センター長挨拶

自治医科大学は、地域医療・へき地医療を担う医師の育成を使命として設立され、半世紀にわたり全国の卒業生とともに我が国の地域医療を支えてまいりました。地域医療学センターは、その理念のもと、地域医療を担う人材の育成、教育・研究の推進、地域医療学の体系化に取り組み、本学の地域医療教育・研究の中核として発展してまいりました。私は、この歩みと理念を大切に受け継ぎながら、時代の変化に対応した新たな地域医療学センターの発展に努めてまいります。
現在、地域医療を取り巻く環境は、人口減少や高齢化、医師偏在、多疾患併存への対応など、大きな転換期を迎えています。一方で、全国各地の地域医療の現場では、それぞれの地域の実情に応じた優れた実践が積み重ねられています。私は、地域医療に唯一の正解はなく、それぞれの地域で培われた実践知こそが、未来の地域医療を支える最も重要な社会資源であると考えています。
地域医療学センターは、この実践知を集積・体系化し、教育・研究・政策形成へと展開し、再び地域へ還元する「地域医療の知のハブ」としての役割を担ってまいります。その実現に向けて、本センターでは、知の統合と発信、教育・人材育成、政策形成支援、技術・ネットワーク支援、社会発信、卒業生支援という六つの機能を一体的に推進し、地域医療・へき地医療の持続可能な発展に貢献してまいります。
その基盤となるのが、地域医療学、地域医療支援、医療政策・管理学、公衆衛生学、ヘルス・エクイティ地域共創、総合診療、人材育成、東洋医学の八部門です。公衆衛生学が地域を診断し、総合診療が地域を総合的に診療し、医療政策・管理学が地域を支える制度を構想し、地域医療学が実践を学問として体系化し、人材育成が次世代を育み、ヘルス・エクイティ地域共創が誰一人取り残されない地域社会の実現を目指し、地域医療支援が現場を支え、東洋医学を含めた多様な視点が地域医療に新たな価値をもたらします。それぞれの専門性が有機的に連携することにより、地域医療を総合的に支えることが、本センターの大きな強みであると考えています。
自治医科大学には、全国47都道府県に広がる卒業生ネットワークという、他大学にはない貴重な財産があります。このネットワークを生かし、現場から学び、大学で深め、社会へ還元する「知の循環」を育みながら、地域医療・へき地医療の教育・研究・政策形成を牽引するとともに、地域医療を支える実践力と総合的な視点を備えた次世代の医療人を育みます。さらに、全国各地の実践知を結び、共有し、その価値を未来へつないでいく拠点として、我が国の地域医療・へき地医療の発展に貢献してまいります。今後とも、ご支援、ご指導を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
2026年7月
自治医科大学地域医療学センター
センター長 後藤 忠雄