自治医科大学附属さいたま医療センター 心臓血管外科

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2022年 診療実績

自治医科大学附属さいたま医療センター
心臓血管外科教授
山口 敦司

 皆様には自治医科大学附属さいたま医療センター心臓血管外科の診療活動に、日頃よりご理解・ご支援をいただき、心から深謝申し上げます。

 2020年の年頭から顕在化してまいりましたコロナウイルス感染は、2023年になった現在も感染パンデミックの第8波が世界的な脅威となり、未だ収束のめどが立たずにおります。 この3年間、当センターでは地域における役割を重く受け止め、コロナウイルス感染の重症患者さんを重点的に受け入れ、集中治療部・総合診療科が中心となって人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)などを使用した高度治療を行ってまいりました。 第1波から感染のピークを迎えるたびに、コロナウイルス感染重症患者の受け入れに必要な集中治療室などのスペースや従事するスタッフが確保できなくなり、あるいは院内における感染も認められたために、心臓血管外科における待機可能な手術患者様に関しても延期を余儀なくされたという事態が生じたこともありました。

 ここに述べましたコロナウイルス感染による脅威とはうらはらに、循環器診療を必要としている患者さまは増え続けております。 受診控えのために、症状が重篤化してから病院にたどり着くような患者さんが増えているという話も最近になってクローズアップされるようになっております。 このような社会背景のもと、当センターで日本胸部外科学会に毎年報告している心臓大血管手術件数は、2022年の集計では454件でした。そして末梢血管等を含めた全手術件数は801件でした。 診療実績の統計にありますように、心臓大血管手術の約半数が弁膜疾患であり、弁膜疾患における大動脈弁狭窄症の患者数の増加は驚異的です。この疾患群の増加傾向は、本邦における高齢者人口の比率増加による影響と思われますが、今後数年間は増加傾向が続くことが予想されます。 経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)の件数に関しては、この高齢者人口の増加のもと、年ごとに大幅な増加を続けておりますが、対象となる患者がハイリスク群であるにもかかわらず非常に良好な成績を残しております。 開心術における大動脈弁置換術についてもRapid deployment valve(Intuity, Percevel)が導入され、手術時間・人工心肺時間が明らかに短縮されて、早期成績も良好でした。 高齢者・ハイリスク症例が著しく増加しているにもかかわらず、弁膜疾患を含む各疾患群において定時手術での良好な成績を遂げることができ、患者様の要望・地域のご紹介をしてくださる先生方からの期待にも十分にお答えすることができているのではないかという自負があります。

 当センター以外の各関連施設においても、コロナウイルス感染によって大きな影響を受けたにもかかわらず、診療実績を維持し健闘しております。 各施設とも、地域の患者様のために、地域の診療にあたる先生方からの診療要請を断らない、開設以来当診療科が心がけてまいりましたポリシーを貫くべく、24時間・365日体制を整え、常に救急の要請にも備えております。
 また、各関連施設がそれぞれ得意とする分野において、低侵襲治療とされている経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)・弁膜疾患に対する小切開心臓手術(MICS)など、高度でかつ先進的な治療法を、患者様の病態に合わせて提供できるような努力をすすめております。 低侵襲手術に関しては今後もさらに需要が拡大し、今後の診療体系が変革を遂げることが予想されるため、個々の関連施設のみならず当科全体としてのプロジェクトチームを作り、これまで以上に低侵襲治療に積極的に取り組み、医局全体の知識と経験の積み上げを図ってゆく所存です。

 2023年4月からは、埼玉県上尾市にある上尾中央総合病院の心臓血管外科診療に携わらせていただくこととなり、堀大治郎先生をはじめとしたチームを派遣することとなりました。 さいたま市そしてその周辺における循環器診療を円滑に進めるためには、さいたま医療センターのみならず、近郊にあるいくつかの関連施設とも有機的な連携が組めることが非常に重要な命題でありました。センターを中心とし、さいたま赤十字病院・春日部中央総合病院・上尾中央総合病院・練馬光が丘病院・都立墨東病院などは患者さんの短時間での移動が十分可能な距離にあり、急性大動脈解離や大動脈破裂など大動脈緊急症をはじめとした緊急症例をこれらの連携チームで対応することが確立されつつあります。

