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Q&A

当施設についてよくお問い合わせいただく内容と、お問い合わせに対する回答をご案内いたします。

Q1:自治医大のピッグセンターはどんなところ?

長期にわたる医学教育・研究をもとに文部省の私立医科大学戦略的研究基盤形成支援事業として、自治医大ピッグセンターの開設を2008年度申請し、採択されました。その結果、2009年3月末に、実験専用ブタ等を中心とした高度施設が完成しました。建物の中は、病院の手術室とまったく同等の設計をしています。また感染等の対策が厳重で、ブタが飼育される場所には、窓がありません。 高性能空調システムや防音対策等きわめてハイテク設備が整えられています。

このピッグセンターの完成を受け、2009年4月、自治医大に先端医療技術開発センターとして、医療技術トレーニング部門、先端治療開発部門、脳機能研究部門を設置し、ミニブタを用いた先進的医療技術開発、さらに付属大学病院の医師の技術トレーニングや外部団体の医療技術支援を開始しました。

ピッグセンターは、2009年に人間の患者さんで使用するのと同じMRI、CTを設置し、動物実験の段階から人間で行なうヒトの臨床治験と同等の評価ができるようフルオープンいたしました。 世界で一番充実したピッグセンターだと自負しています。しかし昨年の東日本大震災では、大きな被害打撃を受けました。そして震災後は、電力供給や体制上も問題があり実験を縮小していました。

現在、自治医大ピッグセンターは、自治医大だけでなく多くの学外研究機関の人も利用できる開かれた大型実験動物施設として、実験専用ミニブタを用いた先進的医療技術の研究開発や医学教育・研究の質的向上を図っています。

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Q2:なぜ医学部でブタを使うの?

自治医科大学は、医療に恵まれないへき地等医療の確保向上及び住民福祉の増進を図るために、1972年に創設されました。開学以来、40年が経過し、3500名以上が医師となり、出身県の地域医療を担っています。

自治医大では、医の倫理に徹し、高度な臨床的実力を有する医師を養成するため、種々の先進的取り組みが行なわれてきました。生きた実験動物で医学生に外科実習を行なう取り組みも開学当時から始められてきましたが、きわめて先駆的なものであったと思います。5年生の外科実習でこの生きた動物を使った外科教育実習を受けます。

自治医大の生きた動物を使った外科教育プログラムは、今後その重要性を増すものと思っています。それは「学生や若い外科医が患者さんで練習することが出来なくなってきている」という現実的問題につきあたるからです。つまり、「患者さんで腕を磨く」と言ったら、それが現実でも多くの人は不快だと思います。

これらの人間に近い体のサイズの実験動物は保健所にて捕獲された譲渡犬を用い行われていましたが、2001年より、すべての譲渡犬による動物実験を中止し、本実習を含めブタの実験使用を検討し始めました。

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Q3:私たちが食べるブタを使うの?

プロジェクトを開始した当初は、自治医大の近隣の家畜豚の肥育農家から子豚を分けていただきました。つまり、食べるブタを実験に転用していました。自治医大でこれまで使用されてきた実験用ブタは、成熟時の体重により大きく3種類に分類されています。

一般の食べるブタは、三元雑種といって、ヨークッシャー、ランドレース等3種類の豚をかけあわせつくりあげられているものです。これらの豚の特徴は、極めて早く成長することです。生後3カ月で約30kg近くまでなり、6カ月を過ぎると100kgを超え始めます。現在、日本では内視鏡手術等の技術トレーニングでは、この食用豚の30kgサイズのものが使われています。家畜として確立しているので、次に述べる実験専用に特別に飼育されたブタに比べると、値段が安く、1頭数万円前後です。

食肉市場には雄は通常いません。男性ホルモンが肉質を固くして匂いも強くするので、生まれまもない雄豚は去勢されているそうです。それに対して、医薬品の開発はに使われる実験動物は、雌ではテストが性周期の時期によって影響を受ける可能性があるので、通常、雄を使います。この点で通常の家畜豚では薬の開発研究用には不向きです。また医療用機器の安全性試験は6カ月以上の長期観察が必要な場合が多いですから、100kgを越える家畜豚では管理ができないので、やはり家畜豚をベースにすることが難しいです。

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Q4:実験専用の特別のブタがあるの?

成熟しても100kgを超えない種類のブタを「ミニブタ」といい、実験研究にはこれを使用しています。ミニブタは家畜豚のように大きくならないので肉がたくさん取れず、食用に適する豚ではないと思います。

実験専用に繁殖されるミニブタは、一回の分娩で家畜ブタの半分の、4頭から5頭しか産まないこと、肥育(餌をあげて育てる)に時間がかかることで、生産コストが高くつきます。現在、日本で実験専用ミニブタを安定供給しようしている会社が数社ありますが、1頭17-20万円前後です。つまり体重を同等とした場合、家畜ブタの子どもの10倍の価格です。

これら日本のミニブタを4-5種類使い分け、それぞれの特性を生かし、卒前・卒後の外科手技トレーニング、専門性の高い高度な手術技術での有効性、さらに医薬・医療機器などの開発に使えることを報告してきました。

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Q5:食べないブタを殺してもいいの?

