会 の 歴 史

 

 元事務局長
 林 しん治
 横浜市立大学理学部


 今から半世紀以上前に、群馬大学の内分泌研究所(現在の生体調節研究所の前身)を中心として、内分泌研究者の集まりがありました。 これは、前橋にあるという地の利を生かして、 温泉に入り浴衣がけのリラックスした雰囲気の中で内分泌学全般について自由な雰囲気で語り合おうという意識があったと思います。 日本下垂体研究会は、そのような雰囲気を受け継いで、1976年に発足した「下垂体研究者の集い」に遡ることができます。 発足時の14名の連名で出された「下垂体研究者の集まりへのお誘い」(昭和51(1976)年7月5日)には、 「あまり形式ばらないで互いに腹蔵なく討論できる」場としてこの「集い」を作りたいとあります。 「集い」の設立時の考え方は、「主題は下垂体としてありますが、これを支配器官、標的器官から広い視野で眺めようという」ところにありました。 現在の「日本下垂体研究会」についてもこの基本的な立場には変化は無いようです。

  その後、1984年に「下垂体研究者の集い」の中心メンバーであった慈恵医大の吉村不二夫教授の退官記念時に、 国際シンポジウム(International Symposium on Pituitary Gland)を開催し、 翌年の第10回(大阪1985年)を区切りとして「勉強会」の形式から「学会」形式に変更しました。 1995年には、長らく事務局長を務めて下さっていた、帝京大学の塩田俊朗教授が退任され、林しん治に交代しました。 それまで「下垂体研究者の集い」の延長の雰囲気が残っていて、事務局長を始めとする会の役員の任期についての明確な規定がなかったことなどのために、 塩田教授に過度の負担がかかっていた様子がありました。 私が事務局長の役をお引き受けした後で、これらの問題点を整理し、会員の皆様のご意見を頂き、 平成8(1996)年7月23日付けで会則を全面的に改訂しました。 新しい会則では、会の役員を、会長、事務局長、幹事、評議員とし、とくに幹事は6名の少人数と定めました。 また、役員の任期は、会長は1年、事務局長と幹事は2年、評議員は3年として、役員の交代が容易にできる体制に代わりました。 その後、第14回学術集会(1999年、栃木)時の総会で、会の名称を「下垂体研究会」から「日本下垂体研究会 (The Japan Society for Pituitary Research)」 と変更することが決まり、翌2000年に開催された第15回学術集会(会長、北里大学、川内浩司教授)以降は、 「日本下垂体研究会」の名称で開催されています。 「日本下垂体研究会」の体制の整備が終了したので、埼玉大学の井上金治教授に後任の事務局長をお願いし、 現在は自治医科大学の屋代隆教授が事務局長として、本会の事務をとりまとめておられます。

 第16回、17回大会はそれぞれ曾爾教授(名古屋市立大学)、田谷教授(東京農工大学)を会長として開かれました。 そのころよりいわゆる「学会賞」を設けてはとの機運が起き、吉村不二夫先生のご好意をいただいて下垂体およびその関連領域で功績のあった研究者に与える 「吉村賞」が発足しました。 また、第18回大会は日本神経内分泌学会との合同学術集会として私(林)と牧野教授(東海大学)とで、横浜で共同開催しました。 研究の対象とするものは互いに似かよっていますが、それぞれ歴史が異なり、 結果として雰囲気の異なる二つの学会による合同学術集会は、お互いに啓発しあうものがあり、成功裏に終了したと思います。 第19回大会(会長、明治大学、加藤幸雄教授)は、合宿形式の勉強会的な雰囲気で開催されました。 第20回大会は、再び、両学会による合同学術集会として本学会の筒井会長(広島大学)と、日本神経内分泌学会の河田会長(京都府立医科大学)のもと、 沖縄で開催となっています。

 このように、「日本下垂体研究会」は30年を超えようとする長い歴史がありますが、 常に新しいスタイルを模索するとともに、初心忘れるべからずというように、形式にとらわれない自由な討論の場であることを今後も継続して頂きたいと願っています。

(2005年6月)



昭和51年7月5日
「下垂体研究者の集まり」へのお誘い


 梅雨があけ暑い日が続きますが、皆様方におかれましてはお元気にご研究の事とお慶び申し上げます。

 さて、現在の学会の趨勢をみますと、下垂体に関する関心が頓に高くなっているように思われます。 我国でも数多くの方々が各分野で下垂体に関する研究を続けておいでになりますが、情報や意見の交換の場が比較的少ないように考えられます。 関連学会もいくつかありますが、突っ込んだ意見の交換をする場としては充分ではないようですので、 学会と異なった形式による討論会を持つ必要が出てくるように考えられます。

 このような観点に立ちまして、発起人は、あまり学会のように形式ばらないで互いに腹蔵なく討論でき、 しかも各研究者の立場を理解する場を作ることで意見の一致をみましたので、ここに、 「下垂体研究者の集まり(仮称)」という自由な討論会を作ることに致したいと存じます。 主題は下垂体としてはありますが、これを支配器官、標的器官から広い視野で眺めようという立場をとっております。 第1回は「我国下垂体研究者の現況と問題点」ということでできるだけ多くの方々にお話をしていただき、我国の下垂体研究の動向をまとめ、 これをもとにして、第2回以降のテーマを選んで、会を進めたいものと思っています。

 このような集まりは、比較的時間のとり易い時期がよろしいかと思いますので、毎年1回夏休みの終わりの時期を選ばせていただくことに致しました。 経済的にもできるだけ個人負担の少ない形にもって行くつもりで、スポンサーなど探しておりますが、 発起人の一人、吉村不二夫教授のお世話で内藤科学財団の後援をいただける事になっております。

 なお、この集会にお誘いする方々は、基礎領域の方に限り、地位を問わず、第一線で活躍されている方々を一応選ばせていただきました。 おそらくは発起人の気付かぬ方で研究者リストにもれている場合もあるかと思いますので、ご推挙いただければ幸いです。

 どうぞご遠慮なく話題提供の申し込みをいただきたく御願い申し上げます。 申込者がどの位あるか見当がつきません。 従って一演題につき講演と討論時間をどの位にするかは今のところ不確実ですが、一人の持ち時間の合計を約30〜40分として、 ゆっくりした、いわば合宿形式による勉強会のようなものにしたいと考えております。 初回は以上のような形式で試みに催してみますが、次回からよりよい実際的な会に修正したい所存であります。

発起人
石 居   進     川 上 正 澄     黒 住 一 昌
小 林 英 司     佐 野 昌 雄     佐 野   豊
大 黒 成 夫     高 杉   暹     広 重   力
見 上 晋 一     山 本   清     横 山   昭
吉 村 不二夫     若 林 克 己            
以 上