ実戦マニュアル」「大腸内視鏡挿入攻略法」・・・。すこぶる実践的ではあるが、これは読書とは言わないんじゃないか?他にはなにかあるのだろうか・・・。
 ある日曜日の夜に、なにとなくテレビを見ていました。若い女性が主役で、彼女はバングラデシュで仕事をしています。彼女の仕事や半生をおいかけたドキュメンタリのようでした。その後彼女が執筆した本があることを知り、さっそく手に入れて読みました。「裸でも生きる」(山口絵理子著)です。(世界で最も貧しい国のひとつである)バングラデシュに単身乗り込み、その特産品であるジュートという素材を使ってカバンを作り、日本に輸入販売している彼女は自分で創った会社の社長でした。まだ25歳。なにより、私を引き付けたのはバングラデシュで働く彼女がすごく楽しそうだったことです。彼女は発展途上国への支援を行いたいと考え、その一環として、アメリカにある米州開発銀行での短期雇用を体験しました。しかし、途上国支援を目的として働いているのに、その機関の職員は途上国へ行ったことがないと知ります。それに矛盾を感じた彼女は自分の足でバングラデシュを訪ね、なんとバングラデシュの大学院へ入学するのです。そして、物質や金銭の援助よりも、生活が安定する仕事と、その仕事に誇りを持てるようにすることこそが大事だと考え、彼女は会社を設立する決心をしました。紆余曲折を経ながらも自分のやりたいことへ突き進む姿は素晴らしいと思いました。つい普段の生活に追い立てられて、目標を見失いがちになりますが、一本大きな信を持って仕事を頑張ろうと、気持ちを新たにさせられます。そしてもうひとつ、バングラデシュという日本とは全く異なる環境で働いていることも、なんだか羨ましく感じました。
 学生時代、海外旅行に憧れて、リュックサックを背負いガイドブック片手に旅行をしたことがあります。当時読んでいたのが、インドのデリーからロンドンまでバスだけで旅行する旅行記を記した「深夜特急」(沢木耕太郎著)です。貧しく華やかではない旅行ですが、リュック一つで旅に出る、バックパッカーに強く魅せられました。本の通りの旅行はできませんでしたが、それでもいくつかの国を旅行しました。今から考えるとなんだか恐ろしいけども、行く先々で知り合った人に泊めていただいたり、仲良くなって一緒に遊んだり、贅沢は全くできませんでしたがとても楽しかったです。ある時はネパールを訪ねました。ネパールはヒマラヤ山脈を擁し、登山やトレッキングで有名です。私は日本にいる間も山登りなんてしたことはありませんでした。しかし、ポカラという街を訪ねたときに知り合った人と意気投合し、成り行きで登ってみることにしました。道具は全部レンタルし、その友人と二人で結局標高4400mのゴールまで登り切りました。往路5泊復路1泊の旅でした。楽しいというよりは、なにかの修行かというほどしんどかったのですが、ゴールの山小屋でお祝いだと言って奮発したコーク杯は最高においしく、また一気に酔いが回ったものでした。その後、日本でも一度富士山に登る機会がありましたが、また山登りをしたいなあと思っています。旅行に行くこともすっかりなくなりましたが、天候不順のため見られなかった、チョモランマをもう一度見に行くのが私の夢となっています。

写真:ネパール旅行時、蛇使いの方と写真撮影


TOPへ戻る