当然ですが、生き物を自分の都合で殺すのはいけないことです。命に向き合う医師を志す学生が、動物を殺すことを正当化できるでしょうか?

実験動物を扱う際に守らなければいけないこととして、研究者が自主的に定めた「3つのR」といわれる倫理原則があります。Replacement (なるべく動物を殺さない代替の方法を考える), Refinement(動物に最小限の苦痛しか与えない洗練された実験手法、殺処分法を用いる), Reduction(実験使用する動物の数を減らす)の三つです。

ブタを使った技術研修や研究開発も、この3つの R に従って行なわれます。それでも患者さんを助けるためにブタを犠牲死させることがどこまで許されるのか、これから医療を担う医学生とともに勉強しています。

そうした取り組みのうえで、まず2007年度に医療技術トレーニング部門を自治医大実験医学センター内に設置し、実験専用ブタを用いた卒前 卒後医学教育、・医学研究や学内外研修会の支援・調整・管理を実地してきました。大学全体で実験動物の使用を管理することで、犠牲死するミニブタの数を‘組織‘として下げる試みにも挑戦してきました。たとえば、「研究者 A はブタの肝臓、研究者 B はブタの腎臓で実験したい」という申請書があった場合、実験日を調整して1頭で済ませようという試みです。

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Q6:ブタで人の臓器をつくるって本当?

患者さんを診る臨床医として肝臓など移植に必要な臓器を何とか人の手でつくり出せないか、研究しています。生きたブタの体を使って、複雑な構造を持った丸ごとの人間の臓器をつくれないか、研究しているのです。なぜなら、いま再生医療研究が期待を集めていますが、どんなに万能細胞を使っても、試験管内では臓器を「再生」させることはできないからです。

この、ブタをいわば「容れ物」として使う技術を駆使して、足りない移植臓器をつくり出そうとする研究を、私たちは「Yamaton 計画」と名前を付けて進めています。この名の由来は、「日本(ヤマト)から生まれたブタ(豚)を使った技術」という意味です。つくりだしたい臓器により、ヤマトンH(心臓)、ヤマトンL(肝臓)、ヤマトンK(腎臓)といった略号があり、改良の進んだ順により1, 3等の番号を付けています。

ブタの臓器をそのまま人間に移植することを「異種移植」といいますが、ヤマトン計画では、遺伝子組み換えの技術を用い、ブタの体内で人間の臓器を育てようとしています。これを私たちは、「異種再生治療」と名付けています。この研究を続けていけば、臓器再生の仕組みを解明し、将来はブタを使わなくても試験管の中で人の臓器がつくり出せる技術を手に入れることができると信じています。

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Q7:東北ピッグセンター構想って何?

これまで栃木の自治医大で試みてきたことを、福島や東北地方の医科大学に呼びかけ、実験専用ブタを用いる研修や研究を総合的に管理しようというものです。Q4で述べたように、この実験専用ブタは育つのに時間がかかります。時間がかかるということは、当然ですが経費もかかります。これを各医科大学がばらばらにやっていては、無駄も多く出てきます。

そこでまず第1弾として、「実験専用ブタの肥育施設の建設」と「医科大学間の卒然・卒後教育の連携」を提案したいと思っています。まず共用の肥育施設をつくって、全国に散らばっている会社が独自に販売している実験専用ブタを幼少期に購入して育て上げ、経費の無駄を抑えることができると思います。さらに、各大学でのブタの利用を連携してやることで、使用するブタの数の調整をしながら、臨床能力が高く、動物福祉にも精通した医師が育ってくれたらいいなと思っています。

東北ピッグセンター構想の第2段階は、「実験専用ブタの分娩施設とGLP施設の建設」です。GLP施設とは、そこでブタを用いて研究開発される医薬品や医療用機器を、企業が市場販売の申請をするうえで、国が定めた必要条件を備えた仕組みです。

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Q8:ご利用について

本施設は、自治医科大学内だけでなく学外の研究者の皆さまにもご使用いただくことができます。但し、ご研究の内容などが本学の内規に照らして施設を利用いただくに適切でないと思われる場合には、本施設のご利用をお断りする場合もございます。
あらかじめご了承ください。

本施設のご利用をご検討の際は、まずは「お問い合わせフォーム」よりご一報ください。折り返しご連絡を差し上げ、詳細につきましてお打ち合わせさせていただきます。

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