自治医科大学医学部同窓会報「研究・論文こぼれ話」その25 同窓会報第79号(2017年4月15日発行)


研究、そして論文のネタ探し」

            自治医科大学整形外科学 竹下克志
takesita

 よく言われますように、臨床研究は普段の臨床活動からそのアイデアが生まれてきます。前提としてその領域で最先の知見を知っておくこと、つまり関連学会そして学術誌から充分学んでおく必要があります。私自身は脊椎外科が専門ですので、画像解析や手術手技の改良や開発が差し迫った課題として意識し続けてきています。
  一方で、日本人らしく(?)外圧で始めた研究もあります。“痛み”に関する研究です。私が所属していた大学教室で“後縦靭帯骨化症”という難治疾患の厚労省班会議を担当することとなり、私も事務方医師代表として様々な“雑用”を仰せつかりました。当時は専門領域の研究や診療に忙殺されており、時間を割り当てることに困難を感じながらの事務作業でありました。仕事のなかに“患者団体”とのお付き合い、がありました。今でこそ、ガイドラインの作成にも患者団体の参画が言われておりますが、15年近く前の整形外科ではそのような活動はほとんどなかったと記憶しています。  
 厚労省の班会議での患者の会代表者の方にコメントをいただくようになったのですが、判で押したように“痛みを、しびれをなんとかしてほしい”とおっしゃっていました。実は整形外科に来院される患者の主訴は後縦靭帯骨化症にかぎらず“痛み”なのです。じつは整形外科で痛みに入った先輩方は少なからずいらっしゃいます。たとえば兵庫医大解剖学主任教授の野口光一先生は整形外科から痛みの研究に取りつかれ基礎研究に入られたそうですし、愛知医科大学学際的痛みセンター教授の牛田享宏先生は脊椎疾患の診療から慢性の痛みに対して集学的な治療・研究を行う日本初の施設で活躍されています。整形外科外来ではX線など加齢性変化の説明を行うので、“年だから痛くてもやむを得ない”と口に出さないものの、言葉の行間ににじませた説明になりがちです。“年だから痛くなりやすい”と“(痛みがでるのは)やむを得ない”、そして“(ある程度は我慢してくれ)”にはかなりの論理の飛躍があります。  
 ということで、私もそのころから“痛み”に暗中模索のなかで取り掛かることにしました。脊椎疾患の痛みや神経障害性疼痛をキーワードとして、ペイン科や関連学会の先生方に教わりつつ、一方では共同して臨床と研究をペアで活動してきています。そうした中で論文化は自分のしてきたことの客観化そして宣伝に有用であり、欠かせない活動であると確信しています。

