お知らせ

2025年9月10日
初代教授 河合忠先生の訃報
臨床検査医学講座のホームページをリニューアルしました

ご挨拶

臨床検査医学講座教授 岩津 好隆からのご挨拶

臨床検査というと日常臨床に必須であり、臨床の先生にとって非常に馴染み深いですが、臨床検査医学についてはあまり馴染みのない分野ではないでしょうか。
臨床検査医学を専門とする日本専門医機構認定臨床検査専門医は468名(2025年1月1日現在)と非常に少なく、2名以下の都道府県が9県、約2割存在します。人数が少ないだけではなく、何をしているのかはっきりしないことが一番疎遠に感じる原因だと思います。
臨床検査医学の大きな仕事は、精度管理、システム整備や正しい検体処理などを通じて正確な検査結果を出すことであり、どちらかというと縁の下の力持ちのような役割を担っています。今後は検査結果を、臨床の先生だけではなく検査を受けた患者さんにわかりやすい形で検査結果を返す必要性がますます増加してくると考えています。
具体的には臨床医の先生に「生命が危ぶまれるほど危険な状態にあることを示唆する異常値」を直接迅速に連絡するパニック値の運用が挙げられますが、それだけではなく患者さんにも検査値が示す臨床的意義について分かりやすい形にして検査結果をお伝えできるようにすることも我々の仕事だと考えています。
また、基本的検査から患者の病態にせまるRCPC(Reversed clinic-pathological conference)を通じて基本検査の理解を臨床医の先生に広め、正しい追加検査や治療法の選択ができるよう協力できればと考えています。
一方で、新しい検査の開発の基礎的・臨床的な研究をすることや学生教育も研究・教育機関として大学の重要な役割であると考えています。研究分野ではミネラル代謝研究部の黒尾誠先生と共同で新しい石灰化指標の開発を行なっており、教育分野では検査機器の乏しい医療機関勤務でも行える実践的な検査の実習に力を入れています。
検査を利用しない診療科はほとんどないことからも分かるように臨床検査の守備範囲は非常に広く、検査を通じて様々な分野で活躍できる仕事です。検査に興味を持っている方は是非お気軽にご相談ください。

略歴

1999年3月宮崎医科大学(現宮崎大学医学部)を卒業後すぐに本学付属病院内科ジュニアレジデントとして入職し、腎臓内科、臨床検査医学、分子病態治療研究センター抗加齢医学研究部を経て、2025年4月より現職。


臨床検査医学講座教授 紺野 啓からのご挨拶

臨床検査医学講座教授 紺野 啓臨床検査部の業務は検体検査と生理機能検査に大別されますが、私は生理機能検査部門を中心に管理・運営を担当しながら教育・診療・研究に当たっています。
なかでも中心となるのは超音波検査業務であり、現在、私を含めた3名体制で検査を行うとともに、医学生、医師、コメディカルに対する卒前・卒後教育を行っています。当検査室では、医師と臨床検査技師の協力の下、院内全診療科からの依頼を受け、腹部、心臓、乳腺、甲状腺、血管など全領域を対象に超音波検査を行っており、年間15,000件の検査実績があります。医師が、特定の領域を問わず全領域の超音波検査を担当し、卒前・卒後教育まで行うというスタイルは我が国では珍しく、これを実現させていることは当教室の最大の特徴と言えます。
当院は日本超音波医学会による研修基幹施設の認定を受けており、当院における研修で超音波専門医の取得が可能です。超音波専門医は腹部、心臓、乳腺など臓器・領域ごとに取得するのが一般的ですが、当教室における研修では全領域について学ぶことが可能で、総合領域での取得も可能となります。一方、当教室が行っている卒後教育の中心は、当院卒後臨床研修センターとの協力の下に行われる初期研修医向けの超音波研修です。1~2ヵ月間の研修を受け入れていますが、ここでの研修は他の診療科における臨床研修と同列に扱われます。また卒前教育として学生向けの実践的な超音波教育にも取り組んでいます。全学生に対する腹部、心臓、体表領域の幅広い臨床実習に加え、希望する学生については、研修医向けとほぼ同内容の約1ヵ月間程度の検査実習(研修)も受け入れており、卒後、へき地医療に携わる卒業生などには特に好評です。
研究では、超音波医学に関わる基礎的・臨床的研究を中心に、臨床検査医学と医学教育に関わる研究を広く行っています。超音波を用いた各種の計測や物性評価、超音波が生体に及ぼす各種作用についての研究には特に力を入れており、学内外の他の研究機関や診療科との共同研究も積極的に行っています。
当教室における教育・診療・研究を通して、これまでの業績に超音波医学の視点を取り入れて新たな展開を試みたり、異なる領域の思考法や手法を取り入れて新たな切り口を見出したりするお手伝いができるかもしれません。これまで内科など他の科を専攻されてきた先生、これからこの領域の専門医となりたい先生など、当教室での仕事に少しでも興味を持たれた方はお気軽にご相談ください。

