X線撮影の仕方

 

自治医科大学附属病院 中央放射線部

主任診療放射線技師 神山辰彦

 

  X線撮影の目的は、必要最小限のX線被ばくで診断的に価値のあるX線写真を作成することにある。ここで必要最小限の被ばくということを忘れては行けない。

  近い将来、環境ホルモン・ダイオキシンや遺伝子組換え食品と同じような問題として放射線被ばくでも騒がれてくるからである。

 

  X線は真空のガラス管の中で、高電圧下にて陰極から出た電子が、陽極の焦点に衝突したときに発生する。このときに陰極と陽極の間にかける管電圧がX線の透過性を決めるポイントで、管電圧が低いと透過力の弱い長波長のX線が、高いと透過力の強い短波長のX線が得られる。

  X線が医療に使われるのは、この物質に対する透過性の違いを利用して見えない部分が画像診断できることにある。一般に、人体の撮影では、このX線の透過性の差を上手に利用して、内部の組織や厚みに適した電圧を、25kVから150kV位の範囲で設定する。

  X線の発生量は、管電流(mA)と時間(sec)の積(mAs値)で調整するが、照明光等と同じように、距離(cm)でも調整できる。(距離の逆2乗則)

  X線装置は、高電圧の発生と調節、制御をする部分からできている。 また、電源や整流方式とX線発生の容量などによって、種類、方式とそれに付随したシステム構成が違う。最近は半導体素子と高周波変換を使ったインバーター方式で、管電圧を平滑化し安定制御する装置が多くなっている。

 

電 圧

低圧←  →高圧

線 質

軟線←  →硬線    長波長  短波長

透 過 力

弱い←  →強い

人体吸収(被ばく量)

多い←  →少ない

散乱線

少ない←  →多い

写真画像   (コントラスト)

硬い←  →軟かい

 


 フィルムは、光に反応して画を作るが、これを感光と呼ぶ。 X線撮影用のフィルムも一般黒白用のフィルムと同様に、光に感光する性質は同じだが、色に対する感光の仕方が異なっている。フィルムの構造は、支持体(ベース)の上に光に反応する感光乳剤が非常に薄い皮膜状に均一に塗布されている。 一般黒白用のフィルムや間接撮影用X線フィルムは片面だけに感光乳剤が塗布されているが、直接撮影用X線フィルムは感度を高めるために、ベースの両面に感光乳剤が塗布されている。直接撮影用X線フィルムの感光する波長領域の違いには、2通りあり、感光乳剤の種類によって、青色系の領域によく感光するフィルムをレギュラーフィルム、また緑色系の領域まで感光するフィルムをオルソフィルムと呼ぶ。これらのフィルムは、対応した色光を発光するスクリーンとの組み合わせで最高の結果が得られるように設計されている。ここで、感光材料を更新する時にはオルソシステムを推奨したい。オルソシステムはレギュラーシステムと比べて鮮鋭度と粒状性がよい写真となっている。近い将来全部オルソシステムになると思われる。(一般病院は7割がオルソシステムであるが、僻地診療所は3割弱しか使われていない。)欠点はスクリーンの価格が高いことである。(フィルムは同じ価格) 使用上注意すべき点は、フィルムとスクリーンがそれぞれのタイプに専用であるので、オルソのフィルムをレギュラーのスクリーンに使用したりしないこと。(その逆も同じこと)撮影時間が長くなったり(被ばくが増える)など、よいことは少しもないので注意して欲しい。システム感度は200(標準的)以上を使用し、低感度システムは被ばくが増えるし、高感度のシステムは画質が悪くなるので注意すること。

 フィルムは、本来の性能を発揮させるため化粧箱の正面や側面にある使用期限内で使用すること。(カブリを生じてくる。生ものと言われる由縁がここにある。)もし、使用期限内に使い切れないようなら、50枚入りの箱を使い、使用するサイズ(半切、大角、四切、)を限定し、使用期限内に使いきるようにする。また、四切サイズは胃透視のフィルムと兼用するとよい。(胃透視撮影のスクリーンとフィルムはオルソタイプが多いのでカセッテのスクリーンもオルソに変更することを忘れてはいけない)

 

 スクリーンにはX線が当たると蛍光を発する物質が支持体に塗られており、これは蛍光スクリーン、増感紙とも呼ばれている。この蛍光物質はX線吸収性が良く、また蛍光変換性も良いために、少ないX線でフィルムの感光を増大するという作用がある 。蛍光物質の種類により、発光が青色光や緑色光になる。最近のオルソスクリーンには、希土類蛍光体が使われている。スクリーンは、長年使うと表面に傷や汚れが生じて、良い画像が得られなくなるので、使用頻度にもよるが、1〜3年で交換することが望まれる。

