自治医科大学

自治医科大学病理診断部

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2013年実習体験記

6年 近藤 健介(実習期間:2013年4月8日~4月26日)

 今回病理診断で実習をさせて頂きました。病理診断を回りたいと思ったのは、私自身が病理学を苦手としていたこと、そして医師になってしばらくは病理診断を回ることができないため、今しっかり見てみたいと思ったことが理由でした。今までほとんどの内科と外科を回ってきましたが、内科ではカルテで病理診断の項目はよく見ましたし、外科では手術中に迅速診断に出す場面をよく見たので、病理学の重要さを感じる場面は多かったです。今回の実習で病理学を実際に体感し、より医療現場を深く体感できたらと思いました。3週間の実習で一番印象的だったのは、臓器の切出しでした。病理診断といえば顕微鏡で診断というイメージがあったのですが、診断において切出しはとても重要でした。切出しの段階で顕微鏡で見る時のことを考えないといけないので、切出しの段階で診断は始まっていると言えます。先生方の切出しを見学していると、この時点で既に疾患を想定して論理的に切出ししており、顕微鏡だけで診断しているわけではない、と思いました。  顕微鏡で診断もさせて頂きました。本を見ながら時間をかけて診断していたのですが、異常な所見と正常な所見の区別がつきにくく苦労しました。実際に診断がついてない標本を自分で診断するのはとても難しかったです。また授業や試験に出てくる所見はやはり典型例で、実際の診断では典型的な所見ではないものも多かったので大変でした。また、最終日には剖検例を発表させて頂きました。発表した症例は既に先生が診断されたものでしたが、自分で実際に標本や肉眼所見を見て、理論的に症例を考察するのがとても難しかったです。その分理解もしやすく、症例の疾患に関して理解が深まりました。発表の仕方も先生方からたくさんのご指摘を頂き、とても勉強になりました。症例発表等研修医になってからも発表の機会は多いと思いますので、今回のご指摘を生かしていけたらと思います。病理診断で実習したのは3週間と短かったですが、とても濃い3週間でした。一つの臓器だけではなく全ての臓器を理解する必要があるので頭の切り替えが大変でしたが、3週間で幅広く勉強できました。そして、病理学の重要性を知ることができました。異常のある臓器を生で見るので、身体診察や画像所見では診断がつかないものも診断できますし、症例の病態生理を理解するうえでも必要不可欠だと思いました。将来どういう医師になるかまだ私は決めていませんが、視野を広げるためにも病理学はぜひ勉強したいです。最後になりましたが、病理診断の先生方、スタッフの皆様、3週間ありがとうございました。

5年 松村うつき(実習期間:2013年2月4日~3月1日)

 選択BSLとして病理学診断部で4週間実習させていただいた。周りには病理学というと抵抗感を示す学生が多かったが、3年生時に病理学の講義や実習をうけてから、私にとって何となく気になる存在だった。4年、5年になり病棟での実習をするようになって、毎日がめまぐるしく過ぎていった。患者さんに問診をとったり、診察をしたり、検査所見をみて考察したり、机上の勉学とは違い1人の患者さんやその疾患に2週間をまるまる費やすこともしばしばだった。もちろんその中でうまく知識の引き出しを整理できればよかったのだが、膨大な情報量を処理できていなかった。1つの疾患をとっても単発の知識が宙ぶらりんで、他疾患との比較はなおさら、その疾患でさえも病態生理を考えて臨床所見とつなげる作業を怠っていて、系統立てて疾患を捉えられていないことに気づいた。病気がみえていなかった。だから臨床と照らし合わせて病態生理を考えたり、知識の整理の期間として病理学診断部での実習を選択させてもらった。実際の実習では、肉眼所見、手術検体の切り出しから検鏡観察・診断までの一連の流れを手伝わせてもらった。また剖検にも数件立ち会わせてもらったり、薄切・染色の作業を体験したりと充実した4週間であった。その中で一番時間を費やした病理診断レポートの作成では、肉眼所見から組織学的な所見まで一からご指導いただき、分からないながらも小さい発見の連続だった。初めはほとんど区別のつかなかった細胞や構造もレポートをこなすにつれて見えてくることに楽しさを感じた。組織球と孤立した腫瘍細胞の区別も、萎縮像と腫瘍の増生像の区別も何となくではあったが、判断できるようになった。実習後半には肉眼所見から、組織像・腫瘍像を推定して診断することの面白さを教えていただいた。ただ実際に肉眼所見から推定することは、経験を積んでいない私たちにとっては容易なことではなかった。先生方の多くが、肉眼所見と組織学的所見や、臨床像と肉眼像などをつなぐヒントを与えてくださったり、新しい発見と感心の実習であったと思う。実習を通した反省点としては、診断レポートにおいても、剖検症例の発表においても、もっと所見から医学的な追求できたんじゃないかという点である。どうしても目の前の作業に重きが置かれ、当初の目標であった系統立てて病態生理、臨床像とつなげることが不十分であったように思う。このことは今後の課題の1つとして興味をもって勉強したいと思った。 最後になりましたが、ご多忙の中、学生実習に時間を費やしてご指導下さったことに感謝申し上げます。この4週間を通して、病理医の業務の楽しさ・学問的な範囲の広さを垣間みれた気が致します。本当にありがとうございました。

