多焦点眼内レンズの特徴
メリット
多焦点眼内レンズのメリットは、白内障術後の眼鏡依存度を減らすことです。通常レンズの場合、多くの場合で遠方視もしくは近方視のどちらか(もしくは両方)で眼鏡が必要となります。
日常生活において眼鏡やコンタクトレンズを使用することに不自由を感じない場合は、通常の眼内レンズをおすすめします。なお、多焦点眼内レンズにおいても、選択したレンズや術後の状態により、眼鏡使用が必要となることはあり、眼鏡不使用を保証するものではありません。
デメリット
〇ライトの光が眩しく見える(グレア)、光の周辺に輪がかかって見える(ハロー)、光が放射線状に広がり見える(スターバースト)ことがあります。また、色の濃淡の見え方が低下(コントラスト感度の低下)する可能性があり、夜間や視界が悪い時の運転は注意が必要です。
〇一度挿入した眼内レンズを取り出すには再手術が必要で、眼への負担が増えるため、おすすめしません。
〇高額の自己負担に相関して期待度が大きくなり、不満につながる傾向も確認されています。
※見え方の質が大事な方は、多焦点レンズを挿入することに対し慎重に検討し、ご判断ください。
採用中の多焦点眼内レンズ
クラレオン パンオプティクス(3焦点眼内レンズ・乱視矯正あり)
Clareon PanOptix (Alcon)
遠方、中間(約60cm)、近方(約40cm)の3ヶ所に焦点が合う眼内レンズ。乱視矯正用のレンズあり。
2019年に国内で承認された初の3焦点眼内レンズであり、挿入実績が多数ある。
遠くから手元まで幅広くピントが合うため、日常生活における眼鏡の必要度は低い。コントラスト感度の低下やハロー・グレアは一定数生じる可能性があるため、夜間の運転が多い人には注意が必要。
テクニス オデッセイ(連続焦点眼内レンズ・乱視矯正あり)
TECNIS Odyssey (Jonson&Jonson)
遠方から近方(約40cm)まで連続的に焦点が合う眼内レンズ。乱視矯正用のレンズあり。
2024年に発売された多焦点眼内レンズであり、同社の多焦点眼内レンズであるシナジーと比較して、ハロー・グレアが起きにくい一方、近方視力はやや劣るとされる。
遠くから手元まで幅広くピントが合うため、日常生活における眼鏡の必要度は低い。コントラスト感度の低下やハロー・グレアは一定数生じる可能性があるため、夜間の運転が多い人には注意が必要。
ビビネックス ジェメトリック(3焦点眼内レンズ・乱視矯正あり)
Vivinex Gemetric (HOYA)
遠方、中間(約66cm)、近方(約35cm)の3ヶ所に焦点が合う眼内レンズ。乱視矯正用のレンズあり。
2024年に承認された日本企業による初の3焦点眼内レンズであり、手術時の眼内レンズ挿入において安定した操作が可能であり、より安全なレンズ挿入が可能。
遠くから手元まで幅広くピントが合うため、日常生活における眼鏡の必要度は低い。コントラスト感度の低下やハロー・グレアは一定数生じる可能性があるため、夜間の運転が多い人には注意が必要。
クラレオン ビビティ(焦点深度拡張型眼内レンズ・乱視矯正なし)
Clareon ViVity (Alcon)
遠方から中間(約66cm)まで幅広く焦点が合う眼内レンズ。乱視矯正用のレンズなし。
2023年に承認された焦点深度拡張型の眼内レンズであり、近方は手元50cmで約0.6の視力、手元40cmで約0.5の視力であり、スマートフォン操作や読書には眼鏡が必要となる可能性が他の多焦点レンズより高い。
一方で、多焦点眼内レンズに特徴的なハロー、グレア、コントラスト感度の低下といったデメリットが生じにくく、同社の単焦点眼内レンズと同等レベルとされており、夜間運転をする方やコントラスト感度重視の方に勧められる。
入院及び手術にかかる費用(通常2泊3日の場合)
通常の治療に関しては健康保険で治療をしますが、多焦点眼内レンズ代金は健康保険外となり、自己負担になります。但し保険診療である白内障手術費用に単焦点眼内レンズ代が含まれているため、多焦点眼内レンズ代金から、単焦点眼内レンズ代金を差し引いた金額を自費負担して頂きます。
保険診療3割負担の方で、片眼 420,000円程度(※お持ちの健康保険証により金額が変わります。)
手術後の経過
〇多焦点眼内レンズの見え方になじんで視力が安定するまでには、数週間~数ヶ月を要します。
〇多焦点眼内レンズという複雑なレンズ構造のため「ぼやけ」「かすみ」の症状が起こることがあります。屈折異常、後嚢混濁、眼内レンズ偏位、ドライアイ、水晶体片残存、他の疾患などで生じることもありますが、原因不明の場合もあります。
〇見え方には個人差があり、眼鏡やコンタクトレンズによる矯正が必要になることもあります。