令和2年度
長寿・障害総合研究事業/
長寿科学研究開発事業委託研究
「長期滞在型高齢者福祉施設における
効率的な感染対策プログラムの開発」班
資料・教材 感染対策のQ&A集

本研究のねらい

  長期滞在型高齢者施設では、免疫力の低い高齢者が集団生活をしており、感染症が集団発生・蔓延しやすく、重症化しやすい状況があります。また入所者の身体活動度が低い場合には頻回な身体接触を伴う介助を必要とする場面が多く、入所者の認知機能に問題があると自己衛生管理ができないなど、病院とは異なる感染症のリスク背景が存在します。例えば、全国の高齢者施設においてインフルエンザやノロウイルス胃腸炎が流行し、死亡者等も出ていることを報道などで見聞きされたことがあるでしょう。また、昨今の新型コロナウイルス感染症において、高齢者施設がクラスターとなりうる危険性についても多くの関係者が不安に感じているのではないでしょうか。このように現在、高齢者施設における適切な感染対策の実施の重要性が、過去類を見ないくらいに高まっています。   しかしながら、現状では高齢者施設における感染症の実態は不明なままであり、感染対策も十分に推進されているとは言い難い状況です。施設ごとに使用されている感染対策マニュアル等は、病院で使用されているものに近い内容となっており、高齢者施設の現状に合致していないことも多くあります。また施設の職員はトレーニングされた医療従事者ではない方が多いため、現存のマニュアル内容を十分に遵守できていない場合もあるでしょう。   この理由としては大きく2つが挙げられ、1つ目は「高齢者施設における感染症の実態が不明であること」、2つ目は「高齢者施設における感染対策の現状と問題点が十分分析されていないこと」です。高齢化の進むわが国において、高齢者施設の感染対策が重要になってきているにも関わらず、感染症に関する情報が極端に不足し、高齢者施設に特化した対策が十分に整備できていません。また、最近の海外の報告では、高齢者施設が多剤耐性菌の温床となって、一般病院へ耐性菌を持ち込む供給源となっている可能性が示唆されています。日本においても、学会等で高齢者施設からの耐性菌の持ち込みを問題視する報告を見かけますが、実態は不明なままです。現在、耐性菌の流行も世界的な大問題であり、様々な対策が求められているますが、高齢者施設に関する情報がほとんどなく、このことが現場における耐性菌への必要以上の不安や、逆に無関心を引き起こしています。したがって、正しい現状を明らかにすることには、大きな意義があります。   本研究では、感染対策の現状や耐性菌流行の現状を明らかにし、高齢者施設における効果的・効率的な感染対策のポイントを呈示していくことを目的としています。本来、セミナーや研修会を通して、皆様にお伝えすることが出来たら良いのですが、ご存知のように、現在新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、不特定多数による集合型の研修会等は好ましくありません。本ホームページに掲載される教育教材・研修教材をご利用頂き、各施設で研修会・勉強会等を実施して、高齢者施設における感染対策のレベルアップにつなげて頂ければと思います。   基本的な感染対策がしっかりしている施設は「感染症に強い施設」と言えます。感染症に強い施設は、新型コロナウイルス感染症にもしっかり対応できるものと思います。是非、感染症に強い施設づくりを目指して下さい。

研究連携のご案内

  高齢者施設における感染症・感染対策に関する研究は、わが国ではかなりマイナーな分野です。関連する論文発表・学会発表数も、重要度に比較してかなり少ないと言えます。また、本研究を通して、看護研究・介護研究などの現場研究を進めながらも、各施設で時には孤独を感じながら頑張っておられる方々にも出会いました。本研究班メンバーは、これからも高齢者施設の感染対策の推進のため、研究・活動を進めて参ります。ご興味がある方は是非ご連絡下さい。 研究代表者:笹原鉄平(自治医科大学) protozoa@jichi.ac.jp 分担研究者:阿江竜介・畠山修司・崔龍洙・浜端賢次(自治医科大学)