「痛みに関して自分が関係した論文」
1) Matsubayashi Y, Takeshita K, Sumitani M, Oshima Y, Tonosu J, Kato S, Ohya J, Oichi T, Okamoto N, Tanaka S. Psychometric Validation of the Japanese Version of the Neuropathic Pain Symptom Inventory. Plos One 2015 Nov 24;10(11): e0143350.
2) Kimura A, Endo T, Inoue H, Seichi A, Takeshita K. Impact of Axial Neck Pain on Quality of Life in Patients Undergoing Cervical Laminoplasty. Spine (Phila Pa 1976). 2015 Dec;40(24):E1292-8.
3) Yamada K, Matsudaira K, Takeshita K, Oka H, Hara N, Takagi Y. Prevalence of low back pain as the primary pain site and factors associated with low health-related quality of life in a large Japanese population: a pain-associated cross-sectional epidemiological survey. Mod Rheumatol. 2014;24(2):343-8.
4) Matsubayashi Y, Takeshita K, Sumitani M, Kato S, Ohya J, Oichi T, Oshima Y, Okamoto N, Tanaka S. Validity and Reliability of the Japanese Version of the painDETECT Questionnaire: A multicenter observational study. Plos One 2013 Sep 30;8(9):e68013.
5) Takeshita K, Hosono N, Kawaguchi Y, Hasegawa K, Isomura T, Oshima Y, Ono T, Oshina M, Oda T, Kato S, Yonenobu K. Validity, reliability and responsiveness of the Japanese version of the Neck Disability Index. J Orthop Sci 2013;18:14-21.
6) Kato S, Takeshita K, Matsudaira K, Tonosu J, Hara N, Chikuda H. Normative Score and Cut-off Value of the Neck Disability Index. J Orthop Sci 2012;17:687-93.
7) Matsudaira K, Konishi H, Miyoshi K, Isomura T, Takeshita K, Hara N, Yamada K, Machida H. Potential Risk Factors for New-onset of Back Pain Disability in Japanese Workers: Findings from the Japan Epidemiological Research of Occupation-Related Back Pain (JOB) Study. Spine 2012;37:1324-33.
8) 竹下克志、住谷昌彦、松林嘉孝、加藤壮、大谷隼人、尾市健、大島寧、唐司寿一、筑田博隆.日本語painDETECTのカットオフ値.J Spine Res 2014;5:118-121.
9) 原慶宏, 竹下克志, 竹林庸雄, 山下敏彦, 佐藤公昭, 永田見生. 腰部脊柱管狭窄症患者における神経障害性疼痛の頻度. Journal of Musculoskeletal Pain Research 2012,24;37-45.
10) 矢吹省司, 牛田亨宏, 竹下克志, 佐浦隆一, 勝俣明子, 畠中聡. 日本における慢性痛患者の実態調査 -Pain in Japan 2010より- 臨床整形外科 2012;27(2); 127-134 .
11) 松平浩、竹下克志、久野木順一、山崎隆志、原慶宏、山田浩司、高木安雄.日本における慢性疼痛の実態-Pain Associated Cross-sectional Epidemiological (PACE) surgery 2009.JP-.ペインクリニック 2011;32: 1345-56.
12) 原慶宏、松平浩、増田和浩、森井次郎、竹下克志、山崎隆志、星地亜都司、中村耕三. 症候性の腰部脊柱管狭窄症患者における腰痛の実態 コントロール群との比較. J Spine Res 2011;2: 1064-9.
13) 山田浩司、松平浩、竹下克志、奥真也、木村譲、中村耕三.生活習慣病・肥満対策としての運動指導に腰痛や膝痛は阻害要因となりうるか?J Spine Res 2011;2: 1052-7.
14) 竹下克志、藤原奈佳子、中村耕三.OPLLの痛みとしびれ.日本運動器疼痛研究会誌 2010;2:48-53.
15) 松平浩、小西宏昭、三好光太、内田毅、竹下克志、原慶宏、町田秀人.生活習慣病と腰痛 早期予防・早期対策に向けて 勤労者における「仕事に支障をきたす非特異的腰痛」の危険因子.日本整形外科学会雑誌 2010;84:452-45.
16) 竹下克志、藤原奈佳子、星地亜都司、横山徹、徳橋泰明、遠藤健司、加藤圭彦、田口敏彦、市村正一、里見和彦、平野徹、伊藤拓緯、三上靖夫、坂浦博伸、松本守雄、中原進之介、松本嘉寛、清水克時、岡山忠樹、川口善治、木家哲郎、馬場久敏、井尻幸成、椎名逸雄、戸山芳昭、中村耕三. 圧迫性頚髄症の痛みとしびれ. 臨床整形外科 2010;45:683-687.
17) 松平浩、町田秀人、 小西宏昭、 三好光太、 小川真司、 内田毅、 原慶宏、 竹下克志、 中村耕三.勤労者における仕事に支障を来す腰痛の関連要因の探索的検討.臨床整形外科 2009;44(3):263-268.
18) 原由紀則、松平浩、原慶宏、荻原哲、竹下克志、中村耕三.F波による腰部脊柱管狭窄症手術例における安静時しびれの予後予測.臨床整形外科 2008;43(4):375-379.

(次号は、自治医科大学脳神経外科学川合謙介先生の予定です)

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