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研究情報

[医学部] 小児・AYA世代の白血病に有効な治療薬を発見

2018年12月13日

1. 概要

急性Tリンパ芽球性白血病(T-ALL)は小児からAYA世代(思春期・若年成人)に多く発症する血液がんです。現在は骨髄移植と抗がん剤を組み合わせた治療が行われていますが、日本成人白血病治療共同研究グループによると1990年から2001年に治療したT-ALL(66例)の5年生存率は35%と、その予後は極めて不良です。中でも、白血病細胞の中枢神経(脳)転移がある患者では5年以上の生存が望めないことから、脳転移のある患者にも有効な新規治療薬の開発が切望されていました。

今回、自治医科大学・幹細胞制御研究部の大学院生(当時)齋藤詩緒里氏、菊池次郎准教授・小山大輔博士(本学30 期生)・古川雄祐教授らは、理化学研究所や山梨大学との共同研究により、中枢神経に転移したT-ALLにも有効な新規分子標的薬の開発に成功しました。

当研究部では、2015年にT-ALLの発症に遺伝子発現の制御に関わるリジン特異的脱メチル化酵素(LSD1)の関与を明らかにし、米国血液学会誌Blood誌に報告しました。ここから、LSD1に対する阻害剤がT-ALLに対する有効な分子標的薬になりうると考え本研究を開始しました。その結果、脳への移行性が優れ、特異性が高く低濃度で有効な新規LSD1阻害剤の創出に成功しました。このLSD1阻害剤は、白血病モデルマウスにおいて脳に転移した白血病細胞の増殖抑制と生存期間延長効果を示しました。今後、臨床試験によりヒトでの安全性と有効性が検証されれば、脳転移にも有効な世界初の分子標的薬として大幅な延命効果が期待できます。本研究は、小児とAYA世代に多いT-ALLの予後の改善に結びつく重要な発見であり、患者や家族と共に少子化の進む日本にとっても大きな福音となるものです。

本研究成果は2018年12月5日付で米国がん学会誌「Clinical Cancer Research」誌オンライン版に掲載されたほか、理化学研究所と共同で「リジン特異的脱メチル化酵素1阻害活性を有する新規化合物、その製造方法及びその用途」という名称で特許も出願しました。現在、臨床応用に向けて製薬企業と交渉を進めています。

本研究は、文部科学省科学研究費補助金、私立大学研究ブランディング事業、公益財団法人日本白血病研究基金、小林がん学術振興会、母子健康協会小児医学研究助成事業などのほか「がんの子どもを守る会」からの助成により行われました。

2. 論文名

Saito S, Kikuchi J, Koyama D, Sato S, Koyama H, Osada N, Kuroda Y, Akahane K, Inukai T, Umehara T, and Furukawa Y.
Eradication of central nervous system leukemia of T-cell origin with a brain-permeable LSD1 inhibitor.
Clin Cancer Res. 2018, [Epub ahead of print].

論文掲載先