 フイルムやスクリーンは、コントラスト、感度、感色性の異なるものが供給されているので撮影部位や撮影目的に適したものを使用(妊婦や小児などに注意)するのが望ましい。

 暗室用のセーフライトはレギュラー用とオルソ用があるが、兼用のセーフライトグラスをお薦めする。間違ったセーフライトではフィルムカブリが生じるので注意すること。

 

 カセッテは、アルミニゥムやカーボンでできた遮光箱で、裏蓋側にはクッション材が貼られている。このクッション材の上と表板の内側にスクリーンを貼り付けて、この間にフィルムを挟み、均一な密着が得られるようにしている。したがって、カセッテに凹凸や密着ムラがあると画像がボケて良い写真が得られない。カセッテは、全体が劣化したら交換すること。特に、クッション材のスポンジは6〜7年で弾力性が落ちる。梅雨時は、長い間フィルムを入れた状態にすると、湿気によりフィルムがスクリーン面に接着する。冬期は、室温変動が大きいと、カセッテ内に結露を生じることがあり、フィルムがスクリーン面と接着したり、現像ムラになったりする。

 

 

 

 

 

 



 撮影前に、カセッテを立位の架台(高圧リーダー)やブッキーテーブルにセットする。散乱線除去のグリッドを撮影電圧との関係を考えて使い分ける。X線が物質を透過するときに、その中で方向が変わり、散乱する現象が起きる。この散乱線は、ボケた画像や低コントラストの画像にするので、その影響を受けないように、散乱線を取り除く鉛の格子(グリッド)を使う。グリッドには、静止型リスホルム・ブレンデ)と移動型ブッキー・ブレンデ)がある。最近は、静止型グリッドが良く使用されている。(格子密度60本/cm)

 通常は、撮影電圧が60kV以上の時、肩関節や膝関節から近位方向の部位に使用する。物質から出る散乱線の量は電圧が高くなるほど増大し、散乱線除去率はグリッドの格子比が高くなるほど高くなる。次の使い方をお薦めする。

      80kV以下では6:1位〜8:1

      80〜100kVでは8:1〜10:1

     100〜120kVでは12:1

     120〜140kVでは14:1

 移動型グリッド(高圧リーダーやブッキーテーブルにセットしてあるもの)は、最高使用管電圧を目安にして決定するとよい。

 半切、大角、四切の静止型グリッド(リスホルム)があると、患者を移動せずにストレッチャー上で撮影可能となり、便利である。


胸部撮影の例をとれば、先ず患者の位置決めから始まる。

1)撮影方向(PAまたはAP)を決めて、身体が動かないような姿勢をとる。

2)X線管球の位置を合わせ、多重絞りで照射野を絞り、不要な被曝をさける。

3)撮影の管電圧は胸部に適した設定をして、時間は、動きが止まるよう短時間にする。

4)撮影するときは、患者の呼吸を止めさせて臓器の像が動かないようにする。

医療法違反をしないこと。(X線撮影をできるのは医師、歯科医師、放射線技師のみである)

 

 胸部はPA(後前)方向(Postero-Anterior)を標準として撮影する。これは読影時に医師が患者に向かい合う姿勢になる。側面はLat(Lateral)と、斜位はObl(Oblique)と表示する。内臓や整形撮影はAP方向が多く、頭部や下顎骨はPA方向で撮ることがある。基本はフィルム側に近いところが鮮明に写ることで選択する。

 透視撮影装置をうまく使いこなすこと(透視装置のオート撮影を使用することで撮影条件等の失敗を少なくする)。胃や大腸の検査だけでなく、腰椎や尿路系、膝、手、また救急患者など撮影できない部位はないといえる。その際は目的部位に絞って(手動絞り)撮影することである。そうすることで安定した濃度で撮影できる。(濃度調整は2つ程度プラス側に設定するとよい)

  X線装置の使用開始前には、エージングを実施する。そうすることで、X線管の寿命を延ばすことができる。特に胸部撮影で100kV以上の管電圧を使用する時は必ず実行する。 60kV.200mA.0.04secから管電圧のみ10kV間隔で100kVまで行い、それ以降は5kV間隔で使用する管電圧まで行う。管電流と撮影時間は、変更しなくてよい。(60kV.70kV.80kV.90kV.100kV.105kV.110kVなど。カセッテなど置かずに空曝射をする。) 

  装置のメンテナンス契約を結ぶとよい。装置の管電圧、管電流等は定期的に調整して狂いのないようにしておくこと。(表示値と測定値の狂いはよくおきる現象)

   X線装置には許容最大管電圧と管電流がありそれ以上の条件で撮影した場合には故障するので注意すること。(特に大学病院等の撮影条件を使用する場合)

   撮影装置を更新する場合には自動露出装置(フォトタイマ)をオプションで撮影寝台や壁型ブッキー装置に付けると撮影条件に苦労しないですむ。

 

