外科学講座 消化器一般移植外科部門

Department of Surgery, Division of Gastroenterological, General and Transplant Surgery,Jichi Medical University

TEL.0285-58-7371

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肥満外科手術

☆当院は、日本肥満症治療学会より「患者さんが安心して肥満外科治療を受けられる肥満外科手術実施施設」です。(2018年5月現在13施設。http://plaza.umin.ne.jp/~jsto/gekashisetsu/index.html

はじめに

肥満は高血圧症・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病をはじめとして、数多くの疾患の危険因子です。現在、世界人口の約3割にあたる21億人あまりは過体重もしくは肥満とされ、2010年に肥満・過体重が原因で死亡した人の数は世界で340万人と推定されています。肥満は世界規模で取り組むべき問題となっています。

日本でも食生活やライフスタイルの欧米化に伴い、肥満人口は確実に増加傾向にあります
肥満症治療の中心は、食事・運動・行動・薬物療法を柱とした内科的治療ですが、残念ながら約95%の方は長期的な体重減少を維持することは困難です。
現時点では『肥満外科手術』のみが、長期的な体重減少と肥満関連疾患の改善を図れることが証明されている唯一の方法となります。日本では年間300件程度しか行われておりませんが、現在では世界で年間57万件以上行われている一般的な手術です。 

 

肥満症に合併する病気

肥満であるかどうかは体脂肪量によりますが、体脂肪量をはかる簡便な方法が無いため、指標としてBMI(Body Mass Index:身長(m)の二乗に対する体重(kg)の比)が世界的に広く用いられています。WHOでは、BMI30kg/㎡以上を肥満と定義しています。一方、日本ではBMI25 kg/㎡以上を肥満としています。

BMI計算式は次のとおりです。
BMI指数 = 体重(kg) ÷ { 身長(m) × 身長(m) }
標準体重 = { 身長(m) × 身長(m) } × 22
肥満度の判定基準(日本肥満学会)は以下の通りです。
・18.5未満 … 低体重 やせすぎ
・18.5~25未満 … 普通
・25~30未満 …肥満度(1度)
・30~35未満 …肥満度(2度)
・35~40未満 …肥満度(3度)
・40以上 … 肥満度(4度)
です。

日本では、肥満に起因、関連する健康障害を有するか、そうした健康障害が予測される内臓脂肪が過剰に蓄積した場合で、減量治療を必要とする状態を『肥満症』と定義しています。肥満は疾患ではありませんが、肥満症は疾患であり、医学的に治療が必要となります。 肥満症の診断のフローチャートを示します。


肥満症診断のフローチャート(肥満症診断基準2011より引用)

 

肥満が原因となる健康障害は以下の通りです。

厚生労働省の平成26年「国民健康・栄養調査」によると、肥満者(BMI≧25 kg/㎡)の割合は男性28.7%、女性21.3%でした。本邦のBMI30㎏/㎡以上の肥満者の割合は3.5%(OECD Health Data 2012)、BMI35kg/㎡以上の高度肥満者は0.5%程度と考えられています。アジア人は欧米人と比較して内臓脂肪蓄積型肥満が多く、より低い肥満度で肥満関連合併症を合併しやすいと言われています。

肥満外科手術の手術適応

当院では日本肥満症治療学会のガイドライン(2013年版)の手術適応を採用しています。

手術適応

・年齢が18歳から65歳までの原発性(一次性)肥満
・内科的治療を受けるも十分な効果が得られず、次のいずれかの条件を満たすもの。
1) 減量が主目的の手術適応は、BMI35 kg/㎡以上であること。
2) 併存疾患(糖尿病、高血圧、脂質異常症、肝機能障害、睡眠時無呼吸症候群など)治療が主目的の手術(適応は、BMI32 kg/㎡以上であること。
ただしこの適応での手術は臨床研究としてのものであり、厳格なインフォームドコンセント、臨床登録および追跡調査などを必須とする。

保険診療による腹腔鏡下スリーブ状胃切除術の適応

・6か月以上の内科的治療によっても、十分な効果が得られないBMIが35 kg/㎡以上の患者であって、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、または睡眠時無呼吸症候群のうち1つ以上を合併していること。

肥満外科手術の術式

現在日本では主に4種類(腹腔鏡下スリーブ状胃切除術、腹腔鏡下調節性胃バンディング術、腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス術、腹腔鏡下スリーブバイパス術)の肥満外科手術が行われています。 当院では、保険診療での腹腔鏡下スリーブ状胃切除術を行っています。2017年12月に先進医療として腹腔鏡下スリーブバイパス術(腹腔鏡下スリーブ状胃切除術および十二指腸空腸バイパス術)が認められました。当院では保険診療での腹腔鏡下スリーブ状胃切除を主に行っておりますが、腹腔鏡下スリーブバイパス術の導入に向けて調整を進めています。患者様の病態に応じた術式選択を行っています。

