医療安全研究

(1)ノンテクニカルスキル(NTS)に関する諸研究

熟練者の“暗黙知的な”NTSの明確化

熟練者のNTSを明らかにし、訓練項目として整理する検討を行っています。研究手法としては、(1)新人にとって難しい施術行動を質問紙で調査したり、(2)臨床での技士の行動をアイマークレコーダ(装着者の注視しているポイントを映像として記録できる装置)やビデオカメラで撮影・分析し、新人と熟練者の差異を明確化したり、(3)その差異の背景にあるNTSの詳細を熟練者へのインタビュー調査により明確化したりするなど、現場に力点を置いた主観・客観の両側面からの調査で、課題解決に取り組んでいます。こうした研究手法(認知行動分析)は,当シミュレーションセンターでの医療安全関連の訓練シナリオ作成においても役立てています.

医療者のNTSをサポートする医療機器のデザイン研究

NTSは単に教育すれば良いだけではなく,医療機器側で人間をサポートできることについてはそれを実行すべきと考えられます.そこで,先ほどの認知行動分析を用い,熟練者のNTSを明確化した上で、医療機器のデザインについても検討しています。また,訓練用シミュレータの使いやすさ研究等に役立てています.

(2) ヒューマンファクターズ&医療安全教育に関する研究

実際の現場での医療安全に関する実態調査を行い,その傾向を基に「学生への早期からの医療安全教育」を行うための課題の整理と,教育デザインの検討・実施・検証を行っています.

効果的な事故再発防止策立案のための、インシデント報告分析

 本学附属病院の医療安全対策部門で収集される膨大なインシデント報告から、医療者の安全意識の傾向を評価しています。本年度は、転倒転落に関する1476件の報告を、当事者が明記した事故要因の観点から分析し、多くの当事者が事故を自身の落ち度とする傾向にあることを見える化しました。これを基に,患者・当事者・周囲の医療者・ソフト面(ルール等の整備)・ハード面(医療機器等の改良)・環境面(作業環境等)・マネジメントといった多様な側面から事故の再発防止策を考えさせるような教育デザインや訓練シナリオ作りに取り組んでいます.

医療の質と安全の向上に効果的な確認行動の評価方法の検討

 現場では,様々な確認行動(手術前タイムアウト、読み合わせ、ダブルチェック、指差呼称等)が効果的に実行されているかを、定量的に評価できていない現状にあります。そこで,本年度は、手術前タイムアウトを対象に、実際の腹腔鏡手術にて複数回参与観察を行い、きちんと実施できていることを評価するための手法を検討しています.こうした検討は,医療安全行動に関する,学生の評価尺度のデザインに繋がります.

臨床未経験の学生に対するシミュレーションを用いた医療安全教育

医学部1年生に基礎的な安全スキルを獲得させるための授業題材選びや方法論の設計に取り組み、教育効果を演習成果物等から検証する方法についても検討しています。一方で,基礎だけでは(1)実務においてどのタイミングで、どう安全行動(指差呼称やダブルチェック等)を取るべきか、(2)その行動が適切でなければ、どのようなプロセスでエラーや事故に陥るのか、(3)エラーの影響をどのように最小限に留めるのか、といった「実践的安全スキル」が身につきません。私はシミュレータを用いて、これらを教育することで、医療現場で取るべき安全行動の意義や、効果のある実践方法を身に付けさせる試みを行っています。

関連する主な業績

論文

学会発表