自治医科大学医学部同窓会報「研究・論文こぼれ話」その47 同窓会報第102号(2022年10月1日発行)


反面教師の論文から学ぶ

             自治医科大学循環器内科学部門 星出 聡

 

興梠先生より、執筆のバトンを受け、「研究・論文こぼれ話」について述べさせていただきます。興梠先生とは、私が平成7年に山形大学を卒業して、研修医として東京大学付属病院に勤務したときにはじめてお会いして、最初の1年間研修をともにしました。私は平成9年から自治医大で勤務していますが、その後、興梠先生が自治医大に赴任され、また一緒の職場で働くことになっています。

2年ほど前から、機会があり日本高血圧学会の学会誌であるHypertension Research (2021年のインパクトファクタ[IF]ーが5を超えました!)Managing editorと、Blood Pressure Monitoring誌(こちらのIFは、1.5くらいです)のEditor in Chiefをさせてもらっています。これまで、私も他の研究者の先生方と同様にReviewerの依頼を受けて行ってはいましたが、編集側の立場になったことはありませんでした。今は、投稿される論文すべてに目を通すことになります。その中から、反面教師となる論文をいくつかご紹介します。まず、査読中の論文であるにも関わらず、Pub medに他の雑誌に先に公開されていた論文、これは二重投稿なので倫理的に絶対ダメです。一度Rejectになったが、結論もほぼ同じに関わらず、著者の順番などを変えて新規投稿として同じ雑誌に投稿してくる論文、これは二重投稿にはなりませんが、再度査読者にまわす負担などを考えてほしいです。Cover letterの内容と本文の内容が全く違っいる論文とか、著者リストに入っていない人がcorresponding authorになっているとか、「何を間違えるとこんなことになるのだろうか?」という論文もありました。最近では、「Paper mill」と思われる論文も多く投稿されてきているので注意が必要です(どういう論文かは、検索してみてください)。

上述した反面教師の論文などは論外ですが、これから論文を書いてみようと思っている先生方にお伝えしたいのは、研究内容については言うまでもないことなのですが、基本的な論文の体裁というのも大事なのです。ある雑誌のEditorは、同じ規定で投稿された論文ばかり目を通しているわけなので、突然、これまでの体裁が異なる論文が投稿されたら、よほど内容が突出したものでなければ、「読みにくい」ということで査読にもまわしてもらえないでしょう。いきなり略語が使われていてわかりにくい文章になっていませんか?図や表の書き方も、先人の書き方を真似しましょう。「巨人の肩の上に立つ」気持ちで論文を書いて投稿しましょう。

(次号は、自治医科大学成人先天性心疾患センター/循環器内科学部門 准教授 甲谷友幸先生予定です)




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