Vol.28  No.11 2009 


日中両国における大学図書館について

感染・免疫学 吉 林 台 (ジリンタイ)

  私は自治医科大学医学部感染・免疫学講座ウイルス学部門にポストドクターとして勤めている吉林台(ジリンタイ)と申すものです。これまでに私は、中国での修士課程・大学講師、日本での博士課程、国立研究機関での研究員や大学でのポストドクターなど大学および研究機関を中心として研究活動を行ってきました。その際、文献資料を集めるために図書館を利用してきましたが、そこで体験してきたことや日本と中国の違いについて紹介したいと思います。
 1994年に中国内モンゴル農業大学での修士課程を修了後、同大学助手・講師として2001年10月まで在籍していました。この頃の大学図書館は電子化が遅れていたため、文献検索には様々な年鑑・インデックスが頼りでした。また、国内文献は所蔵の学術雑誌に限られ、国外文献に関しては当年のものはなく、一年以上古い目録しか所蔵されていませんでした。教員達は最新文献、又は原文を入手するために、北京まで出張し、中国科学院図書館・中国農業科学院図書館等で検索しなければなりませんでした。さらに、国外文献においては取り寄せてから郵送してもらうため、かなりの時間と経費がかかっていました。
 大学図書館での本の貸し出しに関しても、学生は勿論、教員も蔵書庫に入る事が出来ず、目録から本のタイトルを探し出し、それを館員が蔵書庫から出してくるため、必要とした文献の在庫や貸し出し状況が把握できませんでした。また、文献内容の詳細も分からずに借りるため、自分の探している情報と異なり、その場で本を返却することがありましたが、その時は館員さんに怒られたりもし、非常に不便でした。
 2001年10月に日本に留学し、2002年4月に岐阜大学大学院連合獣医学研究科に入学し、学生証を貰うと同時に、所属する研究室の学生さんに図書館を紹介してもらいました。そこで、日本の大学図書館の電子化、蔵書のデジタル化、文献検索の便利さ、館員さんの熱心さやサービスの迅速さに驚きました。特に、自分の研究室に居ながら図書館のOPACシステムから、本や雑誌、視聴覚資料の検索ができ、貸出状況についても把握できること、また相互利用サービスを利用すれば、日本全国各地から文献を低額かつ迅速に入手できることに驚きました。図書館を訪れてもセルフサービスで、本の内容を確認しながら借りたい本を選択できることに驚きました。
 内モンゴル農業大学が中国西部大開発における重点大学として選択されることにより、大学図書館も2003年に建替えられ、姿が一新し、建築面積が2.2万平方メートル以上、座席数も2,500席以上に拡大しました。本と雑誌の蔵書量は百万冊以上に増え、これまでになかったデジタル蔵書39万冊、視聴覚資料なども充実しました。特に中国でのネット普及により、様々なサーチエンジン、数々の電子ジャーナル・文献データベース等も充実され、日本の大学図書館と比べても遜色がないまでになりました。その背景には、大学を中心としたIT企業のデータベース創建とその販売競争があげられます。学術論文の収録は勿論ですが、修士論文と博士論文等の学位論文も収録され、作者の著作権が無視され裁判になった例もあります。しかし、その収録のお陰で、他人の論文を盗用し、学位を騙し取った者を発覚できた事例もありました。
 大学図書館の電子化はデジタル時代の到来により、先進国だけではなく、途上国でも資金さえ投入すればそれに追いつくとしています。図書のデジタル化に伴い、手軽に利用できるようになっていますが、パソコンが必要なため、本のように常時携帯することが出来ない欠点もあります。しかしIT技術の日進月歩に伴い、携帯電話で読めるデジタル本が相次いででています。電子図書館が携帯電話でも利用で出来るようになれば、通勤・通学電車の中でも、遠い旅の一休みの間でも、好きな時に図書館を利用できるのではないかと期待しています。

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