5年 福田冬馬(実習期間:2013年2月4日~3月1日)

 本学の病理学の講義はとても充実しています。2年生時の病理学総論、3年生時の病理学各論および実習で病理学の基礎を身に付け、4,5年生に行われるCPCで臨床と病理のつながりを学ぶことが出来ます。このような手厚い指導にも関わらず、病理が苦手であった私ですが、選択実習ではより丁寧な指導が受けられるという噂を聞き、4週間病理診断部で実習することを決めました。  最初はとにかく、ちんぷんかんぷんだったミクロ画像を何とかしたいと思っていましたが、病理診断はまず肉眼像の観察から始まることを教わりました。例えば同じ肺癌でも、こっちは充実性で内部に黄色調の壊死が目立っているから扁平上皮癌、あっちは含気が保たれていて腺癌にみえる、などといった具合で、初めは「こんなのわからないよ・・・」と思っていました。しまいに、「病理診断は肉眼である程度ついていて、ミクロはその答えあわせをするだけだ」と言われたときには、ミクロをみても疾患が分からない私が、肉眼像まで分かるようになるのだろうか、と思いました。しかし、肉眼像を観察した後に標本を見ると、「確かに、扁平上皮癌では肺胞破壊性に充実性に増殖していて、中心部には壊死がある。この壊死が、肉眼で黄色く見えているのか」とか「腺癌の含気が保たれているのは、肺胞壁にそって腫瘍細胞が増殖しているからなのか」ということが分かり、自分の中で肉眼像とミクロ画像が繋がって、すんなり理解することが出来ました。肉眼観察をして、どのような病理像になるか推測して、ミクロで答えあわせをする。これを繰り返して4週間経った今では、検体が来たときに、肉眼所見をとりながら、ある程度の根拠をもって、ミクロ画像が推察できるようになったのではないかと思います。また、ミクロ画像の見方のコツも教えていただきました。私はどんな標本でも、とりあえず20倍、40倍とレンズを変え、とにかく拡大してみようとしていました。しかしそれでは、あの大きな検体のごくごくわずかしか見ることが出来ず、疾患の特徴を把握することは出来ません。先生に言われたとおり、まずは弱拡大で標本全体をサーチし、異常があれば、癌なのか炎症なのか、線維化しているのかなど、肉眼像と見比べながら考えるように努めました。そして、その後にやっと拡大しての観察に入ります。そうすると、あんなに見えなかったものが理解できるようになり、世界が広がったような不思議な感覚がしました。今回の実習では、上記のほかにも様々なことを教えていただきました。私自身、病理の基礎的な考え方、が少しできるようになってきたのかなと思います。そして、病理は理解できるようになると、臨床との繋がりも見えて、とてもおもしろい分野であると感じました。4週間にわたり丁寧なご指導をして下さり、このような気持ちを味わわせて下さった先生方および、薄切や染色の仕方を指導して下さった検査技師の皆様に、この場を借りてお礼申し上げます。本当にありがとうございました。

5年 鈴木秀平(実習期間:2013年2月4日~3月1日)

 私が病理実習を選択した理由は、「今後自分が医師になり、9年間地域で働く間に病理を勉強できる機会はあるのだろうか」と思ったためでした。これまでの病棟実習でも、臨床の場で病理所見の重要さを感じる場面が何度もあり、また研究の分野では必須となる知識であると感じていました。そういう経緯で、今回病理の選択実習を行うことに至りました。しかしここで私が勘違いしていたことがありました。病理と聞くと、3年次の病理実習がイメージされ、選択実習でも顕微鏡を覗きながらスケッチするのがメインなのかな、と考えていたことです。しかし実際実習が始まると「肉眼初見」の重要性、つまり肉眼での特徴をまず捉え、それに組織像を合わせて診断をする流れを知ることとなりました。中には肉眼だけでもかなり鑑別がしぼられるものや、悪性かどうか、予後はどうかの予想ができるものもあり、その技術を学ぶことが出来たことは貴重な経験となりました。3年に行う病理実習でも、肉眼も含めた病理診断の実習が増えれば皆病理への関心も深まるのではと感じました。また5年の間は外科系を実習してきましたが、そこで取られた臓器がどのように処理され保存されるのかということや、迅速診断はどのように行われているのかということは正直なところあまり考えたことはありませんでした。しかし、病理サイドに立ってみると、そこでどのようなことが行われているかを知ることが出来ました。さらに、「この検体がどのような経緯で、このように切除されたのか」「何を目的に迅速が出されたのか」という情報を合わせて考えることは非常に面白く、興味深いものでした。そんな実習の中でも一番興味を引いたのは剖検でした。今回の実習中では二件の剖検を見学する機会がありましたが、死因を解剖と鏡検で考察していくことは非常に面白く感じました。来年から四年生からあるCPCの講義が減るということを聞きましたが、大変残念に感じます。チューターの鈴木先生にも大変お世話になりました。私が見よう見まねで書いた病理診断レポートを毎回丁寧に添削して下さり、自分がどのような点を間違えたのか振り返ることができました。また学生CPCの発表準備ではお忙しい中、全身各臓器にわたりどのように所見を取るかを教えて下さり、発表もどうにかうまく行うことができました。  一カ月では当然病理診断の全てを理解することはできませんでしたが、検体を見たときの考えた方や捉え方を知ることができました。今回の経験をきっかけにして今後医師としてどのように勉強していくか、考えていきたいと思います。

