2024年 診療実績
自治医科大学附属さいたま医療センター
心臓血管外科教授
山口 敦司
皆様には自治医科大学附属さいたま医療センター心臓血管外科の診療活動に、日頃よりご理解・ご支援をいただき、心から深謝申し上げます。
当センターで日本胸部外科学会に毎年報告している心臓大血管手術件数は、2024年の集計では447件でした。
そして末梢血管等を含めた全手術件数は794件でした。診療実績の統計にありますように、心臓大血管手術の約半数が弁膜疾患であり、弁膜疾患における大動脈弁狭窄症の患者数の増加は驚異的です。
この疾患群の増加傾向は、本邦における高齢者人口の比率増加による影響と思われますが、今後数年間は増加傾向が続くことが予想されます。
その現れとして、経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)の件数に関しては、この高齢者人口の増加のもと、年ごとに大幅な増加を続けておりますが、対象となる患者がハイリスク群であるにもかかわらず非常に良好な成績を残しております。
弁膜症手術では、小切開心臓手術(MICS)による僧帽弁形成術・大動脈弁置換術の比率が増えております。
大動脈弁狭窄症に対する最も低侵襲な治療はTAVIですが、十分に手術耐容能を持ち合わせている患者さんたちも低侵襲を考慮された手術を希望されるようになっています。
僧帽弁手術に関しても、患者さんや紹介してくださる先生方から低侵襲手術を望まれる声が確実に増えており、これまで当センターで標準的に行ってきた鏡視下僧帽弁形成術に加えて、2024年にはロボット支援下僧帽弁形成術を導入いたしました。
低侵襲手術へのこの潮流はさらに加速することが予想されます。
2023年4月の埼玉県大動脈ネットワーク発動以来、救急隊が急性大動脈症候群と判断した場合にはいち早く収容施設に連携をとるようになり、急性大動脈解離の搬送数が確実に増加しております。
急性大動脈解離患者の病院への搬送が以前よりも速やかに行われるようになったことが要因と思われますが、その反面で今までは施設にたどり着くことが出来なかった、より重篤な患者さんが増えているように見受けられます。
急性大動脈解離による心タンポナーデなどの破裂症状・冠動脈・腹部臓器・脳血管などのmalperfusionを併発している重篤な患者さん達をどのように救命するかが、今後の大きな課題であると考えております。
2023年の上尾中央総合病院に続いて、2024年4月からは茨城県つくば市にある筑波記念病院の心臓血管外科診療に携わらせていただくこととなり、チームを派遣することとなりました。
さいたま市そしてその周辺における循環器診療を円滑に進めるためには、さいたま医療センターのみならず、近郊にあるいくつかの関連施設とも有機的な連携が組めることが非常に重要な命題でありました。
埼玉県南部・東京都北部・そして茨城県南部に位置する、さいたま医療センター・さいたま赤十字病院・春日部中央総合病院・上尾中央総合病院・練馬光が丘病院・都立墨東病院・筑波記念病院が、
急性大動脈解離や大動脈破裂などの大動脈緊急症をはじめとした緊急症例にallianceとして対応することが確立されつつあります。
一方神奈川県では、横須賀市立総合医療センター(旧横須賀市立うわまち病院)が移転となり、新たな施設での診療が始まりましたが、横浜市立みなと赤十字病院と連携をとりつつ、神奈川県東南部地域における循環器診療の要所となりつつあります。
さいたま医療センターを含めた関連の各施設において、地域の患者様のために、地域の診療にあたる先生方からの診療要請を断ることなく、開設以来当診療科が心がけてきたポリシーを貫くべく、24時間・365日体制を整え、常に救急の要請にも備えております。
また、各関連施設がそれぞれ得意とする分野において、低侵襲治療とされている経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)・弁膜疾患に対する小切開心臓手術(MICS)・ロボット支援下心臓手術など、
高度でかつ先進的な治療法を、患者様の病態に合わせて提供できるような努力をすすめております。
地域の患者様・医療機関の方々のお役に立つことができますよう誠心誠意努力致しますので、引き続き、皆様からのご指導・ご鞭撻をお願い申し上げます。
手術治療数の推移と手術内容
心臓大血管手術症例数の経過、および2024年の手術治療内容をグラフで示しました。


