エピネット栃木

てんかんの治療Remedy

現在の状況:

てんかんの治療はまず薬剤からはじまります。この5年間は新しい抗てんかん薬で話題が持ちきりで、希望に満ちた年月でした。しかし、栃木県の最大の課題となって未だ解決を見ていないのは鹿沼飲酒玉突き事故でした。このような悲しい経験を生かして、我々てんかん治療に携わる者は地域を見据えた連携プレーをしてゆく必要があると考えています。

てんかんの治療の一つの選択肢に外科治療があります。薬剤でうまく抑制されないてんかんの発作を外科的な手術で治す・・・・この手術で新しい人生を貰ったと言ってくれる患者さんもいます。このような体験から我々は発作が止まらない患者さんを少しでも支援するために日々努力しています。
さて、全国ではどのくらいの手術が行われているのでしょうか?

手術数:

我が国でのてんかん外科の年間の手術数は2005年から2010年まで489、 620、 600、 553、 595件と少しずつ増加しています。欧米の統計から人口割で推定すると、年間3000件の手術が必要と考えられますので、実際には500件程 度であり、いまだに手術すべき患者さんを手術できていない事例が数多く存在しているようです。

焦点の分布:

手術の部分、つまり焦点の分布は次のようになります。

前頭葉:94、頭頂葉:15、後頭葉:5、側頭葉内側:186、側頭葉外側:46、多脳葉:29、広汎性(半球性):27、その他31で、圧倒的に側頭葉内側が多いことがわかります。
年齢分布は0-19歳113例(35%)、20-39歳174例(55%)40-59歳32例(10%)、70歳以上1例(0.3%)で、比較的若い成人に多いようです。

手術成績:

手術で発作が消えるのかという点が最大の関心事ですが、内側側頭葉に焦点のある患者さんでは、90%の方が術後に発作がまったくなくなったか、ごくたまにしか起こらない状態が得られました。 しかし、後頭葉に焦点があった例では、発作回数があまり減らなかった患者さんが70%を占め、後頭葉焦点の焦点の困難さが見て取れます。

将来の展望:

海馬に関してはanterior temporal approach, transsylvian approach(Yasargil), trans T2 approach, trans-T1 sulcal approach、subtemporal approach など枚挙に暇がありませんが、手術手技的には成熟した分野です。

言語野、運動野など、切除手術で重篤な後遺症を起こす領域にある焦点に対しての手術法が今後の課題とされています。

また、新しい治療法として、近年ようやく植え込み型迷走神経刺激装置の認可がおり、今後の臨床応用が期待されています。