教授挨拶


水田耕一

■自治医科大学での小児肝移植について

自治医科大学での小児生体肝移植は、河原崎秀雄前教授と水田が赴任した2001年5月からスタートし、2017年12月までの約16年間で295例に実施致しました。
当施設の生体肝移植の特徴は、
1)病院をあげた支援体制のもと18才未満の小児に特化した移植施設(年間24例=小児肝移植数の約15%)
2)胆道閉鎖症に対する年間肝移植数が本邦最多
3)OTC欠損症、アラジール症候群、新生児肝移植などの疾患に対する肝移植数が本邦最多
4)ドナーへの再手術がなく、手術創が小さい(約10cm)
5)消化器内科(小腸鏡治療)や放射線科(インターベンショナルラジオロジー)と連携した低侵襲の合併症治療
6)関東甲信越以外の広い地域からの紹介(これまで18都道府県)
7)永続的な外来管理(現在、肝移植後患者は約300名)などになります。
200例を越えるレシピエントの10年生存率96%は、小児肝移植の長期成績では本邦最高であり、世界に誇れるハイボリュームセンターになりつつあります。これまでの小児生体肝移植の実績とそれを支える病院体制、また、継続的な大動物臓器移植実験が評価され、2010年7月に全国に2つしかない小児専門の脳死肝移植実施施設に、2011年9月には脳死小腸移植の実施施設に認定されました。

■支えてくれるスタッフとの連携

移植医療は、チーム医療の代表格でもあります。紹介病院、コーディネーター、移植外科、消化器外科、麻酔科、ICU、内科、小児科、放射線科、感染症科、病理部、臨床薬理、薬剤部、輸血部、透析センター、看護師、放射線技師、検査技師、保育士、栄養士、クラーク、看護助手、事務職員など、一人の患者を救うために、何十人、何百人ものメディカル・コメディカルスタッフが深く関わることになります。リスクの高い緊急肝移植も、関係各部署の方々のご理解とご協力、病院内外での迅速な連携によって支えられています。当院での生体肝移植で良好な成績が維持できているのは、多くの方々のご支援の賜物であり大学全体の力の結集です。
これからも自治医大スタッフは、移植を受ける患者さんとご家族の皆さんのためにがんばっていきます。

■全国各地からの受け入れ体制

この様に、当施設は小児を対象とした肝移植の施設としての存立基盤を固め、貴重な患者さんのご紹介を関東のみならず全国各地から受け入れています。
これまでご紹介となった都道府県は、埼玉、千葉、東京、栃木、茨城、新潟、山梨、神奈川、山形、群馬、富山、石川、静岡、福島、宮城、広島、福井、愛知、北海道の19都道府県になります。
遠くからお出でになる方が多いため、宿泊などのお世話も、当方でさせて頂いております。

■大切な大切な子供たちを中心に...

当科の特徴は、大切なお子さんたちを中心に全てが動いていることです。
スタッフは少数ですが、極めて高い生存率が示すように優秀で、歴戦の勇士の如く気力、体力、そして愛と優しさに溢れています。
肝移植が必要な子供たちはもちろん、必要かどうかわからないので相談したい方も、いつでもいらして下さい。当科の外来に来て肝移植が必要ないとわかり安心してお帰りになるご家族も少なくありません。
肝臓の悪いお子様が適切な治療を受けて元気になれるように、今後も日々技術と知識を磨いていきたいと思います。