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自治医科大学地域医療学センター総合診療部門

教授挨拶


教育・研修

 自治医科大学地域医療学センター総合診療部門は、総合医育成のため、学生教育の推進を目的に設置されました。附属病院においては、内科の一診療科として名称を「総合診療内科」として診療を行っています。総合診療内科では、臓器横断的に、救急症例、不明熱や原発不明癌などの未診断の方、多臓器病変を有するご高齢の方、診療の困難な感染症の方々を診療しています。

 

わが国は超高齢社会を迎え、総合的に患者さんを診る「より良きジェネラリスト」へのニーズは日々増加し、社会からの総合医への期待は大きくなってきています。しかし、現実の診療を鑑みると、人口構成や社会構造が変化しても、総合診療、専門診療の両者は必要です。誰しも診断がつくまでは「診たてが確か」な医師を頼りとし、診断が明らかになれば、専門医の治療を求めるのは自然な欲求です。従って、総合診療と専門診療のバランスは必須であり、高い専門性を有しながらも臓器横断的な診療姿勢を有する医師の存在もこれからは重要になると私は考えています。これからの時代、そのような医師へのニーズはますます高くなるはずです。

 

 私どもの総合診療内科では、新専門医制度下において新内科専門医、総合診療専門医を取得できる研修プログラムを既に実践しています。また、感染症専門医も取得できる指導体勢が整っています。さらに2017年4月からは、内科学講座の医師とわれわれ総合診療内科の医師が共同して入院診療を担当する「内科総合病棟」が設置され、消化器内科、感染症科からは常時医師が派遣され、他の内科系診療科からも交代で医師が派遣されています。その結果、臓器別診療科の枠を超え、総合診療と専門診療の協力により、迅速な問題解決の実現、診療の質向上を達成しつつあります(2017年実績:病床数24床、新入院患者数30/月、病床稼働率93%、平均在院日数20日)。大学附属病院ではあまり例のないこの診療の場において、基本的診療能力を身につけ、臓器横断的診療姿勢を有する医師の育成に向けた医学生教育と研修医への指導を行っています。

 

 私たちは卒前・卒後教育と指導において、病歴・身体診察の基本、診断のプロセス、患者背景を意識した医療の指導をしています。診断から治療に至るプロセスは、最初の視診、インタビュー、身体診察、問題の描写(problem representation)、鑑別診断を挙げること、検査、診断の確定、エビデンスと患者背景を考慮した治療を行うことから成り立っています。幅広い視点から患者を診察し、病歴・身体所見から診断を考える、いわゆる全人的医療と臨床推論は、医学の概念が生まれたヒポクラテスの時代から存在していたはずです。総合診療内科はその学びに適した分野と考えています。本学の卒業生は、検査機器が十分にそろっていない医療機関で診療をすることが稀ではありません。”Experience is the best teacher”と言われるように、わたしたちは日々の診療から学ぶことを最も大切にし、病歴・身体診察から診断を考える力をできるだけ身につけてもらうよう指導を行っています。
 
 「機能分化と連携」を目指すこれからのわが国の医療システムにおいて、高度先進医療を担う大学附属病院のみでの総合医の育成は不可能です。総合医の育成には、大学附属病院以外の施設にも診療・臨床教育の場を求めなくてはなりません。自治医科大学の総合診療部門/総合診療内科は、地域医療への貢献に加え、医学生・研修医、総合診療を目指す医師の研鑽を実現する組織として、地域の関連医療施設とも連携を深めて参ります。個々の医師の人柄と能力はもちろん、診療チーム、診療科としての診療能力をさらに高め、多くの患者さんのお役に立てるよう精進してゆきます。何卒、御指導の程、よろしくお願い申し上げます。

 
2018年12月

自治医科大学地域医療学センター センター長
総合診療部門 教授/附属病院総合診療内科科長
松村 正巳