自治医科大学医学部同窓会報「研究・論文こぼれ話」その52 同窓会報第107号(2024年1月20日発行)
「よき指導者との出会い」
自治医科大学 保健センター 小川真規
感染免疫学の笹原先生からパスをもらいましたが、事務局からの連絡を見落としており、急ぎ執筆しております。何を書こうか悩みましたが、今回の依頼が「研究・論文こぼれ話」ですので、こぼれるほどのものがあるのか思いつつ、これまでの『出会い』について書いてみたいと思います。
研究というほどではありませんが、初めて論文(症例報告)を書いたのは、研修医の時でした。高齢男性で浮腫の精査で入院されていた方ですが、心疾患や腎疾患は否定的で、文献調査などを行ったところ、PS3PE症候群という疾患であることをわかり、指導医から『形に残しておいた方がよい』の助言を受け、指導いただき、症例報告として投稿しました。大した内容ではないのかもしれませんが、初めての論文であり、残る形として発表できたことのうれしさを感じたのを今でも覚えています。指導医には、手取り足取りではなく、その都度方向を示していただいたのですが、その指導がなければ学会での症例報告で終わっていたと思います。その後可能な限り『形に残す』を心掛けるようになり、指導医にとっては面倒だったとは思いますが、当時の指導医には今でも感謝しております。
研究らしい研究を開始したのは、大学院に入ってからで、所属講座のテーマであった遺伝子多型によるアルコール感受性について、マウスを用いて解析しておりました。マウスの繁殖、実験を繰り返しており、ネズミ使いのようでした。ある日、手技上の大失敗をしてしまい、指導教授から『ロケット打ち上げの失敗並みだ』と言われ、正直心が折れそうになったこともあります。しかし、その後フォローいただき、その実験に関して無事論文としてまとめることができ、最終的には、大学院在学中に3本執筆することができました。大学院時代に受けた指導(研究以外も含めてです)が、その後壁に当たり、厳しい状況に遭遇した際などで役立っており、当時は思うことがいろいろありましたが、後には『いい先生に指導いただいた』と思えるようになりました。その恩師とは今も交流を続けさせていただいています。
その後、再び一般病院に出ましたが、そこでも幸い、上司に恵まれ、家族ぐるみの付き合いをさせていただきました。研究好きな先生であり、少々引いてしまうことも多々あったのですが、『いい面』は見習わせていただき、今につながっています。
2009年から自治医大でお世話になっておりますが、これまでの指導いただいたことを礎に、細々とでありますが、研究にもいそしんでおります。研究について大きな流れを持てないのが悩みでもありますが。
このように、指導者には恵まれてきた方だと思うのですが、翻って、現在の自分は『指導者としてどうか?』、と思うことがあります。現在の所属上、直接誰かを指導するという場面は多くありませんが、学内外を問わず、指導することがたまにあり、その際、これまで受けてきた指導を思い出し、手取り足取りでなく、自分で考え、そして成長していけるようやっているつもりです(実際は分かりませんが・・・)。しかし、あまり相手が熱心でない場合は、難しいですね。
読者の中には、『なかなか腰が重く、論文作成までは大変。忙しいし。』また、『研究をしたいが、身近に指導してくれる適任者いない。』と感じている方もいるかと思います。そんな時こそ、CRSTの出番です。ぜひCRSTに連絡して下さい。CRSTには、よき指導者がたくさんいます。いい指導者にぜひ、出会ってください。そして、形に残すといううれしさを感じてもらえればと思います。中には『CRSTに連絡するのがハードル』、と思う方がいるかもしれませんが、全然堅苦しくないので、そこは思い切っていきましょう。優しく対応いただけると思います。
(次号は、自治医科大学医学部 皮膚科学講座 教授 小宮根 真弓先生の予定です)