スタッフ紹介

氏名 研究分野
教授 岩津 好隆 リン代謝、慢性腎臓病、尿検査、ナトリウム・カリウム代謝
教授 紺野 啓 超音波医学、組織性状診断、超音波医学教育
教授(兼) 尾本 きよか 臨床検査医学、超音波医学(乳腺・甲状腺・体表臓器)、造影超音波検査
講師 水品 佳子 呼吸器内科学、呼吸生理、急性肺傷害、無菌性炎症、細胞死
助教 山本 さやか 超音波医学(甲状腺)
病院助教 久保田 香菜 循環器病学
病院助教 藤村 研太 循環器病学
臨床助教 野村 祐希 臨床検査医学専攻医
客員教授 谷口 信行 臨床検査医学、超音波医学
客員教授 山田 俊幸 臨床検査医学、血漿蛋白、アミロイドーシス
非常勤講師 三宅 紀子 生化学
非常勤講師 川上 忠孝 神経生理学
非常勤講師 窓岩 清治 血栓・止血学
非常勤講師 重田 浩一朗 血栓・止血学
非常勤講師 亀田 徹 Point-of-Care-Ultrasonography(POCUS)、肺エコー、遠隔超音波教育
非常勤講師 鯉渕 晴美 超音波、感染症、院内感染対策
客員研究員 高山 法也 超音波医学
客員研究員 川畑 奈緒 栄養学

レジデント・卒後教育

卒後教育の一環として、自治医科大学附属病院臨床検査部における研修医の受け入れを行っています。多くは初期研修終了後のシニアレジデントについて概ね1か月単位での研修を、1クールあたり1~2名を受け入れています。シニアレジデント以外にも、他科(放射線科・総合診療部など)から研修を希望する先生方も多く、また、学外の病院からの研修も受け入れています。超音波検査研修が主ですが、中には骨髄鏡検や呼吸生理機能の研修を希望する先生もあり、臨機応変に対応しています。

当施設は、1. 日本専門医機構認定臨床検査専門研修施設、2.日本超音波医学会認定専門医研修施設であり、臨床検査専門医や超音波検査専門医の資格を得ることができます。検体検査研修では、各検査の理論と実践、特に骨髄像や電気泳動検査の判読、精度管理などの研修をしています。超音波検査研修は、検査を一人で行えるようになることを目標にしています。実際に患者さんの検査を行い、レポートを自ら書いて、超音波検査専門医によるチェックを受けることで研修を進めます。

臨床検査専門医習得レベルを目標に、現在、数名が登録しています。

医局員募集

自治医大臨床検査医学では、一緒に検査・研究をやりたいという医師を募集しています。 これまで他の科をやっていたが、臨床検査についてより深く勉強したい方、それを基に未だ数の多くない臨床検査専門医と超音波専門医になり将来役立てたい方、研究し学位を取りたい方などに向いています。もちろん検査に興味のある方なら、どのような動機でも結構です。

1. 臨床検査部の具体的な仕事

検体検査部門では、骨髄検査や免疫固定法について報告書を作成し依頼医師に返します。生理機能検査では主に超音波検査を担当し、検査結果とその報告書を依頼医師に返します。そのほか具体的な内容については、日本臨床検査専門医会のサイト中の「私たちは臨床検査専門医」をご覧下さい。

https://jaclap.org/category/category2/

2. 自治医科大学臨床検査医学の特徴

他の大学と異なるのは、同じ教室内に検体検査と超音波をはじめとする生理機能検査の両方の専門家が複数おり、臨床検査医学会と超音波医学会の両方の指定研修施設になっていることです。よって5年程度で臨床検査専門医と超音波専門医の両方の受験資格が得られます。なお、自治医大での超音波検査研修の特徴は、心臓・腹部・乳腺・甲状腺・血管などの領域ごとではなく、すべての領域を対象とする点です。したがって、自治医大臨床検査医学で超音波の研修をすれば、全国的にも数の少ない、超音波専門医(総合)の資格を得ることができます。

臨床検査専門医専攻医募集

当施設は日本専門医機構認定臨床検査専門医制度における認定研修施設として、同資格取得を目指すための研修プログラムに登録される方(専攻医)を募集しています。

臨床検査専門医は基本領域の専門医です。その概要、研修の一般的内容などは、日本臨床検査医学会サイト を参照ください。当施設においても研修プログラム [PDF:440KB]を提示しておりますが、ここでは簡単にその内容と特徴を説明し、実際のプログラムへの応募について案内します。