 コロナウイルス感染の収束がいまだ予測できていないこの不安定な情勢において、自治医科大学附属さいたま医療センターと各関連施設に勤務するすべての医局員は、地域の患者様・医療機関の方々のお役に立つことができますよう誠心誠意努力致しますので、引き続き、皆様からのご指導・ご鞭撻をお願い申し上げます。

手術治療数の推移と手術内容

心臓大血管手術症例数の経過、および2022年の手術治療内容をグラフで示しました。

虚血性心疾患:冠動脈バイパス手術の治療実績

現在、自治医科大学附属さいたま医療センターでは年間50-60件の単独冠動脈バイパス手術、および弁膜症や大血管手術と同時に行う複合冠動脈バイパス手術を実施しております。 近年の高齢化社会の影響によって、冠動脈バイパス手術を受ける患者様の年齢も上昇しています。また、併存疾患が多くなっている傾向も見られます。


心臓弁膜疾患の手術治療実績

当科における心臓弁膜症手術の治療実績を下記に示します。 現在、自治医科大学附属さいたま医療センターでは、経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)を除く心臓弁膜症手術を年間200-250件程度実施しております。 右小開胸切開での大動脈弁置換術・僧帽弁形成手術は、2022年度は30件実施しました。 また、経カテーテル的僧帽弁形成手術(mitral clip)も2021年度より導入し昨年は6件実施いたしました。 右小開胸心臓弁膜症手術やmitral clipは、来年度以降、さらに適応を拡大していく予定です。当科における心臓弁膜症手術の治療実績を下記に示します。 現在、自治医科大学附属さいたま医療センターでは、経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)を除く心臓弁膜症手術を年間200-250件程度実施しております。 僧帽弁閉鎖不全症に対する右小開胸僧帽弁形成手術も2021年度は16件実施しましたが、来年度以降、さらに適応を拡大していく予定です。 大動脈弁と僧帽弁双方に対する連合弁膜症手術や、虚血性心疾患や胸部大動脈疾患に合併する複合手術も数多く実施しておりますので、より安全で低侵襲な心臓弁膜症手術の実践を目指し、今後も発展していきたいと考えております。 また、感染性心内膜炎などの緊急な治療を要する心臓弁膜症疾患に対しても、引き続き、迅速に対応して参ります。
 大動脈弁と僧帽弁双方に対する連合弁膜症手術や、虚血性心疾患や胸部大動脈疾患に合併する複合手術も数多く実施しておりますので、より安全で低侵襲な心臓弁膜症手術の実践を目指し、今後も発展していきたいと考えております。 また、感染性心内膜炎などの緊急な治療を要する心臓弁膜症疾患に対しても、引き続き、迅速に対応して参ります。

経カテーテル大動脈弁留置術の治療実績

自治医科大学附属さいたま医療センターでは、大動脈弁狭窄症に対する低侵襲手術である経カテーテル大動脈弁留置術(Transcatheter Aortic Valve Implantation: TAVI)を2014年から開始いたしました。 2022年12月までに473例の大動脈弁狭窄症患者様にTAVI手術を実施いたしました。TAVI手術件数の推移を示しますが、手術症例数は増加傾向です。 2021年は、手術実施症例は64例(平均年齢84.1歳)であり、在院死亡率1.6%(1/64)・脳梗塞発症率0%(0/64)と、良好な成績が得られました。

胸部大動脈疾患の手術治療実績

現在、自治医科大学附属さいたま医療センターでは、ステントグラフト手術を含めた胸部大動脈疾患に対する手術を年間150-180件程度・急性大動脈解離に対する手術を年間50-70件程度実施しております。 2007年の導入後、低侵襲なステントグラフト手術も年間40-50件程度実施しています。

腹部大動脈疾患の手術治療実績

当科における腹部大動脈疾患手術の治療実績を下記に示します。 現在、自治医科大学附属さいたま医療センターでは、主に腹部大動脈瘤を対象疾患として、手術治療(開腹手術+ステントグラフト内挿術)を年間120-150件程度実施しており、これは国内有数の規模を誇ります。 待機的手術に関していえば、開腹手術の在院死亡率は1.5%程度、ステントグラフト内挿術の在院死亡率は1%以下と良好な治療成績が得られています。

連絡先

心臓血管外科外来は毎日行っていますので、お時間に余裕があれば下記予約コールセンターまでご連絡ください。

お急ぎの場合は、心臓血管外科担当医師と直接相談いただければと思います。