腹腔鏡下スリーブ状胃切除術

特徴
・胃の大彎側を切除・摘出し、胃をバナナの様に細くします。 
残胃の容量は100ml程度になります。
・食事の摂食量の制限による体重減少。
・日本で最も行われている手術です。
・2016年4月現在、唯一保険適応となっている手術です。
問題点
・バイパス系手術に比べ、糖尿病の改善率が低い傾向があります。
・BMI 50kg/㎡以上の超重症肥満症の方に対する減量効果は限定的です。
・バイパス系手術に比べ、リバウンドしやすい術式です。
・術後に食道炎になりやすい。(食道裂孔ヘルニアや逆流性食道炎がある方は、逆流症状が強く出やすい傾向があります。)

腹腔鏡下スリーブバイパス術(腹腔鏡下スリーブ状胃切除術および十二指腸空腸バイパス術)

特徴
・スリーブ状胃切除術を行った後に十二指腸で切り離し、そこに小腸をバイパスします。
残胃の容量は100ml程度になります。
・食事摂取量制限の他に、バイパスによる栄養吸収阻害の効果も加わります。
・重症糖尿病の改善効果、超高度肥満症(BMI50kg/㎡以上)の体重減少効果はスリーブ状胃切除よりも高いです。
・ルーワイ胃バイパス術と違い、残胃の観察が可能なため、胃癌の多い地域では有利な術式です。
問題点
・生涯にわたりビタミン・ミネラルなどのサプリメントの摂取が必要です。
・スリーブ状胃切除術に比べて難易度が高く、縫合不全の可能性があります。

*2018年5月現在、先進医療の対象となっています。当院では、腹腔鏡下スリーブバイパス術の導入に向けて調整を進めています。患者様の病態に応じた術式選択を行っています。

術後の栄養療法

術後は、胃の容量が100ml程度に縮小するので、食べ方の工夫が必要です。減量効果を高め、栄養障害を起こさないために、栄養士とともにサポートしていきます。
詳細は、下記リンクをご参照ください。

減量効果を維持するためには、長期にわたる術後の栄養指導・運動指導が大変重要となります。術後は患者さんを中心とした、外科医、内科医、栄養士などからなるチームで治療にあたります。

修正手術(revision surgery)

肥満外科手術は効果の高い治療法ですが、体重減少や肥満関連疾患の改善効果が得られない場合もあります。腹腔鏡下スリーブ状胃切除術の糖尿病の改善効果は、小腸バイパス術を付加した術式よりも低く、食事摂取の状況ではリバウンドの可能性もあります。また、手術に伴う合併症として、薬物治療抵抗性の逆流性食道炎やスリーブ胃管の狭窄や捻じれによる食物の通過障害を来す可能性もあります。
初回手術の問題点を改善させる手術として、修正手術(revision surgery)があります。
バイパス系の手術も含め、様々な修正手術に対応しています。

当院の肥満外科手術への取り組み

当院では2010年7月より肥満外科手術を開始しました。2012年10月には先進医療施設として認定されました。2016年3月に日本肥満症治療学会より「患者さんが安心して肥満外科治療を受けられる肥満外科手術実施施設」に認定されました。(2018年5月現在13施設。http://plaza.umin.ne.jp/~jsto/gekashisetsu/index.html
肥満症を病気と位置付け、肥満症治療に習熟したチームで治療を行っています。
腹腔鏡下スリーブ状胃切除術後の経過は以下の通りです。2018年5月までに48例の方に手術を行い、減量効果・肥満関連合併症の改善効果において、本邦における治療成績と同等の良好な結果が得られています。



腹腔鏡下スリーブ状胃切除術の手術承諾書のリンクはこちら

 

外来受診の流れ

かかりつけ医より自治医科大学附属病院 消化器・一般外科まで紹介状を記載していただき、水曜日(午前・午後)・金曜日(午後)の上部消化管グループの外来を受診して下さい。精神科・心療内科に受診されている方は、そちらの紹介状も持参してください。

消化器・一般外科 主任教授:佐田尚宏(さた なおひろ)

上部消化管グループ(〇:肥満手術担当医)
〇細谷好則 (ほそや よしのり)  :教授
 齋藤心  (さいとう しん)   :講師
 倉科憲太郎(くらしな けんたろう):講師
〇春田英律 (はるた ひでのり)  :助教
 宇井崇  (うい たかし)    :助教
 松本志郎 (まつもと しろう)  :助教
 金丸理人 (かなまる りひと)  :大学院生
 高橋和也 (たかはし かずや)  :助教

参考文献

(1)春田英律 他、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術とスリーブ・バイパス術との違い:バイパスを付加することのメリットは何か? 外科と代謝栄養50巻4号205-212、2016