自治医科大学

自治医科大学病理診断部

自治医科大学病理診断部

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2021年実習体験記

山田直樹(2021年4月)

 約4週間という短い期間の中で、またこのように無事に実習を終えることができて本当に良かったです。病理診断部の先生方には、丁寧にまたわかりやすく御指導頂きまして、感謝しております。
 病理診断部は、手術での迅速診断では良く耳にしておりましたが、実際にどういった業務を日々行っているか、分からない診療科でした。実際に実習をまわると、顕微鏡に向かい作業するだけでなく、剖検や切り出し、診断、まで幅広く行なっており、またそれを体験させていただきました。自分で切り出した標本を、顕微鏡で診断する一連の流れもやらせていただきましたが、なかなか先生方のように正しい診断をするまでは難しいものでした。また、診断するまで時間がかかってしまい、まだまだ自分の勉強不足を痛感しました。
 実習初日から、自分の中で自分なりの目標を立てて臨みました。一つは、病理学をもう一度復習していくことです。これは4週間で7割程度は達成できたと思います。しかし、全く知らないこともかなり多く、毎日新しいことを学ぶばかりでした。たとえば、今回私が担当させていただいた剖検の症例は、肺動脈内膜肉腫という非常に頻度が少ない疾患でした。そこから肺血栓塞栓症との鑑別や、右心不全が起こること、など多くのことを学びました。この疾患は、一生で一度出会うか分からない症例かもしれません。そこから臨床でどういった検査を選択すればよかったのか、などできるだけ今後に活かせるように学習できたかなと思います。
 また、もう一つの目標として、臨床での対応や経過をできるだけ想像して臨むことでした。課題として渡された標本や切り出した標本を単なる標本としてではなく、患者の検査、治療の一部として考えることでした。どういうことかいうと、担当した患者の実際のカルテを見て経過を確認しながら、手術での標本をみるという作業を必ず行いました。多少時間はかかりますが、X線写真やCTといった画像検査での病変の見え方や、経過への影響、治療や対応の変化など今まで見落としていたことまで学ぶことができたと思います。また、自分では検査が追加できたか、なども考えながら実習を行いました。この二つの目標は十分に達成できたわけではありませんが、実習がより身になるものとなったと思います。
 学生での実習は、これで最後になってしまいましたが、最後の実習で貴重な経験を積むことができました。自分はまだ志望している診療科を迷っておりまだ決めかねていますが、内科でも外科でも生検や細胞診は必ずやることになると思います。その時に、今後の実習が生かせるようにこれからも学習に励みたいと思います。
 最後になりますが、4週間福嶋先生をはじめ、メンターの辻先生や丹波先生、病理診断部の先生方には大変お世話になりました。本当にありがとうございました。

平田裕太郎(2021年4月)

 将来、僕たち自治医大出身者はへき地で働くことになります。へき地では様々な疾患、症状を抱える患者さんを総合的に診る能力が必要となります。それゆえ、病理診断のような専門性の高い分野に触れる機会が少なくなってしまうと考え、今回選択させていただきました。
 病理が大得意というわけではありませんが、病理の試験の成績もそれなりに良かったので、多少の自信を持って実習に臨みました。しかし、その自信は根底から崩れ去りました。僕は何もわかっていなかったのです。「これは癌なのか?癌だとしたら何癌なんだ?扁平上皮癌?腺癌?」「これ癌真珠であってるのか?細胞の結合性ってなんだ?」「リンパ節転移あり?なし?」といったように、「?」の連続でした。ふと、思い返してみると、学生における病理の勉強は典型例を見たり、扁平上皮癌だと認識してから見たりと診断→根拠の順が多いような気がします。扁平上皮癌だから癌真珠を探していたのです。一方で、実臨床では根拠→診断の順が多いわけです。「これが角化していって、これが癌真珠で、細胞間橋が見えて、結合性も強めで、包巣状で、、、だから扁平上皮癌だな!」となるわけです。つまり、角化、癌真珠、細胞間橋が自分で指摘できないと診断もできません。この視点が自分には十分に足りていなかったことを痛感しました。その後、先生方の教えもあり、実習を積むに連れて根拠が少しずつわかるようになっていき、「?」が「!」に変わるのを実感できました。また、白黒つけることの難しさを感じました。例えば、迅速診断であれば短い時間で転移の有無を判断しなければなりません。この結果次第で術式変更、追加切除、リンパ節郭清の追加など方針が変わります。それゆえ、ひとつの標本を素早く丁寧に観察したり、書籍を用いたり、複数人で議論したりする先生方の姿が印象に残りました。患者さんの治療に直結するからこそ、迷うところは迷い、わからないところはわからないとし、話し合い、教えを請う姿勢は大事なのだと感じました。
 今回の実習のおかげで、病理の考え方、大切さ、奥深さ、面白さなどたくさんのことを学ぶことができました。この経験を財産にし、将来は医師として努力を惜しまず頑張っていきます。わずか1ヶ月でしたが、とても充実していた期間となりました。メンターをしてくださった丹波先生をはじめとした先生方、病理診断部の技師さんの方々、スタッフの方々、ご指導していただきありがとうございました。
 後輩のみなさんへ。病理診断部での選択実習では、先生方から優しく丁寧に教えていただけるので、とても勉強になります。また、検体の切り出しや診断の下書きなど仕事の一部を実際に体験させていただけます。病理が好きな人はますます好きになり、苦手な人も「病理って面白いかも。」と思える実習だと思います。ぜひ病理診断部を選択しましょう。

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