 撮影条件は、同じ被写体でも装置の種類、撮影距離、散乱線除去板(グリッド・リス・ブッキー)の種類、感光材料、自動現像機などにより変化してしまうので、他からの条件表の流用使用には注意が必要となる。特に大学病院などの条件表は全く診療所では使用できないものと思ってよい。しかし、その診療所のシステムに適した撮影条件表を作成することは簡単ではない。

  基本的に短時間撮影になるよう撮影条件を作成し、動きによる再撮影やボケを少なくする。(腹部や胸部条件は管電圧を高めに設定するとよい) 自分の体格との対比で覚えるのがよく、自分よりこれくらい太っているので5kV上げようとか、また小児の膝などは自分の手首の太さと同じで撮れるなどと考えていくのがよい。しかし感覚的要素が多いのも事実である。

 撮影後のフィルムは、現像仕上げしてX線画像を完成する。一般的には、ローラーによる搬送機構に加えて液温と乾燥の定温設定機構を備えた自動現像機と呼ばれる装置を使う。現像、定着、水洗、乾燥の各ラックと定量の液補充ポンプを制御するシステムである。各処理液温度は、32〜35℃、水洗は常温、乾燥は50℃位の条件が普通である。

 現像から乾燥までのフィルム仕上がり処理時間は、次の通り小型機は2分〜4分・中型機は60秒〜120秒・大型機は30,45,90秒となっている。現像液、定着液、水洗水は一定期間で定期的に自動現像機の取扱い説明書に従って、交換する。(濃度管理が必要。メンテ契約を結ぶ) 自動現像機は、処理枚数が少ないほど管理が難しくなるということを忘れないでほしい。一日20枚以下の処理では自動現像機の管理はできないと思って欲しい。ここでの管理は現像液(定着液はあまり気にしないでよい)の管理をするということであり、現像液の酸化(空気面の接触や日光等により酸化し、温度が高いと酸化は促進される)による劣化を早期発見するが重要である。現像液の劣化はX線写真のコントラスト低下、カブリの増加として現れ撮影条件も多く必要になる。実際には徐々に劣化が進行するので早期発見は難しい。

 濃度管理の簡単な方法としてアルミ階段(骨塩測定MD法に使用するもの)を使用する方法がある。新しい現像液時にこのアルミ階段を膝の条件で撮影して現像処理し、このフィルムをコントロールとして保管しておく。一週間後に同じ条件でアルミ階段を撮影・現像しコントロールフィルムと比較する。各々の階段濃度やカブリ具合を比較して劣化の判定をする。変わらなければそのまま使用し、その後一週間ごとに同様な撮影を実施し濃度が変化してきたなら劣化してきた証拠であるので現像液を全部交換するとよい。新液交換時にスタータという処理液(カブリ防止剤)を必ず忘れずに入れること。定着液は現像液3回に1回の交換でもかまわない。大変であるがこれがベストの方法である。それができないなら自動現像機を使わずに手現像処理を覚えた方が実践的だと思う。

 自動現像機のメンテナンス契約(定期点検)は是非とも結んで欲しい。濃度管理は自分で可能でもローラー・部品等の交換は自分ではできない、これも劣化するため定期的に交換すべきものである。メンテナンスには、故障した時の修理などの事後保全と故障する前に交換する予防保全があり、僻地診療所では予防保全で故障を最小限に抑えておく必要があるのではないか。

 

 仕上がったX線写真は、蛍光灯光源の上に乳白色のアクリル散光板をのせた、シャウカステン(ビューボックス)上に掛けて観察する。シャウカステンの表面の汚れは簡単に拭ける。アクリル板の内側や蛍光灯を拭くと1000lx位明るくなり、ムラも無くなる。蛍光灯は、期間が経つと照度が落ちて発光ムラを生じる。

 明るさや色調を揃えるために、全部を一度に交換すること。

 良いX線写真の標準的な濃度としては、胸部単純の肺野最高で1.7〜1.8位。二重造影胃部の中で1.2〜1.3位である。明るいシャウカステンを使うことが、見やすいための条件である。

 

 

 

 臨床で撮影したX線写真は、法律上で保存が義務づけられている。X線写真画像は保存条件が悪いと、画像銀が黄褐色に変色したり、カビが発生する。医師法では、カルテ類で5年間保存、医療法施行規則では2年間保存義務があるが、長い方の5年を保存期間と考えたほうがよい。

 

 その他として、被ばくに関する説明ができること、特に小児や妊娠可能な女性のX線検査には注意が必要である。(防護に注意したり、妊娠の可能性を訊ねるなどして、生理開始から10日以内に検査を行うようにすると良い。(10Day,s Rule

 

 最後に放射線部に放射線技術相談室を開設しているので、撮影法、撮影条件、自動現像機、新装置の導入のこと等々、なんでも相談お受けいたしております。お気軽にご利用してください。またホームページのFAQ集・撮影条件変更方法など参考にしてください。

☆電話 0285-58-7149(直通) ☆FAX 0285-44-5267

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