5年 石田将路(実習期間:2013年1月7日~2月1日)

 病理診断部での研修は、各種の臓器に対しての診断の流れについてと、診断時に記載するのに不可欠な情報があることについて特に学ぶことができたと思います。  検体の処理、切り出しの過程では、マクロでの診断の重要性について再認識させられました。病変の形や硬さ、進展形式などといった性状で、病変を推測したことが非常に勉強になったと思います。また、切り出しの方法を実際に自分の体で体験できたことは非常に有意義でした。プレパラート作成、染色の過程ではスタッフの方との意思疎通が大事であることもこの研修を通して学べましたし、腎生検・乳腺などでの蛍光染色、免疫 染色の診断・治療に寄与する大きさも学ぶことができました。診断のレポート作成も数多くの症例について、何度も思考し、諸先生方とディスカッションをさせていただき、最終的に自分なりにレポートを作成させていただくことができ大変勉強になりました。  また、今回は、腎生検についてより深い勉強をしたいという希望を叶えて下さり非常に感謝します。チューターとして、数多くのことをご教授いただいた鈴木先生には、大変多くの症例についてディスカッションさせていただきました。IgA腎症、微小変化型ネフローゼ症候群、MPGN、膜性腎症、SLE、糖尿病腎症、腎硬化症、半月体形成糸球体腎炎といった数多くの糸球体腎炎の症例についてに、自分なりに考察し、そしてより深い理解と病理像の概要について知ることができたと思われます。研修期間中に遭遇した、難しい症例については、光顕、免疫 染色、蛍光染色、電子顕微鏡の各所見について長い間検討させていただき、最終的に発表とする形にすることができたことには、本当に感激の思いであります。  今回の研修は、病理医の役割や実際についてや各臓器の病変についても多くのことを学ぶこともできました。病理医のレポートにより、治療方針が決定されうるため、病理診断の際は、患者の病状を必ず知り、臨床の検査データを知ることの大切さを身に染みて知りました。また、各臓器の病変についての病理の側面から鑑みた進達度や悪性度、クラス分類や重症度についての知識を知ることができ、各科に対する興味も増加したように思われます。今回学んだことは、臨床医になるにしても、病理医となるにしても非常に有意義なことでした。今回の研修で、病理医に対するイメージが形成され、病理医になろうとするのことに対し、明確な目標を見つけることができたと思います。今回、福嶋教授をはじめ、数多くの先生方にお世話になりました。本当に、このような機会を作ってくださりありがとうございました。この機会を糧により勉学に励みたいと思います。

5年 江島有美香(実習期間:2013年1月7日~2月1日)