1. 自治医科大学臨床検査医学講座の特色

当講座の初代主任教授、河合忠先生は我が国において検体検査を中心とする臨床検査医学の礎を築かれた方で、2代目主任教授、伊東紘一先生は我が国における超音波検査学の草分け的存在です。両先輩に導かれ、これまで多くの臨床検査専門医、超音波専門医を輩出しており、その伝統は現在のスタッフに受け継がれ、これらを研修するには絶好の環境にあります。また、学術活動も活発であり、多くの英文原著論文が発表されています。

ところで、臨床検査専門医のidentityがはっきりしない、何をやる専門医なのか、とよく話題になります。これは歴史が浅く、identityを確立するまでの実践者が少ない、大学の人事に影響されてきた、その他いろいろな事情によります。従って、施設によってかなり趣に差があることは否定しません。その中で私たちは、臨床検査業務を中心にやりたい方、臨床検査の研究に重心を置きたい方、いろいろな方向性を持った方に対応するつもりです。当施設で、専門医をとられた方はスタッフとして残っていただき、診療、教育、研究をバランスよくこなし、大学スタッフとしてキャリア形成できるよう支援していきます。

興味を持たれた方は、下記の連絡先に是非相談してください。相談されたからといって応募を強制などはしませんので遠慮なく連絡いただけたらと思います。

2. 研修プログラムの概要と特色

全体の研修期間は3年です。連携施設には、附属さいたま医療センター、東京都済生会中央病院、埼玉がんセンターがあります。研修は基幹施設である本学附属病院と、連携施設のうちの一つを選択して研修します。

まず、当講座と附属病院で、臨床検査医学の総論と生理機能検査全般、超音波検査を学びます。その後3~6ケ月程度連携施設に出向し、超音波検査と一般検査、または血液検査を学びます。このころには超音波診断技能がある程度身に付きますので、以後は超音波診断業務を行いながら臨床検査全般を研修します。附属病院では、血液像(骨髄像)、免疫電気泳動像の判読を学びつつ、検査報告書を作成するという業務を担います。勿論、臨床化学、微生物検査も研修します。

2年目からは研究も同時にスタートします。このHPの他の項にあるように、当講座では、超音波検査、血漿蛋白、アミロイドーシス、血清脂質、腎代謝、などの研究が行われており、その研究者についてもいいですし、これら以外のテーマでも指導します。研究のための時間は充分に確保できます。

3年目に研修を無事修了認定されると、専門医資格認定試験を受験することになります。認定試験は筆記試験と実技またはそれに準じた動画による試験になる予定です。なお、新専門医制度は初期臨床研修を終えてすぐの方を主な対象にしていますが、当プログラムは、他科からの転向を含め、ベテランになってからでもこの分野に興味を待たれる方も歓迎します。

RCPC / 超音波検査

RCPC

RCPC

症状や診察所見などの情報のない状況で、臨床検査データをもとに、症例の病態を推定しつつ討論することをRCPC(Reversed Clinico-Pathological Conference)といいます。データから症状や診察所見を推測するという、通常のCPCとは逆方向であることからReversedと冠されています。RCPCは、検査項目の特徴や意義を深く学ぶことができる優れた臨床検査医学の学習方法として、内外で活用されています。

自治医大臨床検査医学では医学科4年生のBSLに導入しています。また5年生を対象とした選択ゼミとして毎週行っています。ゼミの受講生には大変好評です。その様子を写真にしました。また、以下のURLにその一例を掲載しますので、皆さんもぜひ挑戦してみて下さい。

http://www.jokoh.com/elp/rcpc/rcpc11_1.htm

超音波検査

超音波検査

自治医科大学附属病院では、超音波検査は中央部門化され、腹部・心臓・乳腺・甲状腺・腹部血管・下肢静脈などすべての分野を検査部の超音波室で、臨床検査医学のスタッフ(超音波専門医2人)が行っています。

また、各科をローテーションしている研修医も常時受け入れています。

研修医はまず自分で検査を行い、臨床検査医学のスタッフである超音波専門医が再度検査行い確認をしています。研修医は自分でレポートを作成し、その検査を担当した専門医がレポートのチェックをして確定、電子カルテに送信しています。 写真は臨床検査医学のスタッフである超音波専門医が研修医の行った検査をチェックしている場面です。検査をしている専門医の後ろに立って一緒に画像を見ているのが研修医です。 (ただし、患者役は研修医です)