自治医科大学医学部同窓会報「研究・論文こぼれ話」その27 同窓会報第81号(2017年10月15日発行)


小児神経疾患・発達障害の治療法開発を目指して」

            自治医科大学小児科学 山形崇倫
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 私は、小児科医として、小児神経・発達障害および遺伝を専門としています。学生時代、先天代謝異常とか神経とかは難しくてできないと思っていましたが、いつの間にか、一生の仕事としてしまっていました。それには、桃井先生をはじめとした諸先生方の御薫陶が大きいのですが、患者さんとの出会いも貴重でした。抗てんかん薬が効かず、けいれんを繰り返し退行していったLennox症候群の児にケトン食療法が著効し、けいれんが止まり、発達も戻ってきた経験がありました。原因不明で治療法もなかった全身こむら返り病(里吉病)の患者さんに対し、桃井先生からのおそらく自己免疫疾患だからステロイドを使いなさいとのご示唆で、ステロイド療法を行い寛解。治らないものと思っていた神経疾患も病態を解明すれば治せるのだと感動しました。当時、小児神経の病気は、発達遅滞、脳性麻痺とするのみで、診断も病因も判らず、治療法がないものがほとんどでしたが、MRIや遺伝学的検査が発展し、病因・病態が判る様になり、治療が出来る疾患も増えてきました。最近、自治医大でAADC欠損症に対する遺伝子治療を実施し、寝たきりだった子が歩行器で歩くなどの運動機能改善が得られています。自然の流れに身を任せ、神経をやってきて良かったと、やりがいを感じています。
 前述した全身こむら返り病ですが、まだ英語の論文を書いた経験も少なく、また、日本での発症が多い疾患であったため、日本の雑誌に投稿しましたが、症例報告ながらもインパクトのある仕事だと思っており、その後海外からの報告もあったことなどから、やはり、英文にしておくべきだったとつくづく感じました。
 我々の研究室では,発達障害、特に自閉症スペクトラム症の遺伝学的病因・病態解明研究を続けています。自閉症は、対人関係がうまくできない社会性の障害と、同じ行動を繰り返す常同性やこだわりの強さが主体です。マイクロアレーCGHという方法で、染色体の小さな欠失や重複が検出され、また、全エクソーム解析という全遺伝子の変異解析法で多くの病因遺伝子が同定されています。病態の中心は、シナプスの結合と機能の異常です。関連遺伝子は非常に多く、数百に及ぶと考えられます。一つの遺伝子が病因の患者が百人に一人もおらず、さらに、全エクソーム解析でも病因遺伝子が見つからない患者が30-40%います。多因子遺伝なども考えられ、遺伝子解析研究は混沌としています。解析していてもハッキリした結果を得るのが大変ですが、逆に、やれば何かが出る状態です。アメリカなどでは、数千人規模の大規模解析を行っていますが、我々は、めげずに、少数例でもコツコツと解析し、見つかった遺伝子を大切に解析していきたいと思っています。
 発達障害をやっていると、人間の行動パターンを、一つのことにこだわってじっくり取りくむ自閉症型か、落ち着きなく、注意・関心が拡散していくADHD型かに分類して考える習慣になってしまいます。私は、自閉症の診断基準に感覚過敏が入ったため自閉症の疑いも出てきましたが、取りかかりや整理が悪く、ADHDであることを自認しています。自閉症研究、遺伝子治療、さらには脳症の研究等々、ドンドン手を広げ拡散していますが、小児科には、小坂教授を始め、優秀なスタッフが揃い、バリバリと仕事をこなして補っていただいています。さらに、他科や他施設の先生方の力をお借りした共同研究も進め、子ども達の病気を治すため、邁進していきます。

(次号は、自治医科大学小児泌尿器科 中井秀郎先生の予定です)

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