教授挨拶

自治医科大学は何といっても地域医療の人材育成拠点であり、地域医療に貢献する気概のある人材(=地域医療人)を育てることが使命です。当部門は、地域医療の現場において、公衆衛生・臨床はもちろんのこと、研究も実践できる人材の養成をめざしています。次の2つを理想に掲げて取り組んでいます。

1.地域医療のプレイングマネージャー

私は自治医科大学を卒業後、兵庫県に戻り、地域医療を実践してきました。その過程で、地域医療人には臨床医(プレイヤー)としての能力だけでなく、地域住民の暮らしを支える監督(マネージャー)としての能力も併せ持つ必要があることを認識しました。この「監督」として役目を担うのが公衆衛生です。かつての医師は、臨床か公衆衛生かのどちらか一方をキャリアとして選択するという考えが一般的でした。ところが最近では、臨床と公衆衛生との二刀流を実践する人材、すなわち「プレイングマネージャー」が現れてきています。特に地域医療の現場では、臨床と行政とをつなぎ合わせられるプレイングマネージャーが真価を発揮するでしょう。当部門は、自治医科大学の新たなブランドとして「地域医療を担う二刀流の養成」に取り組んでいます。

2.Physician × Public Health × Scientist

地域医療人には3つの力が必要です。疑問や課題を定量化して分かりやすく表現できる力、その疑問や課題に対して解決策を打ち出して実践できる力、そして、実践したことを発信できる力です。これらの能力を持つ医師をPhysician Scientistと呼びます。しかしながら地域医療人は、医療の問題だけではなく、少子高齢化や人口減少など、地域が抱える様々な社会問題にも取り組まねばなりません。社会問題に対して3つの力を発揮できる人をPublic Health Scientistと呼びます。当部門のもうひとつの理想は、地域から科学的知見を世界に発信するPhysician Scientist、Public Health Scientistを育てることです。教育は、未来を担う人材への投資です。すばらしい才能を持つ学生、卒業生、研究生を丁寧に指導し、たとえば私が5年かかったことを2、3年でマスターしてもらえるような教育を常に心がけています。地域医療に尽力してきた本学だからこそできる教育ノウハウがあります。

臨床、公衆衛生、研究もできる、さらには各世代のリーダーとして活躍できる。そんな地域医療人を養成し、全国、世界に羽ばたかせるのが当部門の使命と考えています。本学の学生・卒業生はもちろん、本学外の学生・卒業生、さらには医師に限らず、多様な学部卒業の方々も広く受け入れています。我々の想いに共感してくださる方は、ぜひ当部門の門戸を叩いていただければ幸いです。

     地域医療学センター公衆衛生学部門
教授 阿江竜介

(2024年04月 初版)

2003(平成15)年自治医科大学 医学部 卒業
兵庫県立淡路病院 初期研修医(卒後前期臨床研修)
2005(平成17)年公立出石病院 一般内科(卒後前期へき地派遣)
2009(平成21)年自治医科大学 地域医療学センター 総合診療部門
シニアレジデント(卒後後期臨床研修)
2011(平成23)年公立浜坂病院 総合診療科(卒後後期へき地派遣)
自治医科大学 卒後義務年限 修了
2012(平成24)年公立浜坂病院 内科 副部長(兵庫県地域医師制度派遣)
2013(平成25)年自治医科大学 地域医療学センター 公衆衛生学部門 助教
2016(平成28)年自治医科大学 地域医療学センター 公衆衛生学部門 講師
2018(平成30)年Centers for Disease Control and Prevention(CDC)留学
米国疾病管理予防センター Regular Research Fellow
2019(令和01)年帰 国
自治医科大学 地域医療学センター 公衆衛生学部門 講師
2023(令和05)年自治医科大学 地域医療学センター 公衆衛生学部門 教授

資格

認定内科医・総合内科専門医(日本内科学会)

老年科専門医・指導医(日本老年医学会)

上級疫学専門家(日本疫学会)

社会医学系専門医・指導医(社会医学系専門医協会)

受賞歴

2023(令和05)年第24回 川崎賞(日本川崎病学会)
2023(令和05)年自治医科大学 医学部 最優秀論文賞
2021(令和03)年自治医科大学 医学部 優秀論文賞
2021(令和03)年CDC Nakano Citation, the best 2020 NCEZID publication 部門内最優秀論文賞