虚血性心疾患:冠動脈バイパス手術の治療実績
現在、自治医科大学附属さいたま医療センターでは年間50-60件の単独冠動脈バイパス手術、および弁膜症や大血管手術と同時に行う複合冠動脈バイパス手術を実施しております。 近年の高齢化社会の影響によって、冠動脈バイパス手術を受ける患者様の年齢も上昇しています。また、併存疾患が多くなっている傾向も見られます。

心臓弁膜疾患の手術治療実績
当科における心臓弁膜症手術の治療実績を下記に示します。
現在、自治医科大学附属さいたま医療センターでは、経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)を除く心臓弁膜症手術を年間200-250件程度実施しております。
右小開胸切開での大動脈弁置換術・僧帽弁形成手術は、2022年度は30件実施しました。
また、経カテーテル的僧帽弁形成手術(mitral clip)も2021年度より導入し昨年は6件実施いたしました。
右小開胸心臓弁膜症手術やmitral clipは、来年度以降、さらに適応を拡大していく予定です。当科における心臓弁膜症手術の治療実績を下記に示します。
現在、自治医科大学附属さいたま医療センターでは、経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)を除く心臓弁膜症手術を年間200-250件程度実施しております。
僧帽弁閉鎖不全症に対する右小開胸僧帽弁形成手術も2021年度は16件実施しましたが、来年度以降、さらに適応を拡大していく予定です。
大動脈弁と僧帽弁双方に対する連合弁膜症手術や、虚血性心疾患や胸部大動脈疾患に合併する複合手術も数多く実施しておりますので、より安全で低侵襲な心臓弁膜症手術の実践を目指し、今後も発展していきたいと考えております。
また、感染性心内膜炎などの緊急な治療を要する心臓弁膜症疾患に対しても、引き続き、迅速に対応して参ります。
大動脈弁と僧帽弁双方に対する連合弁膜症手術や、虚血性心疾患や胸部大動脈疾患に合併する複合手術も数多く実施しておりますので、より安全で低侵襲な心臓弁膜症手術の実践を目指し、今後も発展していきたいと考えております。
また、感染性心内膜炎などの緊急な治療を要する心臓弁膜症疾患に対しても、引き続き、迅速に対応して参ります。

経カテーテル大動脈弁留置術の治療実績
自治医科大学附属さいたま医療センターでは、大動脈弁狭窄症に対する低侵襲手術である経カテーテル大動脈弁留置術(Transcatheter Aortic Valve Implantation: TAVI)を2014年から開始いたしました。 2022年12月までに473例の大動脈弁狭窄症患者様にTAVI手術を実施いたしました。TAVI手術件数の推移を示しますが、手術症例数は増加傾向です。 2021年は、手術実施症例は64例(平均年齢84.1歳)であり、在院死亡率1.6%(1/64)・脳梗塞発症率0%(0/64)と、良好な成績が得られました。

胸部大動脈疾患の手術治療実績
現在、自治医科大学附属さいたま医療センターでは、ステントグラフト手術を含めた胸部大動脈疾患に対する手術を年間150-180件程度・急性大動脈解離に対する手術を年間50-70件程度実施しております。 2007年の導入後、低侵襲なステントグラフト手術も年間40-50件程度実施しています。


腹部大動脈疾患の手術治療実績
当科における腹部大動脈疾患手術の治療実績を下記に示します。 現在、自治医科大学附属さいたま医療センターでは、主に腹部大動脈瘤を対象疾患として、手術治療(開腹手術+ステントグラフト内挿術)を年間120-150件程度実施しており、これは国内有数の規模を誇ります。 待機的手術に関していえば、開腹手術の在院死亡率は1.5%程度、ステントグラフト内挿術の在院死亡率は1%以下と良好な治療成績が得られています。

連絡先
心臓血管外科外来は毎日行っていますので、お時間に余裕があれば下記予約コールセンターまでご連絡ください。
お急ぎの場合は、心臓血管外科担当医師と直接相談いただければと思います。



![自治医科大学附属さいたま医療センター 外来コールセンター 048-647-4898 [ 平日 午前9時?午後4時 ]](../img/shourei/link01.jpg)
