Vol.27  No.6 2008 


本の選び方

看護学部教授  竹田津 文 俊

 先ほど、テレビを見ていたら、最近の書店で読者の本の選び方(購入の仕方)を報じていた。売れ筋ランキングの高い本がよく売れるのだとか。自分なりに興味のある本を購入することを心がけている私には、信じられないことです。
 私が、本を購入するようになったのは中学生のころです。そのころは、友人につきあって書店に行き、つられて何か買うという程度だった。その程度のきっかけで手に入れる本だから、読み出しても読破することなく、途中で投げ出してしまうことが多かった。
 高校に入り、ふと手にした本を読み、それに魅了され、その作者Aの他の作品をたくさん読みました。これが、ある意味では興味を持って読書を始めるきっかけとなりました。また、その作者Aの全集をもそろえました。そのころより、その作家Aを通して様々な作家の存在を知るようになり、書籍から得られる知見に対する興味(あるいは好奇心といってもいいかもしれませんが)が広がっていきました。そのころより、毎日のように高校からの帰りに書店・本屋に立ち寄りそこにあるたくさんの本をめくるようになりました。
 さて、閑話休題。前置きが長くなりましたが、本題は、書店・本屋に行くという行為です。私の場合、本を読む・購入するきっかけは、まず実物の背表紙を見、頁をぱらぱらとめくったときの興味です。新聞の書評を読んで購入するときもありますが、購入のきっかけの基本は実物を実体験することです。
 本学の卒業生としてのへき地の勤務時代、本を実体験するために、毎週のように県都に出、大きな書店の書棚を覗いたことを思い出します。そのころ購入した本が私の書棚にあります。今思い返すと、私の勤務地にいた中学生や高校生は、私のような体験ができたのでしょうか?確かに学校の図書館や移動図書館はありますが、自分の所有物としての書籍を体験できたのでしょうか。本稿は図書館だよりですが…。へき地には、本屋が少ない。余談ですが、私の勤務した村では、診療所の開設と交通信号機(赤、黄、青)設置がほぼ同時でした。いずれも村で一つでした。もちろん、本屋はありませんでした。
 さて、最近の本屋さんは随所に試し読み用の椅子と机を用意してあります。気の利いたところでは、喫茶を楽しみながら試し読みができます。自治医大の駅前にもそのような本屋がありましたが…。
 本の購入でやっかいなことの一つに「絶版」があります。数年前たまたま立ち寄った書店で時代劇物の第一巻を買い求めました。しばらく放り投げて置いたのですが、その第一巻を最近読みました、さて、第二巻をと書棚を探しましたがありません。二巻以降を購入していなかったことに気づきました。早速書店に行き買い求めしましたら、その第一巻から八巻は絶版になっていました。あわてて、娘に頼んでインターネットで古本を購入という始末でした。特に文庫本は、一度逃すと手に入れにくい気がします。
 本を購入すること最大の利点は、自身の所有物としてその本に印や線を入れられるということです。あまり、再読は致しませんが、ロシア物のような長編を読むとき登場人物に印を入れておくだけでもとても便利です。推理小説でも同様です。
 日本人の識字率はどの程度か知りませんが、何か印刷物を手にとって読む姿は方々で見うけられます。例えば、電車のなかでた他人の読み古した雑誌や新聞を探し求める光景が目に浮かびます。日本の教育の成果だと思います。
 最後に、あまり自分の読んだ本を人に明らかにしたくはありませんが、自分の意識を変えた本として、一冊紹介します。夏目漱石の「虞美人草」です。T書房、I書店、S社の三種類で楽しみました。


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