前回、ヒトの血清を用いて測定できるサイトカインが少ないということを述べましたが、どのようなサイトカインなら測定できるでしょうか。もちろんこれは測定系の感度にも依ります。IL-6は結構測定できることがあります。IL-6は炎症の部位から肝臓まで届いて、そこで炎症マーカーであるCRPなどを誘導する役割があるので、血中でもある程度の濃度に達しやすいのでしょう。とは言っても測定できない場合も多いですし、そもそも血清中のCRPを測定すればIL-6の代替マーカーとして使えるという考え方もあります(しかし、そうとも言い切れないような実験結果を最近見つけていて、どう解釈したものか悩んでいますが)。一方、IL-12などはほとんど測定できません。このサイトカインはTh1細胞を誘導し、IFN-γの発現を誘導するため、このサイトカインが血中で検出できるということになると身体の至る所でIFN-γが誘導されかねません。それは極めて危険なことですから、おそらくIL-12は炎症の局所で産生され、その場所でのIFN-γの誘導に関わっているのではないかと想像します。

 例外的に血清において非常に高値で検出されうるサイトカインといえば、IL-18だと思います。このサイトカインは日本で見つかったサイトカインで、IL-12と共働してIFN-γの発現を増強する因子として同定されました。このサイトカインがほぼ例外なく異常高値になる疾患が「成人Still病」です。Still病という炎症性疾患は小児の病気ですが、それと似たような症状で成人になってから発症するものを成人発症Still病と呼びます。Still病の小児が成人したら成人Still病と呼んでもよいと思います。
つまり  成人
Still病 = 成人発症Still病 + Still病の小児が成人した症例 ということになります。

 この病気では血清中のIL-18が非常に高く検出されます。血清を通常より希釈しないと測定限界を超えてしまうほどです。そして血清中のフェリチンというタンパクも異常高値を示します。IL-18やフェリチンが異常高値の場合、内科医は少なくとも2種類の疾患を想起します。1つが成人Still病で、もう一つは血球貪食症候群です。Still病はしばしば血球貪食症候群を合併します。

 成人Still病は関節炎を起こす疾患ですが、特徴的な皮疹を呈することが多く、また発症時には高熱が出ることが多いです。大量のステロイドを投与すると症状は良くなりますが、大量のステロイドをいつまでも続けると副作用の害の方が多くなるので、減量する必要があります。その減量が結構難しいケースがあり、関節リウマチに用いる薬を併用してステロイドを減量することをしばしば試みます。

佐藤 浩二郎

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