c-Maf→IL-23受容体 のメカニズムを解析して、論文をJournal of Biological Chemistry誌に「ねじこみ」ました(Sato K et al., 2011)。これは古い歴史を持つ由緒正しい雑誌です。が、最近権威が落ちていてしょぼい論文でも通しているのではないかという噂もあります。確かにそうかもしれませんが、私はきっちりリジェクトされたこともあります(自慢するようなことではない)。このときの論文には、c-Mafを強制発現したマウスの末梢血のT細胞は、そのほとんどがメモリー細胞(ナイーブ細胞ではなく)の表現型を持っていることを1つの謎として記述しました。c-Mafの働きにはまだまだ解明されていないことがありそうです。  

Th17, Tfh細胞はどちらもIL-21を産生しますが、c-Mafが直接IL-21のプロモーターに作用してIL-21産生を制御するという報告も出ています(Hiramatsu et al., J Leukoc Biol. 2010)。また、近年特に関節リウマチの発症に関係するのではないかとして注目されている「末梢ヘルパーT細胞(peripheral helper T cell, Tph細胞…ずいぶん地味な名前をつけたものです。Rao et al., Nature 2017)もやはりc-Mafを発現しています。この細胞もIL-21を発現しているので、その点でTh17, Tfhと共通しているのかもしれません。そういうわけで、今でもc-Mafは大変魅力的な転写因子だと思っています。

 

 さて、埼玉医大に異動した時の1つの課題は、「実際の疾患におけるTh1/Th2/Th17応答を調べる」ことでした。何しろそれまでのTh1, Th2しか存在しない世界では、炎症性疾患は2種類にしか分類できません。関節リウマチはTh1疾患、全身性エリテマトーデスはTh2疾患、といった具合です。まあこういう二分法ものどかで良いように思います。が、流石に単純すぎる感じは拭えません。何より、実際に自分の手で定量してみないと納得できません。

 しかし、いざTh1/Th2/Th17応答を定量してみようとすると、それほど簡単ではないということにすぐに気づかされました。

佐藤 浩二郎

私的免疫学ことはじめ (43)← Prev     Next →私的免疫学ことはじめ (45)