Vol.27  No.4 2008 


オープンアクセスの動向

図書館長 浜 本 敏 郎

 新学期を迎え、図書館でもいろいろなことが新しくなりました。まず、3階閲覧室の階段の正面に休憩室ができ、館内での飲み物についての規則も変わりました。新着雑誌用の書架が新しく、また場所も広くなり、最新号を読み易くなりました。さらに土日、祝日の開館時間が平日と同じ午前9時から午後10時までとなりました。詳しくは図書館のホームページをご覧ください。
 外国学術雑誌の値上がりの傾向は相変わらずですが、2008年も館員の経費節減努力と、契約を電子ジャーナル主体に切り替えることにより、タイトル数を維持することができました。外国学術雑誌の半数近くがオンラインのみの契約に切り替わりました。残りの冊子体購読を継続している外国雑誌も大部分がオンラインでも読めますが、これらも安定して最新号までオンラインで閲覧できるようにすることを目的に2009年度以降、オンライン主体の契約とし、冊子体は経費削減のためになくす方向で検討を進めています。
 和雑誌については、昨年度約600誌を提供するメディカルオンラインを導入しましたが、外国に比べ出版社の電子化への対応がまだ進んでいないことと、オンラインの価格が冊子体に比べかなり高額となるため、電子化するものはすぐには増えないと予想されます。国内雑誌でオンライン化が高額となるのは、冊子体の価格は(外国学術雑誌と異なり図書館価格が無いため)個人で購入する場合と同じですが、オンラインの場合は国内の出版社も高額の図書館価格を設定しているためです。
 外国学術雑誌の価格上昇に関連することですが、2008年はオープンアクセス運動にとって一つの転換点となります。オープンアクセス運動とは、電子ジャーナルに出版される論文を無料で公開するよう、出版社や研究者に呼びかけるものです。一例は公開を引き受けるシステム(電子レポジトリ)の設立です。有名なものはSPARCやPubMed Centralがあります。国内でもNII(国立情報学研究所)が提供していますし、各大学でその大学での研究教育成果を公開するための電子レポジトリを整備するところが増えています。今月から始まった自治医科大学紀要の公開も機関レポジトリの一つと言うことができます。しかし全体から見ればまだ僅かです。もう一つのオープンアクセスの方向は研究者が(または研究助成する側が)出版費用を負担するもので、著者が投稿料(雑誌によって500-1500ドル)を支払えばその論文については出版時から無料で公開する選択肢を設けている雑誌もあります。
 それに対して、研究助成機関のほうから、オープンアクセスを求めるべきだとの声がありましたが、本年4月から、NIH(米国国立衛生研究所)の助成を受けた研究を査読のある雑誌に出版する場合はPubMed Centralへ預託すること、また5月以降のNIHへの助成申請に、論文を記載する場合はPubMed Centralの預託番号をつけることを義務付けるようになります。根拠となるNIHの新規則はNIHの助成金を受けた研究について出版の日から12ヶ月以内に無料で公開されることを求めています。これは、税金で行われた研究の成果は一般に開かれたものであるべきだとの考え方によっており、PubMedの利用者の3割以上が患者かその家族であると言われる米国の納税者の声を反映したものです。
 NIHの新方針が学術誌にどのような影響を与えるかはわかりません。最新号を読みたければ、無論有料での購読となりますが、これらの動向を踏まえスムーズに文献を読める環境を維持発展させていきたいと願っております。


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