更にここでも○○の1つ覚えのLuciferaseアッセイを行って、IL-1Raのプロモーター部位にあるCREという配列が重要らしい、という結論を得ました。CBPという分子が結合する配列です。そこから(似たようなメカニズムを類推して)MHC class IIという分子の発現もAireの強制発現で阻害されることを見出しました。
今見直してみると、我ながら「IL-1RaからMHC class II」の部分の飛躍が大きすぎるのではないかと思えますが、自分なりに色々理屈を考えて、クロマチン免疫沈降(ChIP)のような実験も加えてこれもBBRCにねじ込みました。
しかし20足らずの分子をRPAでスクリーニングしても、他の重要分子については(実際には重要な差異があったとしても)色々見逃している可能性は高いと思います。本当は、cDNAサブトラクションという方法を試したかったのです。サブトラクションは引き算という意味です。2種類のmRNA検体があった時に、一方の検体に発現しているmRNA(からcDNAを合成した検体)から他方の検体に発現しているmRNA(からcDNAを合成した検体)を「引き算」して、それを増幅することにより、発現量に差がある分子を同定しようというものです。増幅過程が入っていることで、微量にしか発現していない分子でも拾ってくることができる(かもしれない)という優れものです。数字のように簡単に引き算をすることはできませんので、色々な工夫がされていて、その概念図を見ただけでもわくわくします。実は途中まで試みたのですが、挫折しています。もう少し粘れなかったものかと思いますが、実力不足でした。今ならRNA-seqという方法を使うと思うので、cDNAサブトラクションを使う機会は今後無いのではないかと思います。試したいと思う実験は(そんなに数多くはないですが)大抵やってきました。そういう意味では、今でもちょっと心残りのある実験法です。
それはそうと、Aireに関する、ものすごくインパクトのある論文が当時公表されていました。
佐藤 浩二郎
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