外科学講座 消化器一般移植外科部門

Department of Surgery, Division of Gastroenterological, General and Transplant Surgery,Jichi Medical University

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臨床研究

2020 年の挑戦

北山 丈二
消化器・一般外科 臨床研究支援センター 教授
東京大学 昭和59 年卒業

「外科における研究なんて何の意味があるんだ?」 初期研修を終え、入局した頃の実感であった。ただ、がんで死んでいった患者さんたちの姿が、頭を離れなかった。
早期がんは別として、有症状の進行がんは手術をしても、再発する、抗癌剤は全く効かない(当時の事情)。新米外科医は、毎日、喜々として手術に勤しむ反面、再発がんの人と話すことばを探すことが、もう一つの大きな仕事のように感じていた。「なぜ、人はがんで死ぬんだろう?どうせ、一時期メスを離れるなら、死に向かう人の心の中に差し込む希望の光のようなものが何か見つけられたらいいかな?」なんていう純朴な意識で踏み込んだのが研究の世界であった。

あれから4半世紀、外科医療は大きな変貌を遂げた。その一つがEBM の導入である。科学的根拠に基づいた合理的治療の実践というこの理念は、古い権威に基づく医療界に「革命」をもたらした。しかし、その一方で、データ捏造、改竄、COI 問題などのおぞましい副産物を産出した。この現象は社会問題にまで発展し、国民生活に重大な影響を及ぼすとの理由から、臨床研究を正しく制御、管理するという法律まで制定されるようになった。そのことは良い。しかし、この流れは医学研究を実施する側に膨大な負担をもたらす結果となった。倫理審査から始まり、IC 文書や検体の保存、データ管理、モニタリング、監査などなど、多忙な臨床医にとってはまるで「拷問」のような責務が課せられた。さらに、書類上の些細なミス等があれば罰則が科せられる可能性まで出てきたのである。

つくづく「妙」な世の中になったものだと思う。そもそも、私たち医師が行う医学研究の目的は、人類が病に対して行ってきた医療という行為に関する情報を統合して、今後、同じ病に苦しむ人たちにより良い治療を提供することに他ならない。要は、この主目的(今風にいうとprimary endpoint)を忘れないことに尽きるのであろう。法律だけで解決するはずがない。医療人としての基本的職業意識のボトムアップが要求されているに違いない。改めて言う。
臨床研究とは、医療者が患者の個人情報を利用して自己の利益となるモノを作成する作業ではなく、医療者と患者が共同して未来の人々の幸福につながる情報を見出す仕事である。だから、筆者は、そういう「意志」を持った患者さんたちに自ら進んで研究に参加してほしい。当然、患者側にそういう思いを起こさせる凛とした「風韻」が医療者側に備わっていなければ成立しない。でも、患者と医療者の間にそんな信頼関係を構築することこそが、医療倫理が求めるべき真のゴールなんじゃないかな?と思う。

1964 年、東京オリンピックの時、ガキの私をかわいがってくれた叔母が子宮がんで亡くなった。物心もつかない頃の突然の出来事でひどく動揺したが、子供心に「もう少し何かしてあげることがなかったのかな?」と思ったことを明確に記憶している。考えてみれば、この職業に就いて以来、様々な立場でいろんな人を診てきたが、そういう意識がずっと心の奥に棲み続け、driver として筆者の行動を規定してきたように思える。堅苦しい言葉で表現すれば、「医者としての矜恃」。おまえのおかげで随分苦労もさせられたし、損をしたこともあったけど、きっと、死ぬまでこいつと一緒なんだろうな、、、と思う。

今から3年後、東京に再び聖火が来る。時代が変わり、人の意識も大きく変化した。ただ、人として人の幸福を願う気持ちは決して変わらない。その気持ちがある限り、この医局に、温かな「志」を有した多くの外科医が活き活きと研究活動に取り組んでいるーそんな「未来」を実現できると信じている。「颯爽」とした若者たちに、会いたい。

 

研究について

上部消化管

研究課題研究内容研究実施期間
 進行胃癌、食道腺癌に対する術前化学療法の効果   2017年12月31日まで
 食道原発神経内分泌癌(NEC)におけるマイクロRNA発現プロファイルを用いた分子生物学的サブクラスの同定と治療効果予測分子マーカーセットの探索   2019年3月31日まで

下部消化管

研究課題研究内容研究実施期間
術前(化学)放射線療法を施行した
下部進行直腸癌における術後再発リスク因子の検討
   2018年12月31日まで
回腸人工肛門造設術を併置した大腸切除手術を施行された症例の遡及的検討   2019年3月31日まで
待機的な右側結腸切除術を施行された症例の遡及的検討   2020年3月31日まで

肝・胆・膵・移植

研究課題研究内容倫理委員会
承諾書
研究実施期間
 -難治性膵疾患に関する調査研究班共同研究プロジェクト-

重症急 性膵炎の局所合併症に対する治療の実態調査
    2018年3月31日まで
日本肝胆膵外科学会 プロジェクト研究
国際プロジェクト 日韓合同プロジェクト(日本側提案)

中部胆管癌に対するPDと胆管切除の比較(胆管切除後の追加PDの妥当性の評価)
     2020年8月30日まで
 膵切除術における周術期管理に関する検討      2018年3月31日まで
 十二指腸乳頭部腫瘍切除例の臨床病理学的検討      2018年3月31日まで
-難治性膵疾患に関する調査研究班
共同研究プロジェクト-
慢性膵炎に対する外科治療の実態調査と普及への課題解析
-多施設共同後向き観察研究-
    2018年3月31日まで
−難治性膵疾患に関する調査研究班
共同研究プロジェクト−
慢性膵炎による難治性疼痛に対する外科治療施行症例の検討
−多施設共同後向き観察研究−
    2018年3月31日まで
 神経内分泌腫瘍(NEN)肝転移に対する肝切除症例に関する後ろ向き研究     2017年12月31日まで
 症例登録システムを用いた腹腔鏡下肝切除術の安全性に関する検討
~前向き多施設共同研究~
    2020年3月31日まで
 「膵がん切除後の補助化学療法における塩酸ゲムシタビン療法と S-1療法の第Ⅲ相比較試験(JASPAC 01)」の附随研究 
膵がん切除例における補助化学療法の効果予測因子および予後因子に関する研究
    2020年10月31日まで
 ヒト由来褐色脂肪の解析ならびに新規肥満治療法の開発     2021年3月31日まで
 腹腔鏡下膵切除術の安全性に関する検討
~前向き多施設共同研究~
    2020年12月31日まで
胆嚢癌の診断と治療方針・予後に関する前向き観察研究 2022年3月

乳腺

研究課題研究内容研究実施期間
針生検にて非浸潤性乳管癌(ductal carcinoma in situ:DCIS)と診断された症例の臨床病理学的検討   2020年12月31日まで
トラスツズマブ併用化学療法における治療効果予測
ならびに予後予測に関する免役能評価による探索研究
  2021年12月31日まで
ER (Estrogen receptor)/PR(Progesterone Receptor)強陽性HER2(Human Epidermal growth factor Receptor type2)陰性の転移・再発乳癌における内分泌療法の効果とその後の化学の効果についての検討     2020年12月31日まで

その他

研究課題研究内容研究実施期間
抗血栓薬の周術期管理に関する検討   2018年12月31日まで
がん患者の体組成とバイオマーカーとしての有用性の検討   2019年3月31日まで
ドレーン排液に関する色指標の確立

2021年12月31日まで

消化器一般移植外科および臨床腫瘍科症例の治療成績に関する検討  

2020年3月31日まで