 病理診断部での1ヶ月の実習は本当に「あっ」と驚き、「見えないものが見えてくる」、そんな体験をたくさんできた1ヶ月だった。はじめのうちは、検体を切るのも下手で「引いて切る」という感覚も分からなかったり、ホルマリンで眼や鼻の粘膜が刺激され涙や鼻水が止まらなくなったり、検体の写真がカメラでうまく撮れなかったりと、色々なハプニングもあった。カメラ女子というものが流行り、同学年の女子が料理教室に通っている中、いかに自分が流行に乗らず、料理もせず、女子力を磨かなかったかということが後悔された。自分の女子力のなさを痛感した、そんな1ヶ月でもあった。しかし、徐々にホルマリンにも慣れて、病理医の仕事の流れもつかむことができ、純粋に病理を楽しむことができた。  「見えないものが見えてくる」という言葉を1ヶ月のうちに何度となく聞いたが、本当に毎日が、新しい発見の連続であった。消化管の内輪筋と外縦筋の境界が見える様になったり、同じように見えていたリンパ球にくびれが見えてきたり。指導医の先生の何気ない助言や発言によって、こんなにも今までみていた組織片が違うように見えてくるのか、という瞬間が何度もあった。つい最近、旧寮の跡地にあった1本の梅の木が引き抜かれ学生食堂の隣に移動したらしい(もちろん私は気づかなかった)が、日頃何気なくみている景色も意識して見ると、もっとたくさん発見があるのではないだろうか。マクロでさえ気づかないことがたくさんあるのだから、知識をもって顕微鏡をのぞけば、ミクロでは発見がもっともっとあるのであろう。たくさんの症例の切り出しを体験したが、特に印象に残った症例は、「十二指腸のGIST」だ。臨床科からの病理検査申込書には、「膵嚢胞」と書かれていたが、実際に検体を触って、割面を入れて、肉眼で観察すると、十二指腸に由来する腫瘤性病変であり、画像診断にも限界があることが分かった。鑑別を挙げて、顕微鏡をのぞいて、追加でオーダーすべき免疫 染色を考え、文献を読み、疾患について学んだ。「GIST」という一つの同じ疾患であっても、消化管の部位によって組織像に特徴があり、病理診断の奥深さを感じた。組織像を顕微鏡で観察した後には、膵管と病変との関係を3Dで把握する作業もあった。まず正常構造を頭に浮かべて、それをふまえたうえでイメージする、というのがポイントであった。肉眼所見をとっていく中での画像所見と実際の病変との対応や、できあがった組織像から立体的な病変の把握など多くの事を学べた症例であった。また、患者情報だけでなく検体情報も重要であることが分かった。直接には、患者さんと触れあうことのない病理医にとって、臨床経過(特に過去の診断や治療の有無や内容)や臨床診断に加え、生検であれば採取部位、手術切除検体であれば切除範囲や検体の向き(オリエンテーション)は必須である。見た目には同じような組織片であっても、それぞれが患者の体の一部であることを忘れずに向き合うことの大切さを学んだ。ほんの少しの組織片から様々な情報を引き出し、その結果を臨床にフィードバックし共有することで、患者の予後や治療方針を大きく左右するということが分かり、医療における病理医の責任の大きさを感じた。

5年 藤田和樹(実習期間:2013年1月7日~2月1日)

 病理診断では、「見えないものが見えてくる」という言葉の意味を痛感することが多かった。すなわち所見について知識を持ち、その所見が存在しているか探そうとする眼で顕微鏡を見ることによって、知識を持つ以前には全く見えていなかった構造が見えてくるという経験を幾度も経験することができた。この繰り返しを経て、正しく診断できたこともあり、知識があってはじめて認識できるということを身を持って体験することができた。マクロでの剖検例の解剖では、5学年になりある程度の知識を持った上で、全身の解剖を確認することができたため、非常に勉強になった。また複数の症例を見ることができたため、病変と同時に正常構造を勉強する好機ともなった。切り出しでは、これまでの「病理はプレパラート」という思い込みが消え、肉眼所見が如何に重要であるかがわかり、割面を入れて観察することで診断の予測が可能な症例が多いと知った。このことは私にとって大きな驚きだった。またプレパラートになるまでの過程を見て、実際にどこを切り出すべきか考えることを通じて、悪性腫瘍、良性腫瘍での病変の進展の違いなどを確認することができた。さらに、例えば子宮筋腫と子宮腺筋症とは肉眼所見で違いがあることなど、実際の検体を見て、病態に戻って考えると納得できるという形で理解が深まったことが非常に良かった。迅速診断では、これまでの外科BSLで手術室で摘出するまでを見学してきた検体がどのように処理され、プレパラートになり、診断されるに至るのかを見ることができた。医師の先生以外に技師の方に教わることもあり、通常の検体と異なる処理をすることや、実際の処理方法を教えていただけて勉強になった。診断の中で免疫 染色の標本を見る機会が多かったが、免疫 染色によって染色される部位が細胞質、細胞膜、核と異なり、主なマーカーにどのようなものがあるのかを教えていただけたことで、免疫 染色の原理について間接蛍光抗体法等を復習できた。免疫 染色が現在の診断に大きく寄与していることがわかり、今回の実習で基礎から学べて良かった。また乳癌検体ではFISH法の様子も見学でき、その幻想的な画像に心奪われながら学ぶことができた。この時期に病理を集中して勉強する期間を持てたことで、疾患を病理像という側面からもイメージすることの重要性がわかった。また単純に、これまで抱いていた強烈な苦手意識が払拭されたことも、私にとって非常に喜ばしいことであったと感じている。今回学んだことを今後の勉強に生かしていきたいと思います。4週間お世話になり、懇切丁寧なご指導をいただきありがとうございました。

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